コミュニティの衛生向上を目指して～世帯トイレ手洗い習慣の普及～

プログラム部
林　美穂

2013年11月に開始した、ハイチでの水と衛生プロジェクトの1期目が2014年11月に終了しました。様々な問題に直面しつつも、現地チームと一丸になり、住民の衛生環境改善のため努力した甲斐があり、着実に成果が見られています。

住民主導による公衆衛生活動のその後

穴掘りを手伝う石工

前回のスタッフ日記では、住民主導による総合的な公衆衛生（Community-Led Total Sanitation, 以下CLTS）のトリガリング活動の様子について、ご紹介しました。トイレ建設を決意した人たちのその後が気になるところです。
1年目の活動の結果、95世帯のトイレが建設されました。また、トイレ建設を通じてコミュニティに相互扶助の動きが出てきていることも大きな成果です。

トイレの建設を決意しても、資材を購入する資金がない、作り方が分からないなどの理由で、なかなか初めの一歩が出ないのは当然。それをサポートするのがコミュニティ住民からなる3つのグループ：1）屋外排せつ撲滅に向けた様々な活動を統括する「コミュニティ衛生委員会」、2）衛生知識を普及させる「コミュニティ衛生クラブ」、3）トイレ建設を技術的に支援する「石工」たちです。彼らの強いボランティア精神とコミュニティの衛生環境を改善しようとする願いが着実に成果を出してきました。

実際にコミュニティを訪問してみると、3つのグループが各世帯を周り、住民にトイレを建設するよう意識啓発し、トイレの作り方を教えていました。トイレ建設の中でも最も労力がかかる穴掘りと土台作りは石工が手伝っています。
無償であるにも関わらず、懸命に支援する彼らの姿勢に感動です。しかも、資材を購入する資金がない世帯のために、他の余裕がある世帯から資金集めを始めているではありませんか。彼らが自発的に対策を考え、活動しているのです。トイレ建設への人々の意識が変わり、住民同士の相互補助の動きが出てきた今、今後もトイレの建設数が伸びることが期待できます。

Tipytap（簡易手洗い設備）が大人気！

プロジェクトが力を入れているのは、トイレの建設促進だけではありません。下痢やコレラなどの病気を未然に防ぐため、食前およびトイレ使用後の手洗い習慣を普及する啓発活動も行いました。その結果、9割以上の住民が石鹸による手洗いが重要だと認識するようになりました。しかし、喫煙者が健康への害を理解しつつも、タバコをやめられないのと同様に、一度根付いた習慣を変え、新たな行動を習慣化することは難しいものです。
なぜ手洗いの重要性が分かっているにもかかわらず、実践できないのでしょう。大きな物理的要因は、1）水がない、2）手洗い場がトイレの近くにない、ことです。1）致命的です。飲み水の確保もままならない地域では、手洗いの水など用意できません。そのため、プロジェクトでは、学校やコミュニティに給水設備を建設・整備し、住民の水へのアクセスを改善しました。また、2）を解決するため、身近な材料で誰でも簡単に作れる簡易手洗い設備である“Tipytap”をトイレの近くに設置することを推奨したところ、見る見るうちにコミュニティで広まり、250を超える世帯に設置されることになったのです！

【Tipytapの材料】

木の枝（Y字2本、直線2本）
3リットル程度の取手付プラスチック製容器と蓋（使用済みの油の容器等で十分。中を洗っておく）
紐
石鹸
きれいな水

【Tipytapの作り方】

Tipytapの作り方

1期目が終了したとはいえ、コミュニティの衛生環境改善の活動は始まったばかり。種は蒔かれ、芽も出ましたが、この種が確実にコミュニティに根付き、自立して成長し、大きな木になるまで、もう少し水を注いであげる必要があります。今後は、コミュニティ主導の活動が継続し、さらに拡大できるよう、プロジェクトで引き続きモニタリングと側面支援をしていきます。

プロジェクトの2期目が間もなく始まります。ぜひご期待ください。