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「女性への暴力撲滅・保護プロジェクト」~ネパールの対象地を訪ねて~

プログラム部
澤柳 孝浩

アジア

事務局より

更新)

プログラム部の澤柳です。
2017年6月、ネパール西部のベリ県バルディア郡で実施している「女性への暴力撲滅・保護プロジェクト」の進捗を調査してきました。このプロジェクトでは、セーフ・ハウス(行政が運営する被害者用のシェルター)の設置や被害者支援の充実、女性人権擁護スタッフ、警察、病院など関係者の能力強化と行政への働きかけによって、暴力の被害にあった女性たち150人が安心して生活できる環境を作ることを目指しています。

私にとってネパールは、残雪をいただいた険しいヒマラヤ山脈の光景が広がる国というイメージでしたが、初めて訪問したネパールのバルディア郡は、先住民族のタルー族が多く暮らすタライ平原に位置し、見渡す限り畑が広がり、頭上には灼熱の太陽が照りつけていました。

活動地域の現状

ネパールには暴力の実態を示す統計資料がありませんが、このプロジェクトで連携している現地NGOの調査によると、バルディア郡は性暴力の件数がほかの地域に比べて多いことが分かっています。性暴力をはじめとする、ジェンダーに基づく暴力は、社会的に期待されている男女の役割(ジェンダー規範)が固定的で、かつ男女間の格差が大きい場合に起こりやすいといわれています。

写真:インド国境に近いバルディア郡では、出稼ぎや人身取引の問題が多い

インド国境に近いバルディア郡では、出稼ぎや人身取引の問題が多い

性暴力と家庭内暴力の蔓延

暴力の被害者がカウンセリングを受けながら一時的に滞在するセーフ・ハウスで、そこに生活する、13歳、10歳、5歳の三姉妹に会いました。年長のふたりが実の父親から性暴力を受けたため、セーフ・ハウスに保護されていました。

地域に多く住むタルー族は土地を持てず、多くは出稼ぎをして生活をしています。女の子たちの事件も母親が出稼ぎ中に起きたと聞きました。別の女性被害者からも、出稼ぎがきっかけとなり家庭内暴力が始まった話を耳にしました。ジェンダーの問題とともに、貧しさも暴力を助長する原因になっているのです。

写真:自らの体験を語ってくれた被害女性たち

自らの体験を語ってくれた被害女性たち

姉妹は絵を描いたり、はしゃいだり、子どもらしく遊んでいたので、話を聞かなければ性暴力の被害者だとは思わなかったでしょう。改めて驚くとともに、憤りを感じました。

暴力撲滅に挑む女性人権擁護スタッフ

連携する現地NGOのボランティアである女性人権擁護スタッフは、家庭内暴力や性暴力はジェンダーに基づく暴力であり、被害を受けた場合は警察などしかるべきところに通報すべきと、地域の人々に呼びかけてきました。その結果、今は多くの女性たちが、暴力は人権に反していることを知っています。

写真:夫や家族の理解を得て活動している女性人権擁護スタッフのメンバー

夫や家族の理解を得て活動している女性人権擁護スタッフのメンバー

活動によって啓発された女性グループのメンバーたちが、家庭内暴力の疑いがある世帯を訪れて、まずは話し合いによる解決を求め、示談で解決できない場合は警察へ通報するなど、対処できるようになりました。

スタッフは、ジェンダーに基づく暴力に苦しむ女性たちの現状を少しでも変えたいという熱意をもって活動しています。スタッフの中には、自らが性暴力の被害者である人もいます。彼女たちは、自らも被害にあう危険と隣り合わせにありながら、だからこそ、連帯して女性への暴力を防止したいと考えています。

行政と連携し、被害者を保護

被害女性を安全に保護し、社会復帰させるための仕組みを、行政と連携して強化することが大切です。プロジェクトでは、セーフ・ハウスでのカウンセリングや職業訓練も支援しています。現在、バルディア郡のセーフ・ハウスは賃貸ですが、新しいセーフ・ハウスを建設し、郡の所有とすることで、不要になった賃料をカウンセリングなど必要な支援に充てられるようになります。

写真:基礎工事が終わったセーフ・ハウスの建設現場

基礎工事が終わったセーフ・ハウスの建設現場

プランの支援で声を上げ始めた女性被害者たち

このプロジェクトに参加した女性たちが、暴力の被害を受けたと郡病院や警察を訪れるようになりました。なかには、男性の陰で表に出てくることのなかったイスラム教徒の女性も含まれます。
自分が性暴力や家庭内暴力の被害者と公表するのは、非常に勇気がいることです。たとえ法的に正しいと認められても、家庭や地域では迫害される危険を伴っているからです。しかし、黙っていては状況を変えることができないことを女性たちは学びました。だからこそ、勇気を出して暴力を通報しているのです。暴力を撲滅するには長い時間を要しますが、このプロジェクトによって人々の考え方に変化が起きていることは間違いありません。

プロジェクトはあと1年続きます。皆さまの温かいご支援と応援をお願いします。

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