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性教育、どこまで踏み込む?~ウガンダの活動現場より~

プログラム部
中島 泰子

アフリカ・中東

更新)

プログラム部の中島です。2018年2月よりウガンダに駐在し、周辺のエチオピア/スーダン/南スーダンを含む4カ国で、南スーダン難民と難民を受け入れているホストコミュニティを対象の保健プログラムを担当しています。

小学校での性教育

皆さんは「セックスするのを遅らせよう」などと、小学生にむかって話すことをどのように思いますか?
日本の感覚だと驚いてしまうかもしれませんが、プラン・インターナショナルが活動するウガンダの小学校では日常的に見られる光景です。プランが月経衛生管理の意識啓発活動を行っている、ウガンダ北部アジュマニ県のある小学校では、“DELAY SEX” (セックスするのを遅らせよう)の標語が職員室の隣の壁に描かれています。
小学生のうちから性教育を行なうことは、ウガンダの女の子たちが直面している課題を解決するうえで非常に重要です。

写真:職員室の隣、みんなが目にする壁に “DELAY SEX”の標語

職員室の隣、みんなが目にする壁に “DELAY SEX”の標語

写真:「先生の話を聞きましょう」と並列で描かれている

「先生の話を聞きましょう」と並列で描かれている

早すぎる結婚の実情

ウガンダの農村部では、10代で、早ければ10代前半で結婚し妊娠する子どもたちが多数います。2011年に行なわれたウガンダの人口保健調査によると、46%の女性が18歳までに結婚し、調査時20~49歳だった女性の15%は15歳までに結婚したという結果が出ています。
[Uganda Bureau of Standards (2011) “Uganda Demographic and Health Survey. Kampala: Uganda Bureau of Statistics]

早すぎる結婚や出産を経験した女の子たちは学業との両立ができず、途中で学校をやめてしまいます。このことは、女の子の自立への道を閉ざすことになるうえ、十分な教育を受けずに親になると、教育の重要性を理解せず、次の世代にも同様の結果をもたらす傾向にあります。 早すぎる結婚や妊娠が頻発する背景にあるのは、婚前交渉を嫌う親世代が早すぎる結婚を正当化するという実情もあります。

早すぎる結婚・妊娠を防ぐために

こうした状況を踏まえると、すべての世代に対する意識啓発は不可欠です。一番の当事者である子どもたちに小学生のうちから性教育を行なうことは、問題を解決するうえで早すぎることではないのです。女の子たちにとって、親に決められた結婚に反発することは難しいかもしれませんが、人生には選択肢があるということを事前に理解しているだけでも状況を変えるきっかけになるのです。

写真:「“SAY NO TO GIFTS FOR SEX”(性交渉を目的とした贈り物にはノーと言おう)という標語も

“SAY NO TO GIFTS FOR SEX”(性交渉を目的とした贈り物にはノーと言おう)という標語も

同時にプランは、妊娠や家庭の事情で学校に通えなくなってしまった子どもたちを、再度学校に呼び戻して初等教育を終えられるようにする支援も行っているため、生徒の中には思春期の女の子たちも多数含まれます。一度あきらめた教育の機会を再度得られた女の子たちは、意欲的に学ぼうとします。このように、小学校への復学を果たした思春期の女の子たちへの性教育こそ、重要な意味を持ちます。先日プランが小学校で行った月経衛生管理トレーニングでは、10代後半の女の子たちが、小さい子たちの手を引っ張りつつ熱心に参加している姿が見られました。

小学校を拠点に、地域すべての人への意識啓発を

初等教育が無償であるウガンダでは、首都から離れた農村部の小学校でも大勢の子どもたちが学んでいます。多くの子どもが集まる場所には、教師や保護者などを含めさまざまな大人も多く関わっているため、小学校での活動は多大な効果をもたらします。

写真:先生にテストの採点をしてもらうために列をつくる子どもたち

先生にテストの採点をしてもらうために列をつくる子どもたち

プランの現地職員から聞いた話に印象的なものがあります。「小学校高学年の女の子に対し、先生が『あなたは胸が大きくなってきたから結婚の準備ができているね』って言うことがある。教師の意識も変えていかなくてはいけない」

写真:ムスリム人口が多いユンベ県の小学校

ムスリム人口が多いユンベ県の小学校

さらに貧困を背景として、力(金銭を含む)を持つ大人が子どもたちを性的に搾取することはゼロではなく、この対象になるのは男の子たちも例外ではありません。残念ながらこうしたことが起こり得るということを地域の人々が認識し、それに対する警戒の目を光らせ全員で子どもたちを守ろうとすることが予防につながります。

すべての人に「性と生殖に関する健康と権利」を

1994年、カイロで開催された国際人口・開発会議(International Conference on Population and Development)で、「性と生殖に関する健康と権利(Reproductive Health/Rights)」という概念が提唱されました。

写真:「性交渉にNOという権利、結婚を拒む権利、早すぎる妊娠・性感染症の予防について絵で説明

性交渉にNOという権利、結婚を拒む権利、早すぎる妊娠・性感染症の予防について絵で説明

“性と生殖に関する健康(reproductive health)とは、人間の生殖システム、その機能と(活動)過程のすべての側面において、単に疾病、障害がないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指す。したがって、性と生殖に関する健康とは、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力をもち、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由をもつことを意味する。”
[「カイロ国際人口・開発会議行動計画(カイロ行動計画)」 (1994年9月)より]

すべての人が持つべきこの「権利」が、当たり前には守られない状況にどう対処していくか、国や各団体が検討を重ねていく過程で、性教育にダイレクトに切り込んでいく環境が生まれました。

性と生殖に関する健康について十分に理解していない子どもたちに性教育を行なうことは、どこまでオープンに伝えるべきか、正解が見えない部分もあります。しかし、子どもたち、とくに女の子たちが、結婚や妊娠で学校を中途退学してしまうことなく、安心して学ぶことができる環境を整えるためにも、少し踏み込んだ性教育をする必要性を実感しています。

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