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ベネズエラ避難民 新天地での暮らしを支援
プログラム部
山形 文
America中南米
(更新)
プログラム部の山形です。ペルーで実施している「ベネズエラ避難民の生計向上」プロジェクトを担当しています。
「ベネズエラ避難民」の問題は、残念ながら日本では報道される機会も少なく、あまり身近に感じたことがないという方が多いかもしれません。この問題について多くの方々に知っていただけるよう、避難民が生まれた背景や、現地での活動から得た気づき、求められている支援についてご紹介します。
「南米の富裕国」から一転 600万人以上が国外に避難
1980年代、ベネズエラは南米の最富裕国と呼ばれるほど豊かな国でした。それが現在では、600万人以上
※の人々が国外へ逃れる事態となっています。その背景には、長引く政情不安による社会経済の混乱があります。2015年頃から、病院や学校などが閉鎖に追い込まれ、極度のインフレによる物価の急騰で食料の入手もままならない状態に陥りました。社会の機能が停止し、治安も悪化、暴力行為が蔓延していきました。
ペルーに到着したばかりの避難民の家族
その結果、多くの人々が、生き延びるためには国外へ逃れるしかないという状況に置かれてしまったのです。
近隣国のペルーには、現在120万人以上の避難民が暮らしていますが、地元行政の対応は追いついておらず、避難先でも厳しい生活が続いています。
2019年に現地へ 避難民の実情
プランは2019年に、ペルーにおいてベネズエラ避難民の支援を開始※。私も当時、日本から現地に派遣され、寝具や調理器具など生活に必要な物資の配布、在留資格の申請や子どもの教育に関する情報提供などを行いました。多くの人々の話を聞き、調査を行うなかで、ペルーにおけるベネズエラ避難民特有の状況が見えてきました。
- ※2019年9月~2020年4月にかけて、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の資金を受け、ペルーのピウラ市・クスコ市で「ベネズエラ避難民およびホストコミュニティ住民の保護プロジェクト~Amistad sin frontera(友情に国境なし)~」を実施しました。現在実施中の「ベネズエラ避難民の生計向上」プロジェクトは、それに続く活動となります。
広範囲に点在する避難民世帯
現地での最初の仕事は、対象地であるピウラ、クスコ両市内で避難民が住んでいる場所を特定することでした。避難民世帯はアパートを借りたり、間借りをしたりして、市内の広範囲に点在していたため、聞き取り調査や物資配布後のモニタリングのために行う世帯訪問にも、かなりの時間を費やしました。というのも、ベネズエラ避難民のためのキャンプが設けられているのは、国境地域に限られています。
間借りした部屋に娘と暮らすシングルマザーと
ほとんどの避難民は、入国後に一定期間だけキャンプに滞在し、その後は自分で移住先を決め、自活していかなければならないのです。
言語・宗教などペルー人との共通点が多い
自力で定住先を見つけなければならない避難民に対し、ペルーでは地元の住民たちがベネズエラの厳しい事情を理解し、安価でアパートを貸したり、教会が定期的な炊き出しを行ったりと、比較的温かく迎え入れている印象でした。同じスペイン語を話し、宗教も同じカトリック。ともに多民族国家で生活習慣にも共通点が多く、南米人という仲間意識やラテン特有のオープンな文化が、避難民の救いとなっているように見えました。
食料支援を受けた避難民一家。狭いアパートに身を寄せ合う
スペイン語が共通言語であるおかげで、私たちスタッフも通訳なしで避難民とコミュニケーションが取れたことも大きな利点でした。
当たり前の日常を失った人々の苦難
避難民のほとんどは読み書きができ、携帯電話を駆使して情報収集を行っています。かつては南米随一の富裕国だったベネズエラ。高い教育を受け、豊かな暮らしを送っていた人々の苦悩は計り知れません。多くは安定した仕事に就くことができず、路上でキャンディーを売ったり、車の窓拭きをしたりして生計を立てています。当たり前だった日常を失い、厳しい暮らしのなかで心を病む避難民も多いといいます。支援活動ではストレス管理の講習会も実施し、避難民がため込んでいた思いを吐き出し、発散させる機会を設けました。
親身になって避難民の話を聞く現地スタッフ
コロナ禍で避難民がさらに困窮
ペルーでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)開始以降、感染者が約223万人、死者20万人を超え、10万人当たりの死者数は世界最悪です。ペルー人はもとより、より脆弱な立場に置かれている避難民たちも、度重なる行動制限によって職を失ったり、感染して働けなくなったりと、心身の健康や収入に大きな影響が及んでいます。ペルー政府は避難民へのワクチン接種もすすめていますが、在留許可の手続き中の避難民は対象外であるなど、十分には行き届いていない状況です。そのため、避難民たちは感染のリスクに怯えながら生活のために働いています。
避難民が安定した生活を築けるよう支援を開始
そこで、10月から新たに開始したプロジェクトでは、働いてペルー社会にとけこみ、生活を安定させるための努力を続けてきた避難民の自立を支援しています。小規模であっても事業を経営し、安定収入を得られるように、まずは避難民の権利、就労に関する法律についてのオリエンテーションを実施。そして、職業技術トレーニング(パン製造、理髪など)や経営指導、資機材の支給も行います。
オンライン研修にはタブレットを活用
コロナ禍のため依然として大人数で集まって行う活動は認められておらず、現在はオンラインでオリエンテーションや研修を提供。研修内容を録音したデータをインターネット上で公開することで、さらに多くの避難民に情報を届けられるよう努めています。
事業拡大の成功事例が、多くの避難民の希望になるように
家からでも参加できるオンライン研修は、交通手段が乏しい地域に暮らす世帯や、子どもがいる世帯にも好評を得ています。これまでに80人の避難民が、コロナ禍で中断していた事業の再開にこぎつけました。
お菓子の製造、レストランや美容サロンの経営、携帯電話修理、洗濯屋など、個々の能力をいかし、顧客開拓や商品開発にまい進しています。避難民が事業を拡大できたら、雇用を創出したり、地元経済に貢献したりすることもできます。そしてその成功事例は、他の避難民の大きな希望となります。ひとりでも多くの避難民が能力をいかした事業を経営、発展させ、安定した生活を築いていけるように支援を続けていきます。
美容サロンを軌道に乗せようと奮闘する女性
- ※このプロジェクトは、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の支援のもと実施しています
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