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ロヒンギャ難民キャンプを再訪して~人道危機発生から5年~

プログラム部
倉橋 功二郎

アジア

事務局より

更新)

プログラム部の倉橋です。2022年8月末から9月初頭にかけて、「ロヒンギャの子どもの保護と教育」プロジェクト視察のために、バングラデシュ南部のコックスバザール県を訪問してきました。コロナ禍でなかなか出張が叶わずにいましたが、今回2年半ぶりに現地を訪れることができました。ロヒンギャ難民支援の現場の様子を詳しくお伝えします。

依然として90万人以上が難民キャンプに

写真:訪問した難民キャンプの様子

訪問した難民キャンプの様子

首都ダッカに到着した翌日、難民キャンプのあるコックスバザール県へ空路で移動しました。2017年に発生したロヒンギャ人道危機から5年が経過した今も、コックスバザール県内には33カ所の難民キャンプが形成されており、90万人以上のロヒンギャの人々が不自由な生活を余儀なくされています。

若者たちへの識字教育を継続的に支援

プラン・インターナショナルは2019年から、「ロヒンギャの子どもの保護と教育」プロジェクトを通じ、難民キャンプ内で識字教育支援を行ってきました。対象は、15歳~24歳の若者たちです。この年齢層の若者たちは、母国ミャンマーに住んでいたときもほとんど学校に通ったことがないうえ、難民キャンプ内でも子どもたちに比べて支援を受ける機会が少ないという特徴があります。
そのためプロジェクトでは、難民コミュニティ内で読み書きや計算を教えられる教師を育成し、教師の家の空きスペースを利用して若者むけの識字教育を行う活動を支援しています。気軽に通うことのできる近所で行われているこのシステムは非常に好評で、これまでに延べ3700人以上の若い女性や男性たちが学習センターに通い、読み書きや計算の基礎を学びました。

  • ※このプロジェクトはジャパン・プラットフォーム(JPF)の支援のもと実施しました

写真:これからも学び続けたいと語る女の子たち

これからも学び続けたいと語る女の子たち

写真:使用しているテキスト

使用しているテキスト

インフラは改善したものの、変わらない現実も

2年半ぶりに難民キャンプを訪問して感じたのは、当初に比べ、キャンプ内のインフラがだいぶ整備されてきたということです。プランの学習センターの家具や備品も増え、教師たちも経験を積み重ねたことで、難民の若者たちが安心して学べる学習環境が整いつつあります。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延や、2021年2月にミャンマー国内で発生したクーデターの影響もあり、ロヒンギャの人々が置かれている状況自体はあまり大きく変化していません。

「学んだことを広めたい」若者たちの強い決意

写真:キャンプ内の生活について教えてくれた若者

キャンプ内の生活について教えてくれた若者

難民キャンプの視察中に話を聞かせてくれた若者たちは、男女ともに口をそろえて「早くミャンマーに戻りたい」と言っていました。コミュニティの人々も皆同じ気持ちを抱いているようです。難民キャンプ内の住居は家族で暮らすには狭すぎるうえ、個々のキャンプ間を自由に移動することもできません。キャンプ内で得られる仕事には限りがあるなか、外で働くことは禁止されているため、外部からの支援に依存した生活を余儀なくされる人々がほとんどです。

一方で、バングラデシュに来たことにより、ミャンマーでは思いもしなかったチャンスを得られた人たちもいます。プランの学習センターで読み書き、計算を学んだ若者たちが、もしミャンマーに住み続けていたら、一生を非識字のまま暮らしていたかもしれません。また、難民キャンプ内で人道支援活動を行う団体は、プランも含めてロヒンギャの女性の採用や育成に積極的です。「難民キャンプに来て、初めて仕事に就き、自分で賃金を得ることができてうれしい」と話す女性にも会いました。

写真:学習センターで。中央が倉橋職員

学習センターで。中央が倉橋職員

どうすればもっと識字教育を広められるか尋ねてみると、多くの若者たちが、「自分たちがプランの学習センターで学んだことをコミュニティ内にも広めていきたい」と、強い意志を持って語ってくれました。男女ともにコミュニティを思う気持ちは同じですが、女の子たちがとりわけ熱心にその思いを伝えてくれたことが特に印象に残っています。

難民キャンプに隣接する地区でも支援を実施

 

今回の出張では、難民キャンプに隣接する地域での活動も視察しました。コックスバザール県はバングラデシュ国内でも特に貧困率の高い地域です。地域内には、国際支援がロヒンギャ難民に集中することを良く思わない人々もたくさん存在します。民族間の対立を無意味にあおることのないよう、プランは近隣地域においても支援活動を実施しています。

私が訪ねたのは、プランが支援したウキヤ地区にある私立高校です。校舎の傷みが目立っていたため、地区の教育事務所からの要請を受け、教室や女子生徒専用の休憩室を修繕しました。ここは国内でも保守的な地域で、女の子が安心して過ごせるスペースを学校内に用意すると、保護者も安心して女の子を学校に通わせることができます。

写真:女子生徒専用の休憩室

女子生徒専用の休憩室

写真:新しい教室で学ぶ生徒たち

新しい教室で学ぶ生徒たち

この地区では、ほかにも校舎の建設や修繕のほか、コロナ対策として手洗い場の設置、教師や学校管理委員会を対象とする能力強化研修などを実施しました。私が訪問していた期間に行われていた校長先生を対象とした研修では、校内活動のモニタリング強化について議論していました。

人道危機の長期化がもたらした変化を考える

バングラデシュ政府はロヒンギャの人々の帰還に積極的な姿勢を見せています。ミャンマーへの帰還を望むロヒンギャの人々は多く存在しますが、同時に不安も抱いています。なぜなら、ミャンマー国内には帰還した人々が安心して過ごせる環境が整っているわけではないからです。人道危機の根底にある民族間対立や無国籍などの問題も、いまだに解決されていないままです。

訪問中に、バングラデシュ人の同僚と話していて興味深かったのは、「ロヒンギャの若者たちが少しずつバングラデシュ人のようになってきている」との指摘でした。バングラデシュ人と接触する機会が多い男の子に関しては、バングラデシュで話されているベンガル語を身につける子が少しずつ増えているようです。女の子に関しては、服装が現地の女の子に徐々に似てきているとのこと。難民キャンプの外に出ることは禁止されていますが、近隣地域の男性と結婚するロヒンギャ女性も実際には存在します。

写真:プロジェクトチームの同僚たちと

プロジェクトチームの同僚たちと

人道危機が長期化するにつれ、受け入れ先の社会に溶け込む人たちも現れ、危機的状況はますます複雑化してきています。ミャンマー帰還への思いが募る一方で、ロヒンギャの人々もさまざまな意味で変化を続けています。先行き不透明な状況が続くなか、国際社会としてどのような支援を展開していくべきなのか、あらためて考えさせられるコックスバザール訪問となりました。

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