ご挨拶

「子どもたちのための40年間、
そしてジェンダーのための未来」
2023年、公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンは、創立40周年を迎えることができました。これも、ご支援くださる皆さま、各分野でご協力くださる皆さまのお力によるものと、深く感謝申し上げます。

この40年間、世界は大きく進展しました。
例えば、5歳未満児死亡率が世界でももっとも高い国のひとつ西アフリカのマリでは、1983年には1000人中310人(※1)もの子どもが5歳のお誕生日を迎えることなく亡くなっていました。この数字は2019年には1000人中94人(※2)と、まだまだ多いとは言え、大幅に減少。世界の平均寿命は59歳(※3)から73歳(※2)に上昇しています。これは命を落とす子どもたちの減少が大きく影響したための数字です。
こうした進展を生み出してくださったのは、ほかならぬ皆さまです。世界をよりよい場所にしていくための皆さまのご貢献に、心からの敬意を表します。

一方で、子どもたちや若者を取り巻く課題はまだ多く残っています。むしろ、新たな課題が生まれていると言ってもいいかもしれません。
世界各地で紛争が絶えません。それにより、難民が生まれ、その多くは子どもたちと女性たちです。気候変動による食料不足や災害の頻発によるしわ寄せを受け、犠牲を強いられるのは、やはり子どもたちと女性たち。貧困問題だけではなく、複雑に絡み合う世界の問題が、ますます彼らを追い詰めています。

85年以上前、プランの本体である「フォスター・ペアレンツ・プラン」がスペインの内戦を機に産声を上げたのは「戦災孤児や戦時下にある子どもへの支援」のためでした。その後、活動は途上国の貧困の中にある子どもへの支援に大きくシフトチェンジ。
貧困や差別、虐待など、子どもたちの成長や可能性の開花を阻む要因を撲滅しようと、試行錯誤を重ねてきました。1983年には、経済成長を遂げた日本にもプランが創立され、皆さまとともに走ってきて今日があります。

その中で、私たちが気づいたこと、それは「女の子や女性への差別、搾取、暴力などの不公正をなくさない限り、プランが目指している“すべての子どもたち、すべての若者が貧困や差別の足かせなく自由に生きることができる世界”の実現は難しい」ということでした。
そこで現在、プランはジェンダー平等を実現させるリーディングNGOとして、女の子や女性の権利促進を軸にしつつ、すべての子どもや若者たちの尊厳が守られ、自分らしく生きることのできる世界を目指して取り組んでいます。それは、子どものためによりよい世界を模索してきた長い歴史があってのことなのです。この機会に、プランの歴史を振り返りながら、40年間の過去、そして現在、これからの未来に思いを寄せていただけましたら、ありがたく存じます。
同時に、ジェンダーを軸にしながら未来を切り拓こうとしているこれからの長い道のりも、これまで同様、変わらぬご支援を賜り、伴走していただけましたら、これ以上、心強いことはありません。
まだ実現できていない理想の世界のために、これからもプランとともに挑戦を続けていただけますよう、心よりお願い申し上げます。

※1 出典:「世界子供白書1986」(ユニセフ)
※2 出典:「世界子供白書2021」(ユニセフ)
※3 出典:「世界子供白書1982-1983」(ユニセフ) 数字は1980年のもの
公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン 理事長
池上 清子
国際基督教大学大学院で修士号、および大阪大学大学院博士後期課程修了、博士(人間科学)を取得。国連機関とNGOで経験を積む。現在、長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科客員教授、日本赤十字社理事、公益財団法人アジア人口開発協会専務理事を務める。
HIVとエイズなど諸問題、セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)、国勢調査に基づくに政策立案などを含む人口と開発、そしてジェンダーに関する政策提言に従事。そのほか、外務省ODA評価有識者会議委員、内閣官房長官諮問機関アフガニスタンの女性支援に関する懇談会メンバーなどを務め、保健分野NGO間のネットワーク構築にも寄与。
2016年9月、公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン理事長に就任。
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