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アフリカの女性が直面する性差別問題|根絶に向けた取り組み
ジェンダー平等は、2030年までの達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」のひとつとして、国際社会が一丸となって取り組むべき課題です。しかし、依然として世界のあらゆる国・地域には性差別問題が根強く存在しています。
ここでは、アフリカ諸国の女性たちが直面している性差別の問題とその背景について、一緒に考えていきましょう。
もくじ
アフリカにおける女性の地位
アフリカでは、男性優位の考え方や家父長制、女性に不利な慣習やしきたりが残っており、女性の地位は男性よりも低いと見なされる傾向にあります。「暴力は男らしさ」という伝統的な考え方により女性への暴力が許容される地域も多く、深刻な被害にあう女性たちが後を断ちません。
女性の健康や尊厳を軽視した慣習である女性性器切除(FGM)や早すぎる結婚(児童婚)などにより、生涯にわたる心身の後遺症や命の危険に直面する女の子たちもいます。これらの女性に不利な慣習を禁止する法整備を行う国も増えてきています。しかしながら、地域社会の「当たり前」をやめることは難しく、水面下では続けられ、根絶までの道のりは険しい状況にあります。
数値で見るアフリカの男女格差の現状
世界各国の男女差別の現状は、世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が毎年発表する「ジェンダー・ギャップ指数
※1」から推測することができます。これは、「経済」「教育」「保健」「政治」の分野ごとの男女格差を数値化したものです。
ジェンダーが完全に平等な状態を100%としており、2023年のジェンダー平等の達成率を地域別に見ると、中東・北アフリカは62.6%で、2022年に最下位だった南アジアを抜いて最もジェンダー格差がある地域となっています。
※2
- ※1「Global Gender Gap Report 2023」(世界経済フォーラム)
- ※2「ジェンダー平等達成率、中東・北アフリカは地域別で最下位、経済・政治分野に課題(北アフリカ、バーレーン、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラン、サウジアラビア、トルコ、アフリカ)」(ジェトロ)
アフリカの女性が直面している問題
アフリカの女の子や女性たちの多くが、ときに生命を脅かすこともあるさまざまな問題に日々直面しています。なかには伝統や慣習、社会規範によるものだけでなく、女性にとって不利な法整備(土地所有権がないなど)に起因するものもあります。
ここでは、特にアフリカで深刻な人身売買と児童婚、女性性器切除(FGM)の問題について説明します。
人身売買(人身取引)
2012年から2014年の2年間に、世界106カ国で6万3251人の人身売買の被害者が確認されており、その7割以上を女の子と女性たちが占めていました。
アフリカでも人身売買の問題は深刻です。特に、紛争や迫害などから逃れてきた人々は、社会的にも経済的にも脆弱な立場に置かれており、「仕事を紹介する」という名目で行われる人身売買の被害に遭いやすくなります。
人身売買された子どもたちは金採掘場や農場などの劣悪な環境で搾取されたり、武装グループによって兵士として徴用されたりすることもあります。女の子は性的搾取に遭う可能性も高く、強制的な結婚や労働のために取引される場合もあります。しかしながら、これらを取り締まる法律が整備されていないため、人身売買を撲滅できていません。
早すぎる結婚・児童婚
早すぎる結婚は、早期結婚や児童婚とも呼ばれるもので、18歳未満の子どもが結婚することを指す言葉です。結婚は同意のもとに行われることもありますが、同意なしに強制されることも少なくありません。
児童婚率の高い国の上位10カ国中8カ国がアフリカの国々で、アフリカ全体では、1億2500万人の女の子と女性が18歳未満で結婚しているとみられています。これは18歳未満の女の子の3分の1にあたり、うち約10人に1人は15歳にも満たない女の子たちです。
※
児童婚の原因は慣習だけでなく、女の子は家計の助けにはならない、と考えられることも一因です。そのために家族を養うお金を得るために、強制的に結婚させられるケースも多くみられます。幼いうちに結婚し身体が未発達な状態での早すぎる妊娠・出産は、女の子の体に大きな負担を強いるため、後遺症が残ったり、最悪の場合死に至ることもあります。
女性性器切除(FGM)
女性の外部生殖器の一部または全体を切除する慣習のことで、アフリカを中心に約30カ国で、幼少期から15歳くらいまでの女の子を対象に、大人の女性になるための通過儀礼や結婚の条件として行われています。
施術は、医師免許を持たない地域の伝統的な助産師、薬草師、親戚などの女性たちが、不衛生な環境で麻酔なしで行うことも多いため、大量出血と激痛を伴うだけでなく、死に至る危険も伴います。そのうえ、感染症や生理不順、性行為時の激痛や難産、強い恐怖心からの精神的疾患など、生涯に続く深刻な健康被害をもたらすこともあります。
現在は法律によって禁止されている国もありますが、法律よりも地域の慣習が優先され、取り締まりなどが行われないために法の執行が不十分です。そのためソマリアやギニア、スーダンなどでは近年も多くの女の子に施術されています。
アフリカの女性のために行うプラン・インターナショナルの取り組み
プラン・インターナショナルでは、アフリカの女性に対する性差別に関わる課題を解決するために、さまざまなプロジェクトを行っています。
「女性性器切除から女の子を守る」プロジェクト
プラン・インターナショナルは、女性性器切除(FGM)の施術率が高いソマリアとスーダンで、FGMの被害を受けた女の子の心身のケアをすると同時に、家族や地域住民、行政にむけてFGM根絶に向けた活動をしています。
ソマリアではFGMは依然として合法であり、15歳から49歳の女性のうち99%が施術されています。一方でスーダンでは、女性性器切除は刑法で禁止されていますが、法の執行が不十分であるため今も水面下で広く続けられていて、15歳から49歳の女性のうち6.6%が施術されています。その背景には、「大人の女性になるために」「女の子が良い結婚をするために」女性性器切除が必要、という考えが今も地域全体に根深く残っているためです。
この活動では、FGMを受けた女の子や女性への医療サービスの提供や、FGMの根絶にむけた対話や啓発イベント、行政や地域リーダーにFGMを禁止する法律の遵守のための能力強化などを実施しています。
「女の子が売られない社会づくり」プロジェクト
ブルキナファソでは、貧困層が多い農村地域の子どもたちや若者が人身取引業者によって売買され、強制労働をさせられたり、女の子は性産業に従事させられたりするケースが多発していました。そのためプラン・インターナショナルではこのプロジェクトを通じて、女の子を中心に人身取引から救出された子どもの保護と支援を行いました。
救出された子どもたちを故郷の家族のもとへ帰還させる支援を行うとともに、それぞれの適性と希望に応じて職業訓練を実施しました。人身売買の背景にある貧困問題の解決には、教育を十分に受けていない女の子たちが、やりがいのある人間らしい仕事に就き、生計を向上させることが重要です。子どもたちは理容や縫製、木工技術などの訓練を受けて新しい技術を身につけ、ビジネスを始めて自立したり、家族を養ったりすることができるようになりました。
並行して、人身取引防止のためにコミュニティ全体への意識啓発や政府の能力強化を行い、地域社会が子どもたちを守っていく体制づくりに取り組みました。
人身売買が起きる背景とその手口
人身売買が起こる背景には、政情不安や紛争などさまざまな要因がありますが、最も大きいのは貧困です。
サハラ以南のアフリカにおいて、極度の貧困のなかで暮らす子どもの割合は40%を占めているといわれます。貧困層の多くは農村地域で暮らし、人々は十分な教育を受けていないだけでなく、情報源も少ないために、人身取引の危険性に気づいていません。「よい仕事がある」「教育を受けられる」などの人身取引業者の誘い文句に騙されたり、誘拐されたりするケースもあります。こうした手口によって、強制労働や性的搾取などがその国のみならず国境を越えて組織的に行われており、取り締まることが困難です。
女性たちの持つ可能性が生かされる社会を目指して
ジェンダーに基づく差別は、決してアフリカの女性だけの問題ではありません。程度の差こそあれ、世界のどんな場所でも存在しています。きっと皆さんのなかにも、男女の性別役割や「男らしさ」「女らしさ」に縛られている、と感じたことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか。
アフリカの女性を取り巻く差別や偏見、有害な慣習、差別的な法律が少しずつでも減れば、男性と同じように人間らしく尊厳を持って、自分の人生を生きていく女性が増えていくことでしょう。
プラン・インターナショナルは皆さまからの寄付を最大限に生かし、
これからもアフリカの女性たちが直面する課題の解決にむけたプロジェクトを進めていきます。
運営団体
国際NGOプラン・インターナショナルについて
プラン・インターナショナルは、女の子が本来持つ力を引き出すことで地域社会に前向きな変化をもたらし、世界が直面している課題の解決に取り組む国際NGOです。世界75カ国以上で活動。世界規模のネットワークと長年の経験に基づく豊富な知見で、弱い立場に置かれがちな女の子が尊重され、自分の人生を主体的に選択することができる世界の実現に取り組んでいます。
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