40年のあゆみ

~世界から日本へ、そして日本で40年~
遠く離れたヨーロッパで始まった子どもたちの未来をひらく活動は、ここ日本でも根付き、40年もの月日を経ました。それは世界で、そして日本で起きる数々の変動をくぐり抜け、時代の潮流に寄り添いながら、子どもたちにとってあるべき世界を模索し、追及する40年間でした。そこにはいつも、静かに、そして熱い思いで伴走くださる支援者の皆さまの存在がありました。
Photos : Plan Archives, University of Rhode Island
プランの歴史
世界および日本の出来事
プロローグ 01
『戦災孤児の救済からすべては始まった』
世界でのプランの歴史は、さかのぼること今から86年前。
スペイン内戦から第二次世界大戦へと続く激動のヨーロッパで、戦乱に翻弄される子どもたちの救済から始まりました。
[世界の出来事]
スペイン内戦が勃発
右派と左派が争い、フランコ率いる右派の勝利で1939年に終結。
スペイン内戦で戦災孤児を保護
「この子の名前はホセ。私はこの子の父親ですが、街が占拠されれば殺されるでしょう。
この子を見つけた方、どうか面倒を見てやってください」
スペイン内戦の最中、そう書かれた紙切れを手にした5歳の男の子を保護したイギリス人ジャーナリスト、ジョン・ラングドン=デービスは、友人エリック・マッゲリッジとともに「スペインの子どものためのフォスター・ペアレンツ・プラン委員会」を設立。
戦災孤児のための施設を開設しました。
戦時下のすべての子どもを支援
第二次世界大戦中は、フランス、イギリスと拠点を移しながら、支援の対象をあらゆる国籍・人種の子どもに広げました。
名称も「戦時下の子どものためのフォスター・ペアレンツ・プラン」へ改称。
[世界の出来事]
第二次世界大戦開戦
ドイツとソビエト連邦によるポーランド侵攻が発端。ヨーロッパが戦場と化し、戦火はアジアにも拡大し、1945年に連合国軍の勝利で終結。
[世界の出来事]
国際連合設立
国際平和や安全保障、経済・社会などでの国際協力を目的とする。
プロローグ 02
『戦時下の子どもの支援から、貧困解決に』
第二次世界大戦のつめ跡が徐々に薄れるヨーロッパでの活動から、アジアや南米など紛争や内戦に見舞われている国々での活動にシフトしていきました。
さらに、途上国と呼ばれる国々で貧困のなかにある子どもたちへの支援に、大きく舵を切ったのも、この時代でした。
ヨーロッパ以外にも活動の場を
紛争に見舞われた中国や朝鮮に活動の場を広げました。また、紛争だけでなく、社会的、経済的に困難な状況にある子どもたちも支援の対象に。
[世界の出来事]
中国にて第二次国共内戦
中国国民党および中華民国国民政府率いる国民革命軍と中国共産党率いる中国工農紅軍との間での内戦が1950年代まで続いた。
[世界の出来事]
「世界人権宣言」が国連で採択
すべての人民とすべての国が達成すべき基本的人権についての宣言。
[世界の出来事]
朝鮮戦争勃発
大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、朝鮮半島の主権を巡って争った。
支援対象を途上国の子どもたちに大きくシフト
途上国で子どもたちの生活環境を改善する活動を開始しました。
[日本の出来事]
日本のGDPがアメリカに次ぎ、世界第2位に
「住民参加」の発想に基づく手法を取り入れる
プランのスタッフが長期間、住民に伴走し、住民がオーナーシップをもって地域開発を進めるようにサポートする手法で支援活動を進めるように。
[世界の出来事]
第1回「世界女性会議」開催
女性の地位向上を目的として、メキシコシティにて開催。
[世界の出来事]
「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(CEDAW)が国連総会にて採択
男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として、女子差別の撤廃を定めた。
本章
日本での40年の歩み
第一章
『“民間の平和外交”で日本から世界に貢献』
日本のGDPがアメリカについで世界第2位になった1968年から15年を経た1983年、日本にも国際社会への貢献意識が高まるなか、いよいよ日本においてもプランが誕生します。
まだ、日本には国際NGOがほとんど存在していない時代でした。
プランの歴史
世界および日本の出来事
「日本フォスター・プラン協会」創立
「経済成長を遂げた日本が、国際社会に貢献するべき時代が来た」と考えた、法律や税務などの専門家である有志たちが、国際本部の働きかけを受けて事務局を開設。途上国を支援するためにプランに加わった国としては、世界で7番目でした。
初の新聞広告で寄付募集
フォスター・ペアレント(現スポンサー)を募るべく、新聞に広告を掲載。当時のコンセプトは「民間の平和外交」というものでした。
[世界の出来事]
「1億人の飢餓を救う」というスローガンのもと、20世紀最大といわれるチャリティコンサート『ライブエイド』開催
[日本の出来事]
「男女雇用機会均等法」成立、翌年施行
機関誌『フォスター・プラン ニュース』(現『プラン・ニュース』)の第一号発行
1色刷4ページというものでした。
そしてこの年、スポンサー数は3000名に。日本のスポンサーが交流するチャイルドの国の上位3カ国は、フィリピン、インドネシア、ネパールでした。
[日本の出来事]
土井たか子氏が日本憲政史上、初の女性党首として、日本社会党の委員長に就任
外務省から財団法人として認可
認可を受け、執行機関である理事会と諮問機関である評議員会が組織されました。
そしてこの年、スポンサー数は6000名に。
[世界の出来事]
ブットー氏がイスラム国家初の元首に
外務省から特定公益増進法人として認定
寄付金が所得税・法人税法上の優遇措置が適用されることになりました。
支援者の会結成
広島市在住の支援者による交流会をきっかけに、全国にて「支援者の会」が立ち上げられることに。
[世界の出来事]
「子どもの権利条約」国連で採択
[世界の出来事]
天安門事件(民主化を求める学生や市民を、人民解放軍が武力で鎮圧)
[世界の出来事]
ベルリンの壁崩壊、マルタ会談で冷戦終結
[日本の出来事]
日本のODA実績がアメリカを抜いて世界第1位に
スポンサー数が2万人を超える
第二章
『子どもの力を生かすことに焦点を当てる』
1990年代が近づくと、それまでの世界の支援業界のアプローチ方法が、「ニーズベース(欠けているものを補うという考え方)」から
「権利ベース(すべての人に人間らしい尊厳を持った生き方を保障するという考え方)」へ移行。
それにともない、プランではよりいっそう、子どもたちのもつ可能性を信じ、後押しする姿勢を強めていきます。
「子ども参加」の発想に基づく手法を取り入れる
それまでもプロジェクトに地域住民の参加を促すアプローチはしていましたが、子どもの代表をプロジェクト推進委員会に必ず入れる、活動の一翼を子どもたちが担う設計にするなど、子どもたちの意見や力をよりいっそう取り入れることに。
[世界の出来事]
アフリカ開発会議(TICAD)プロセス開始
創立10周年を迎える
活動地域の責任者を招聘してセミナーを開催するなど、日本で途上国支援への理解を深めるイベントや情報発信を行いました。
[世界の出来事]
第4回世界女性会議にて女性の人権に関する「北京宣言」及び「行動綱領」が採択
[日本の出来事]
阪神淡路大震災
「プラン・マンスリー・サポーター」(現「グローバル・プロジェクト」)募集開始
喫緊の課題に直面する子どもたちを継続的に支援する仕組みをスタートさせました。
[日本の出来事]
「男女共同参画社会基本法」成立
子どもたちの現実に即したメッセージを展開するように
喫緊の課題に直面する子どもたちを継続的に支援する仕組みをスタートさせました
[世界の出来事]
アメリカ同時多発テロ
[世界の出来事]
「ミレニアム開発目標(MDGs)」採択
[日本の出来事]
「配偶者暴力防止法(DV防止法)」成立
「子どもとともに進める地域開発(CCCD: Child Centered Community Development)」を確立
すべての活動の根底・中心に、子どもの視点や意見を据えて活動するという手法をプランが確立しました。
[世界の出来事]
イラク戦争開戦
[世界の出来事]
SARSが大流行
[日本の出来事]
「性同一性障害者特例法」成立
創立20周年を迎える
それまで一律月額5,000円だったプラン・スポンサーシップの寄付金を、支援者が3,000円、4,000円、5,000円から選択できる仕組みに。

東京・お台場で、世界の子どもたちが夢と現実を描いた「夢のこいのぼり」100匹を掲示しました。
[世界の出来事]
スマトラ島沖地震
[世界の出来事]
「イラク復興支援特措法」に基づく自衛隊イラク派遣
スマトラ島沖地震・津波発生。スタッフを派遣
スリランカ、インドネシアに日本のスタッフを派遣。他国スタッフらとともに長期復興計画をとりまとめました。「災害の世紀」と呼ばれる21世紀となり、プランが得意とする地道な開発支援の経験を生かしながら、迅速性を必要とする緊急支援にも取り組んでいくことが確認されました。
第三章
『女の子の力を見出し、後押しすることで、子どもたち全体を応援する』
長年、子どもたちを支援するなかで、「子どもたちのなかでも特に後回しにされがちな女の子を支援しなければ、子どもたちの貧困や不平等はなくならない」と確信。
女の子への支援に焦点を当てる方針を打ち出します。
Because I am a Girlキャンペーン開始
ネパールを訪問したドイツはじめヨーロッパのプランのスタッフが、とある母親の「Because she is a girl」という言葉に衝撃を受けて、ドイツでBecause I am a Girlキャンペーン開始。
[日本の出来事]
新潟県中越地震
『世界ガールズ・レポート』発行
プランの国際本部とイギリスにあるプラン・UKが「世界ガールズ・レポート」(当時は「The state of world’s girls」を毎年発行開始。世界の女の子が直面する課題や現状を調査、分析して発表。
[日本の出来事]
北海道洞爺湖サミットが開催
設立25周年
全国7都市での写真展やチャリティコンサートを通じて、プランの活動を多くの方に知っていただきました。また、ケニアから招聘したユースが洞爺湖サミットの市民フォーラムに参加。
女の子への支援の重要性について発信開始
国際本部発行の「世界ガールズ・レポート」をもとに、早すぎる結婚や人身取引など世界の女の子が直面する課題と女の子がもつ力について日本での発信を開始しました。それに合わせ、初の「Run for Girls」開催。
[日本の出来事]
東日本大震災
東北にて初の国内支援活動に
東日本大震災を受け、世界各国のプラン事務所より寄付金が寄せられました。仙台に事務所を開設し、「子どもの心のケア」「学校再開」などの活動に奔走。また、「WHO 版心理的応急処置-現場の支援者 のガイド」(略称:WHO 版 PFA)を発行し、被災時の心のケアについて普及活動も行いました。
[世界の出来事]
パキスタンで女子教育の重要性を訴えていたマララ・ユスフザイさん(当時14歳)をタリバンが銃撃。一命をとりとめる
日本でBecause I am a Girlキャンペーン開始
女の子の直面する課題を解決し、女の子のエンパワーメントを支援するために、新しい支援方法「ガールズ・マンスリー(現:ガールズ・プロジェクト)」を開始。
[日本の出来事]
第1回「WAW!(World Assembly for Women 日本政府がジェンダー平等と女性のエンパワーメントを国内外で実現するために開催する会議)」開催
プラン・ユースグループ発足
10~20代の若者(ユース)6人がメンバーとなり、同年代の意見を事務局の意思決定や運営に反映させる活動を開始。「子どもや若者の声を取り入れる」というプランの方針が形となりました。
第四章
『混迷を深める世界で、困窮する人々に寄り添う』
紛争、難民、気候変動、災害の激甚化など、世界の課題が複雑化する時代、また格差が広がるなか、SDGsに沿って女の子や女性への支援を継続しつつ、
あらゆる「取り残された人々」に注力するべく、人道的支援も視野に入れ始める
[世界の出来事]
「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連にて採択
「誰一人取り残さない(No One Left Behind)」ことを誓っている。
[世界の出来事]
COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)
[日本の出来事]
「女性活躍推進法」成立
国や自治体、企業などの事業主に対して、女性の活躍状況の把握や課題分析、数値目標の設定、行動計画の策定・公表などが求められるように。
SDGsの目標5を軸に活動を展開する
9月に国連総会で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献するべく、特に目標5「ジェンダー平等を達成しよう」を軸に、現場でのプログラム、政策提言、開発教育などの活動を設計・実施。

新興国や新規富裕層の出現の一方、より困難な状況に追い込まれている「取り残された人々(女性と女の子、少数民族、障害のある人々、避難民など)」への支援の強化を決める。また、紛争、難民、気候変動、災害の激甚化など、世界の課題が複雑化するなかで、人道支援も視野に入れ始める。
[世界の出来事]
TICADⅥ(初のアフリカにての開催)
[日本の出来事]
熊本地震
熊本地震をきっかけに国内での緊急支援が活動の柱のひとつに
被災直後にスタッフが現地入り。東日本大震災の経験をふまえ、支援活動を展開。海外だけでなく、国内での被災地で「子どもの心のケア」「女性のニーズ支援」「学校再開」を柱に活動するという今日の体制作りが始まりました。
団体の正式名称を「公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン」に
[世界の出来事]
#MeToo運動
性被害の体験をハッシュタグとともに綴るSNS上の運動が世界的に広がる。
プランのユースが小池百合子東京都知事に提言
女性の政治参加や若者の意見を取り入れることを提言しました。現場での支援と、政策に働きかける提言(アドボカシー)、これを活動の両輪としていくことが強く意識されるようになりました。
[世界の出来事]
香港民主化デモ
紺綬褒章の公益団体として認定
内閣府より、公益のために私財を寄付された方に授与される「紺綬褒章」の公益団体として認定されました。
[世界の出来事]
Black Lives Matter運動
[世界の出来事]
イギリスがEUから離脱
[世界の出来事]
新型コロナウイルス感染症が世界中で感染拡大
コロナ禍を受け、海外・日本での緊急支援に
活動地域のコロナ対策のための寄付募集を開始。一方で、コロナ禍で困難に直面する日本の女の子のためのチャット相談を開設し、心理士や社会福祉士、助産師らが対応に当たりました。
「日本のユース女性の生理をめぐる意識調査」「日本における女性のリーダーシップ」の調査を実施、発表
メディアにも多く取り上げられ、日本社会におけるジェンダーの認識に一石を投じることができました。
[世界の出来事]
ロシアによるウクライナ侵攻
ウクライナ緊急支援募集
子ども、若者、女の子と女性の環境整備、教育の継続、心のケアなどを実施しました。日本からもルーマニアでの緊急支援活動のため、スタッフを派遣。
公益社団法人ACジャパンの支援キャンペーンに選出
日本での創立40周年を機に、日本国内での活動開始
日本国内の若年女性(15~24歳)の居場所作り、チャット相談、緊急支援などを本格始動しました。海外だけでなく、日本の女の子への支援ニーズを受けてのことです。