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【完了報告】エチオピア・スーダン「女性性器切除から女の子を守る」プロジェクト
エチオピア
ガールズ・プロジェクト
スーダン
(更新)
プラン・インターナショナルは、2017年7月からエチオピア(南部諸民族州、アファール州)、2020年7月からスーダン(白ナイル州)において実施していた「女性性器切除から女の子を守る」プロジェクトを完了しました。ご支援のおかげで実現した活動の成果をご報告いたします。
- ※2023年1月から新たにソマリア・スーダンにおいてプロジェクトを行っています。
活動内容
エチオピア
継続的な対話セッションがもたらした住民の意識と行動の変化
エチオピアでは、ファシリテーターによる住民との対話セッションを継続的に行った結果、住民の意識と行動に変化が見られつつあります。プロジェクト終了時に実施した調査によると、プロジェクト実施期間で234件の女性性器切除(FGM)の施術を未然に防ぐことができました。また、「自分の娘にFGMを施術させない」と回答した母親の割合は81%に達し、プロジェクト開始時の70%と比較すると、より多くの母親がFGMに反対の意志を示すようになりました。さらに、FGMの弊害について理解する保護者は91%にのぼり、FGMについて正しい知識を普及させることができました。
学校に設立した「女の子クラブ」の活動も大きな成果をあげています。ある学校のクラブでは、空いている教室のスペースを活用し、生理中の女の子が休んだり、汚れた衣類を着替えたりできる「女の子の部屋」を設置。その結果、今では他の学校のクラブもこの取り組みをまねるようになり、女の子のための部屋が作られるようになりました。「女の子の部屋」はクラブに所属していない女の子も利用することができます。なかには、行政に働きかけ、布ナプキンを製作するためのミシンを購入し、地域全体の月経衛生管理を促進したクラブもあります。プロジェクト終了後もクラブ同士で学び合い、自発的に活動を発展させていくことが期待されています。
スーダン
FGM根絶を目指す変革者となった女の子たち
スーダンでは、「女の子クラブ」に対するトレーニングを続けてきた結果、女の子たちは自信を持ち、FGM根絶のために行動できるようになりました。プロジェクト終了時の調査によると、FGM防止に関する知識とスキルが向上した女の子は86%となり、目標値の60%を上回りました。プロジェクトを通じて、多くの女の子たちがFGMの弊害について理解し、FGM根絶のために自ら行動することができるようになりました。また、地域リーダーや宗教指導者、市民団体が連携し、FGM根絶のための啓発活動を実施。FGM根絶に賛同する署名活動も広まり、地域全体でFGMをなくしていこうという機運が確実に高まっています。
2023年8月からは、ガダーレフ州でプロジェクトを開始しました。白ナイル州での経験や学びを活かし、ガダーレフ州でもFGM根絶を目指していきます。
主な活動の成果
地域 | 【エチオピア】アファール州 【スーダン】白ナイル州 |
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期間 | 【エチオピア】2017年7月~2023年6月 【スーダン】)2020年7月~2023年2月
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主な支援内容と対象 |
【エチオピア】
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プロジェクト背景
アフリカと中東地域の約30カ国で、約2000年前から続くと言われる「女性性器切除」(Female Genital Mutilation、以下FGM)。大人の女性になるための通過儀礼・結婚の条件として、幼児期から15歳ごろまでの女の子の性器の一部を切除するものです。不衛生な環境で麻酔なしで行われることも多く、激痛と出血をともない、命を落とす女の子もいます。死に至らなくとも、感染症や出産への悪影響を引き起こし、強い恐怖が心の傷として残る有害な慣習です。
15歳から49歳の女性のうち、エチオピアでは74%、スーダンでは87%が施術されているという統計があります※。
FGMを禁ずる国際条約を批准し、法律で禁止する国も多いなか、法の執行が不十分であるため「慣習」として今も水面下で広く続けられています。被害が公に語られる機会も少なく、心身に及ぼす弊害は一般の人々にはほとんど知られていません。
- ※出典:Female Genital Mutilation/Cutting: A Global Concern(UNICEF, 2016)
- ※このプロジェクトは2017年7月よりエチオピアのサウス・エチオピア活動地域シェベディーノ郡に続き、アムハラ活動地域アファール州で実施。2020年7月よりスーダンのホワイト・ナイル活動地域白ナイル州で実施しました。この経験とノウハウを生かして、スーダンで施術率が高く、ニーズの高いガダーレフ州にプロジェクト実施地域を移します。また、新たに、施術率が高いソマリアでも2023年1月よりプロジェクトを開始しました。
関連リンク
現地の声
マディナさん、45歳、地域住民(エチオピア)
「私のコミュニティでは、毎月ファシリテーターによる対話セッションが開催されました。ファシリテーターは約束した日に必ず来てくれたので、いつも楽しみに待っていました。対話セッションでは、FGMや早すぎる結婚などの伝統的慣習がもたらす負の影響について学びました。これから産まれてくる女の子のために、この慣習をやめなければならないと強く思っています。また、このプロジェクトでは、FGM施術後に健康被害を抱えている女の子や女性が適切な医療を受けられるよう、健康保険サービスも提供してくれました。本当に感謝いたします」
アリさん、50歳、宗教指導者(エチオピア)
「私たちの地域では、FGMはイスラム教の教えである大きな誤解があります。私は宗教指導者として、対話セッションに参加し、FGMはイスラム教の教えではないこと、イスラム教は女の子や女性の心身の健康を大切にしている旨を伝えました。この地域の人々はイスラム教の教えを大切にしているので、宗教指導者が人々に働きかけることで、彼らの意識や行動を変えることができると信じています。これからも、対話セッションに参加し、FGMだけでなく、早すぎる結婚やドメスティック・バイオレンスの問題も解決していきたいです」
イシラさん、12歳、女の子クラブメンバー(スーダン)
「『女の子クラブ』に参加していた姉のサポートを受け、家族と協議を重ね、私はFGMの施術を受けずにすみました。今では、私もクラブでFGM根絶のための活動に参加しています。ロールプレイを通じてFGMの問題について考え、ディベートスキルや交渉スキルを学ぶことで、自信を持ち、他者と協議することができるようになりました。クラブで学んだ知識を地域の人たちに伝えたいと思い、行政との連携で開催された16日間におよぶ「女児と女性への暴力反対キャンペーン」に参加しました。これからも、FGM根絶を目指し、活動を続けていきたいです」
リマさん、36歳、地域住民(スーダン)
「FGMの施術にリスクがあるというのは何となく聞いたことはありましたが、具体的にどのようなリスクがあるのかまでは理解していませんでした。このプロジェクトの啓発セッションに参加したことで、FGMが原因で感染症や排尿障害、生理不順などが引き起こされることを理解することができました。今後も啓発セッションを続け、より多くの人たちにFGMが及ぼす負の影響を広めていくことが大切だと思います」