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【経過報告】学びを得て地域の変革の担い手に~女性性器切除から女の子を守るプロジェクト~
ガールズ・プロジェクト
(更新)
2月6日は国連が制定した「女性性器切除(Female Genital Mutilation、以下FGM)の根絶のための国際デー」です。大人の女性になるための通過儀礼・結婚の条件として、幼児期から15歳ごろまでの女の子の性器の一部を切除するものです。多くの国で違法とされ、女性に対する暴力のひとつとみなされています。
プラン・インターナショナルはエチオピアとスーダンの2カ国で、「女性性器切除から女の子を守る」プロジェクトを実施しています。プロジェクトの中から、今回はエチオピアの活動についてご報告します。
エチオピア 別地域で実施したプロジェクトの終了後調査
現在エチオピアでの活動はアファール州へ場所を移し、支援開始にあたっての地域の人々との話し合いをすすめています。この活動を開始するにあたり、2020年6月まで活動していたジェベディーノ郡で実施したプロジェクトの終了後評価のための調査を2020年10月~12月に行いました。
プロジェクトによる地域の変化を測るためにインタビュー主体の調査を実施し、子ども321人(女の子170人、男の子151人)、大人165人(女性80人、男性85人)が参加しました。調査の一部をご紹介します。
地域集会でFGMについて意見を述べる女性
- ※調査は個人のプライバシーや安全を最重視して行いました。一部の地域名は伏せています
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「FGMについて何も聞いたことがない人は、この村にはもういない」
これはインタビューである男性が語った言葉です。プロジェクト開始時(2017年)の調査と比較して「最近、FGMに関する情報を聞いた」という人は、以下のように増加しました。
子どもも大人もプロジェクト期間を通してFGMについて聞いたり、話したりする機会が増えていたことがわかりました。特に男の子と男性のFGMについて聞く機会が増えたことは大きな成果です。
情報に触れる機会が増えれば、考えが変わっていく
学校や地域の集会、ラジオ番組など、複数の情報源から、さまざまな場面で繰り返しFGMについて聞く機会が増えていたことがわかりました。その結果もあり、コミュニティの人たちの考え方や行動が変わってきたと感じていると述べた人も多くいました。ある地区の司法担当官は「女の子グループから『村の女の子がFGMを受けようとしている』と連絡を受けたこともありました。女の子たちはFGMがいかに有害かをよく学び、そうした女の子たちがFGMという慣習を変える担い手として動き始めていると思います」と教えてくれました。また、テレメサ村でインタビューに参加した男の子が「私の姉妹3人はFGMを受けないことを決めました。私も両親もその決定を支持しています」と教えてくれました。女の子がFGMを否定することを積極的に認め、その意見を後押しする男の子や男性たちも出てきました。
元施術師が、FGMを止める側に
FGM根絶を訴える元施術師
プロジェクトでは、過去にFGMを施術する側だった伝統的施術師も、FGM根絶のための活動の一翼を担いました。FGMで金品など謝礼を得ていた施術師たちに、生計手段を得るための研修や小規模ビジネスを始めるための支援も行いました。セデカ村の福祉担当官は「プロジェクトを通じてロバと荷車を受け取った施術師は、水運搬などの仕事を始め、今はFGMの施術を完全にやめました」と証言しました。調査ではプロジェクト対象地域で活動していたFGM施術師40人が、FGMの危険性を理解し施術をやめたことが確認されました。
そして施術師たちはFGMをやめただけではなく、FGMをなくすための活動にも参加しました。自分の家にFGMを希望する女の子9人が相次いで訪れた施術師は、女の子を迎え入れると部屋で待たせ、すぐにFGMを根絶するための地域の女性グループに連絡を取りました。同時に、地元警察へも連絡をとり、女の子たちの保護を依頼しました。保護された女の子たちは施術を受けるのではく、FGMが及ぼす悪影響について説明を受けたのち家路につきました。プロジェクトでは元施術師を、女の子をFGMから守り法律を遵守した、との理由から表彰しました。
実施件数が大幅に減少
「自分のコミュニティでFGMが実施されている事例を目撃、遭遇したことがある」と回答した大人は165人中78人の47.3%(女性48.8%、男性45.9%)で、このうち目撃したのは3年以上前だったと回答したのは30人(38.5%)、2年前だったのは5人(6.4%)、1年前は2人(2.6%)でした(図1参照)。目撃者数からも、プロジェクト対象地域では、FGMの実施は減少傾向にあると考えられます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と残された課題
FGMの実施例を見聞きした数は順調に減っていますが、調査の直近6カ月間(2020年4~10月ごろ)はその前に比べ高い数字でした。掘り下げてインタビューをすると「新型コロナウイルス感染症の流行が一因では」という考察をした人もいました。新型コロナウイルス感染症の流行初期、学校は休校となり、プロジェクトに協力してくれていた政府当局も活動を続けられず、FGMの根絶にむけた動きはほぼ全面停止に追い込まれていました。
グループディスカッションや聞き取り調査からの声
プロジェクト実施地域自治体の担当官
「コロナ禍ではすべてが止まってしまいました。私たちは、村や家を訪問することができませんでした。コロナ禍で村を訪問できなかった間に、FGMを受けた人が、女の子たちにFGMをすすめていたことが後でわかりました。そして受けることを決めた女の子もいました。女の子は、自分の村では受けられないため、ほかの地区に行って受けたようです。この話を聞いたときはとても残念でした」
対象地域の学校の校長
「ロックダウンの間は啓発活動を続けられなかったこともあり、隠れてFGMを実施しやすい状況に陥ってしまいました」
プロジェクトの経過とともにFGMの実施数は減少していますが、隠れて実施するケースがあることも調査では明らかになりました。FGMが無くならない理由について、ある宗教指導者は「FGMがもたらす悪影響を理解しても、それでもまだ受けるべきか悩む女の子がいます。自分の意志または夫の家族に言われて施術を決める場合もあり、『結婚女性はこうあるべき』といった価値観がFGMを後押ししているのだと思う」と語りました。
女性の社会的地位とFGM
力強く意見を述べる女の子グループ。将来の活躍も期待される
近年までこの地域では、女性は土地所有ができないという慣習があったこともあり、女性の経済力は相対的に低い傾向にあります。そのため、結婚は経済的安定のために必要と考え、結婚相手として優位に立つためには「純潔」を証明するFGMが必要だとの考えに追い込まれている人もいます。隠れて実施されるFGMも根絶し、すべての女の子を守るためには、健康被害について訴えるだけではなく、女性の社会的地位を変化させていく働きかけも大切です。
プロジェクトを通じて、女の子の権利と社会的地位の向上の大切さを理解した人たちが、プランに代わりFGMの根絶にむけた活動の推進者となり活動の中心を担っていきます。
2020年7月からはスーダンの白ナイル州でも同じプロジェクトを始めています。スーダンの対象地域の女の子や女性、その家族に対してFGMに対する意識調査を実施したところ、FGMの健康被害については理解しつつも、昔から地域で実施されている慣習であり、女性が結婚するためには必要なもの、と考える人が多いことが分かりました。女性はこうあるべきといった価値観が、FGMがなくならない要因の一つなのはスーダンでも同じでした。エチオピアでの経験を生かしながら、スーダンでも、FGM根絶にむけて、人々の意識や行動を変えるための対話やトレーニングを根気強く実施していきます。
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関連リンク
インタビュー参加者のコメント
FGMについて話す村の集会は何度も開催され、多くの議論があった
テレメサ村の男の子たち
「ここ数年はプロジェクト主催のFGMの弊害を学ぶ研修に参加していたからFGMについて多く議論しました」
ゴボハビシャ村の男の子
「学校のクラブ活動や教員からの話だけではなく、ラジオやストリートショーでもFGMの話を聞きました」
ゴボヘビシャ村の女の子
「地方政府の専門家が企画したFGMについて学ぶ活動に参加しました。学校のクラブや地区の医療従事者によるプログラムにも参加しています」
ドレチャ村の男性
「プロジェクトが主催した地域集会や村の自助グループでの会議、ラジオ番組でもFGMの話を聞きました」