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(2024年05月30日更新)

みなさんは「アフターピル(緊急避妊薬)」を知っていますか?

望まない妊娠を防ぐための薬で、昨年末から日本でも薬局で手に入るようになり注目を集めています。
そんなアフターピルの啓発活動をしているのが『#なんでないのプロジェクト』代表の福田和子さんです。
今回は福田さんに、アフターピルの基本知識から、日本と世界のさまざまな避妊法について教えていただきました。

『#なんでないのプロジェクト』代表。スウェーデンヨーテボリ大学大学院公衆衛生学修士課程。東京大学多様性包摂共創センター特任研究員。スウェーデンへの留学をきっかけに、日本の性の健康をめぐる環境があまりに整っていないことに問題意識を持ち、『#なんでないのプロジェクト』を開始。性で傷つくのではなく、人生豊かになる社会を目指して、執筆や講演活動などを行う。世界を変える30歳未満、Forbes Japan 30 under 30 2023選出。

── まずはアフターピルの基本情報について教えてください。

福田:アフターピルは緊急避妊薬とも言われます。
避妊に失敗した時や、避妊できなかった時、性被害を受けた場合などに服用することで、高い確率で妊娠を防ぐことができる薬です。

なるべく早く服用することが必要で、遅くとも72時間以内に服用することで高い確率で妊娠を防ぐことができます。

── これまでは病院を受診しなければ手に入らなかった薬が、診察なしで薬局でも買えるようになったと聞きました。

福田:そうなんです。以前は、処方せんが必要な薬だったので、基本的には病院で診察を受けて処方箋をもらい、ようやく手に入る薬でした。

妊娠する可能性がある行為があった後すぐに服用する必要があるのに、近くに病院がない地域の方や、土日やお盆などで病院が開いていないことも多いなど…非常にアクセスしづらい状況がありました。

そこで、2020年に『#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト』を共同代表として立ち上げて、政府に働きかけを行い、ようやく昨年11月から処方せんが無くても、薬局で販売する試験運用が始まりました。

「#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」は、11万件を超える署名を厚生労働省に提出。2022年のパブリックコメント時にはX(旧Twitter)でトレンド入りするなど大きな反響を呼びました。

福田:念願の薬局での販売が試験的にとはいえスタートしましたが、多くの課題もあります。

全国に145件ほど取扱薬局がありますが、各都道府県単位で見ると数件程度と、まだまだ数が少ない。

例えば、北海道はあんなに広いのに旭川市に3件あるのみですし、東京都でさえ5件しかない状態です。

そして、16歳、17歳は保護者の同伴が必要で、15歳以下は購入できません。値段も7000円〜9000円ほどと、特に10代には簡単には手を出しにくい。

── 10代は保護者同伴だとハードルが高いですよね。薬局で買える手軽さが失われる気がします。

福田:10代など若ければ若いほど、望まない妊娠による影響は深刻だと思います(もちろん誰にとっても大変なのですが)。必要としている10代が使いづらい制度なのはすごく残念。

世界に目を向けると、アフターピルは90カ国以上の薬局で処方箋の必要なく購入でき、保護者同伴という国は聞いたことがありません。国自体も今回の検討にあたり海外調査を行いましたが、そのような国はありませんでした。

値段もアジアだと数百円から、ヨーロッパでも1000〜3000円程度。10代は無料という国もあるほどです。

こう考えると、世界と比べて日本ではアフターピルが非常に入手しにくい事実、条件付きというのはかなり特殊ですよね。

しかも日本の場合「悪用する場合があるから、目の前で飲んでください」という薬剤師の目の前で面前服用という条件もあります。

── そんな条件があるんですね!むしろアフターピルは、事前に準備をしておきたい方も多いのでは?

福田:WHO(世界保健機関)でも、アフターピルは何かあったらすぐ服用できるようにストックしておくことを推奨しています。

パートナーの有無に関係なく、また残念ながら性暴力もまだまだ多い。それを考えると、何か起こった後ではなく、起きる前から用意しておくことが大事だと思います。

── 今のお話を聞くと、薬局で販売できたからゴールではなく、条件面を改善することや値段を下げることなど、まだまだ課題はあるのですね。

福田:そうなんです。課題はありますが、「ないよりはマシ…!」という状態なので、ぜひ必要な方にアフターピルの存在を知ってもらいたいですね。

アフターピル取扱薬局の一覧はこちらから

こんなに違う!日本と世界の「避妊」の種類

── ここからは「避妊」について教えてください。日本では、年間どのくらいの方が望まない妊娠をしているのでしょうか。

福田:望まない妊娠の数は、年間約61万件といわれており、中絶件数は年間約14.5万件です。

  • 出典:日本における予定外妊娠の医療経済的評価

この数字からもわかるように、妊娠するからだを持ってさえいれば、誰にでも起こりうることなんです。とはいえ、この数に驚く方もいるかもしれません。

ただ、中絶の数が減ったらいいかと言えばそう単純な話でもないんです。あるフランスの助産師さんの話では、「中絶する数の裏には、避妊薬にアクセスできなかった人も多くいる。大切なのは、どれだけの人が、中絶したいと思ったときにちゃんと安全な中絶にアクセスできたのかということ。そのため中絶したいときにできるような環境を整えることが大事」とおっしゃっていました。

── 望まない妊娠を防ぐためにも「避妊」が重要になってきますね。ちなみに避妊の種類はどんなものがありますか?

福田:日本の避妊法は「コンドーム」「低用量ピル」「IUS / IUD(子宮内避妊具)」の3種類あります。
なかでもコンドームを選択する人が圧倒的に多いですね。

〈コンドーム(ペニス用)〉
男性器につける避妊具。避妊+感染症予防もできる。
成功率:82%

〈低用量ピル〉
1日1錠、毎日同じ時間に飲むことで妊娠を防ぐ。
成功率:93%

〈IUS / IUD(子宮内避妊具)〉
子宮内に小さい器具を挿入することで妊娠を防ぐ。使用期間が長く(5〜10年)途中で止めることもOK。
成功率:99%

── 日本でコンドームの使用が多い理由はなぜでしょう?

福田:これには歴史的経緯があります。日本は戦後に人口爆発が起きて、一気に人口が増えたことで食糧難になりました。
そこで政府は世界でもいち早く中絶を合法にして、人口を抑えようとしたんですね。

一方、諸外国で中絶ができるようになったのは70年代以降。宗教上の理由から中絶を禁止している国(アメリカなど)も数多くありました。
中絶の権利の獲得は女性運動の成果のひとつでした。だからこそ、避妊法としてピルの導入は女性たちからも熱烈な歓迎を受け、海外では60年代には認められていました。より安全な低用量ピルが使われ始めたのも、70年代。
しかし、日本でピルが認められたのは1999年。
国連加盟国では一番最後で、当時ピルが承認されていなかったのは北朝鮮と日本だけだったほど…だいぶ遅かったんです。

── なぜそんなに時間がかかったのですか?

福田:なぜピルを導入できたかというと、バイアグラ(男性用の勃起不全の薬)と関連があります。この薬は98年に開発されて、日本で同年すでに承認され導入が決まりました。
このことが国内外で批判を浴び、その流れでピルも認められることになったという訳です。

── 女性は30年以上ピルを使うことが禁じられていた一方で、男性がバイアグラを使うのはすぐ容認されるとは…おかしな話ですね。

福田:つまり中絶もピルも、女性のからだや権利を考えて認められたわけではなかったんです。

ただ、長い間ピルが承認されてこなかったので、「副作用もあるし、なんとなく怖い薬だよね」というイメージが先行し、あまり使用者が増えなかった。

医療機関で手に入れるというハードルも高いし、値段も高い。
「だったらコンドームでいっか」という人も多く、情報も限られてきたので、日本ではコンドーム一択の風潮が今も続いています。

── その一方で、海外ではいろんな避妊法があると聞きました。

福田:そうなんです。日本で避妊法は3種類しかないですが、それらを含めて海外では10種類以上もあります。

からだに貼るパッチタイプのものから、効果が3カ月続く注射タイプまで、多種多様なものがあるんです。
簡単にご紹介していきますね。

福田さんが持参した海外の避妊グッズ。

〈避妊パッチ〉
上腕、腹部、背中、お尻など好きな場所1カ所に貼ることで、ホルモンが出て妊娠を防げる。1週間毎の交換を3回繰り返した後、1週間使用をお休みする。
成功率:91%

〈避妊注射〉
3カ月毎に接種することで避妊効果が持続。避妊していることが分からないのでプライバシーが守られるメリットがある。
成功率:94%

〈避妊リング〉
腕に入れる避妊具。マッチくらいの大きさで、妊娠を防ぐホルモンを出す。
成功率:99%

〈ダイアフラム〉
柔らかいシリコンでできたカップを腟内に挿入し、子宮頸部を覆うことで避妊が可能に。
成功率:83%

〈コンドーム(腟用)〉
女性の腟に装着するコンドーム。別名「女性用コンドーム」と呼ばれている。
成功率:79%

参考:#なんでないのプロジェクト/Planned Parenthood

── はじめて知るグッズばかりです!これだけたくさんあると、自分に合った避妊法を選べそうですね。

福田:たくさんの避妊法があると知ったのは、私がスウェーデンに留学していた頃です。

若者向けのユースクリニックがあり、そこでは毎週、少人数で集まる小さな会があって、助産師さんから避妊法についてカジュアルに学んだり、お話したりするんですよね。
イメージとしては、先輩のお姉さんたちに避妊法を教えてもらうといった、ワイワイと楽しい雰囲気。

ほかにも、大学で出会った友人は、自分のライフプランの中で妊娠/避妊についてこう考えていました。

「いまは学業に専念したいから、子どもを産むのは難しい。この時期はしっかり避妊して、数年後、この期間に妊娠をして、その後こういうキャリアを築いて…」といったような感じ。

男性側に避妊を委ねず、女性たちが避妊について自己決定をしていることに驚きました。
「避妊はチョイスできるんだ!」ということを学びましたね。

「性」の話は個人と分けて考えよう

福田:昨今はよく「自分を大切にしよう」という言葉を聞きますよね。
しかし避妊など、女性が主体的に自身のからだを守ることができない今の状況は、果たして本当に自分を大切にできるのだろうか?とも思います。

特に若いうちは、いろんなチャレンジをしたい時期。それで学んでいくわけですよね。ただ、チャレンジをすれば、失敗をすることももちろんあります。それと同じように、セックスで避妊に失敗することも、誰にだって起こりえます。

女性たちが、自身のライフスタイルに合ったさまざまな避妊を選べる社会の方がいいと思っています。

── 本当にそう思いますね。とはいえ、避妊や性に関する話は友人やパートナーと話しづらい…という人も多いです。そんな方に何かアドバイスはありますか?

福田:性の話で大事なのは、「性とプライベートの話は分けて話せる」と知ることかなと思います。

どうしても性の話をしていると、自分のプライベートな話を赤裸々に話す必要があるのでは?と考える人も多いと思います。

話したくないことは話さなくて全然OKです!
このことをバウンダリーと言ったりしますね。

〈バウンダリーとは?〉自分と他人との「境界線」のこと。話したいこと、共有したいこと、その境界線は自分で決めていいというもの。また相手の境界線も尊重することをいいます。

── なるほど!性の話だと赤裸々に話さなきゃ…という風潮がありますよね。分けて考えるという話は思いもよりませんでした。

福田:そもそも性の話は「健康」の話でもあります。細かな趣味嗜好を話さなくても、大切なことは結構伝わったりする。

例えば、私は避妊や性についての話をさんざんしてきましたが、私自身のプライベートな話は一切していないですよね。

私自身この活動をしていますが、「性に関して自分のことも何でも話したい!」というタイプでは全くありません。飲み会などの場でも、私はプライベートな話はオープンにしない方では、と思うくらいです。

ですからみなさんも「個人の性的な話」と「性の健康」は分けて考えてみてください。
正しい性の知識を知っておくことで病気を予防できたり、医学的な性器の名称などを知っておくと、病院に行った時などにフラットに説明できたりします。

性についてなんでもかんでもオープンに話さなきゃ!ではなく、「必要なときに、必要な分だけ話せる」ようになることがまず大事だと思いますね。

福田:私がこのように活動をしていることを、家族/友人含め周りの人はすごく応援してくれています。

性をタブー視している人も多いですが、私から話してみると、意外とみんな話してくれる。

フラットに話したり、自分の話したい範囲で悩みを共有すると、意外と仲間はいるのかな、と思いますね。

ぜひ一歩、踏み出してみてくださいね。結構、ひとりじゃないんだって、励まされるし、楽しいし、きっと生きやすくなりますよ。

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