(2026年02月27日更新)

あなたは、働くなかでジェンダーギャップ(性別による格差)を感じたことはありませんか。
「出産後、管理職に戻れなかった」
「管理職の会議で、女性が自分ひとりしかいなかった」
「母親だからと、やりたい仕事を任せてもらえなかった」
こうした声は、決して特別なものではありません。
キャリアのどこかで、似た場面に向き合ったという声も多く聞かれます。
今回は、第一三共株式会社、大王製紙株式会社、パナソニック株式会社で活躍する女性管理職の方々に、これまでの経験や、企業が進めるジェンダーギャップ解消の取り組み、
そして課題解決に向けたヒントについて伺いました。
キャリアに迷ったとき、働き方に悩んだとき。
多様な現場の経験談が、あなたの一歩にきっとつながるはずです。
お話を聞いたのは:

サステナビリティ部 部長
福間 明子さん

H&PC国内事業部 商品開発本部
フェミニンケア商品開発部 課長
倉持 美帆子さん

くらしアプライアンス社
DEI・組織開発室 室長
小泉 朱里さん
そもそもジェンダーギャップとは?
「ジェンダーギャップ」とは、性別(ジェンダー)によって生まれる格差(ギャップ)のこと。
仕事面においては、能力や意欲が同じであっても、社会のしくみや無意識の思い込みや固定概念(ジェンダー・ステレオタイプ)が積み重なることで、賃金や昇進、働き方などに差が表れがちです。
日本は先進国のなかでもジェンダーギャップが依然として大きいと言われています。
たとえば、男女の賃金格差は22%と、先進国(OECD)平均11.3%と比べて約2倍の開きがあります。
賃金格差にはさまざまな要因が重なっていますが、そのひとつに「女性管理職が少ない」ことが挙げられます。
日本の女性管理職の割合は約16.3%。欧米では30〜40%程度の国が多く、日本はその半分以下と低い水準です。
女性管理職の割合が低いことは、賃金格差の一因であるだけではなく、意思決定の場が男性に偏りやすくなり、多様な視点が反映されにくくなることにもつながります。
女性管理職が感じた「ジェンダーギャップ」
では、企業で働く女性管理職のみなさんは、実際にどんなジェンダーギャップを感じてきたのでしょうか?ご自身の体験談と、どのように壁を乗り越えてきたのかを伺いました。
── キャリアのなかで、ジェンダーギャップを感じた経験とは?
私は育児と仕事の両立に本当に苦労しました。
子どもが3人おり、約10年間時短勤務を続けるなかで、いわゆる「マミートラック※」に入り、キャリアアップの道が見えなくなった時期もありました。
特に、出産前は管理職として責任ある立場にいたのに、復職後は管理職に戻れず、意思決定の場から離れた時は、「仕方ない」という気持ちと「なぜ私だけ」という悔しさが入り混じったことを今でも覚えています。
この経験は、働き方や評価のあり方を考える大きなきっかけになりました。
パナソニック
小泉さん
※マミートラックとは?|女性が出産・育児を機にキャリアの主要コースから外れること。「母親専用の(出世とは無縁の)軌道」に乗ることを意味します。
大王製紙
倉持さん
私の所属部署はフェミニンケア(生理用品など)という商材の特性もあり、周囲に女性上司が多くいたため、課長になるまでは、ジェンダーギャップを意識することはほとんどありませんでした。
しかし、課長になり経営層への報告が増えるなかで、会議室内にほぼ男性しかいないことに驚きました。役員クラスも改めて確認したところ、ほぼ男性であることに驚き、性別の偏りにギャップを感じました。
── ジェンダーギャップという「壁」にぶつかった時、どのように乗り越えてきましたか?
パナソニック
小泉さん
私が大切にしたのは「対話」です。
上司や同僚に「わかってほしい」ではなく、自分のキャリアの考え方や今の状況でどう貢献できるかを伝えることを心がけました。特に上司は重要なビジネスパートナー。定期的に1対1での話し合いを申し入れ、キャリアプランや業務内容をすり合わせることで信頼を築きました。
また、ある先輩から「女性のキャリアは長距離走。短期的な成長は難しくても、腐らず積み重ねれば10年後に必ず花開く」という言葉をもらい、焦らず挑戦し続ける勇気を得ました。
育休復帰後、娘が保育園になかなか慣れず、毎日号泣。
そこまでして働いているのに、自分がやりたい仕事ができないことに疑問を感じていました。
その頃、人事部主催のキャリアセミナーに参加し、お子さんがいてもキラキラとしなやかに働く女性先輩社員のお話を聞く機会があり、このままではいけないと奮起。社内公募制度を活用して、自分のやりたいことができる部署に異動しました。
第一三共
福間さん
大王製紙
倉持さん
経営層に男性しかいない現状を見て、女性管理職として、上を目指す必要性を意識するようになりました。そのため将来に備えて、まずはマネジメントに必要なスキルを学び始めました。
また、現状の経営層の立ち居振る舞いを観察し、自分ならどう振る舞うかを考え、参考になる部分を見つけて、自分らしい形で取り入れるよう意識しています。
ジェンダーギャップ解消へ ── 企業の取り組み
近年はジェンダーギャップ解消に取り組む企業も増えています。
女性管理職のみなさんに、社内の取り組みや、リーダーを目指す女性たちへのアドバイスを聞きました。
── 会社として、ジェンダーギャップ解消に取り組んでいることとは?
第一三共
福間さん
第一三共ではジェンダーギャップ解消に向けて、女性幹部や管理職の比率目標を設定し、経営層が各部門と直接対話しながら課題解決に取り組んでいます。
テレワーク推進や育児・介護支援、不妊治療休暇の導入など、多様で働きやすい環境を整備。女性マネジメント職ネットワーク「SWAN」では、相互支援や次世代育成に取り組み、女性の活躍を支えています。
また、全社員を対象にアンコンシャスバイアス※研修を実施し、男性の育休取得推進にも力を入れるなど、性別を問わず誰もが長期的に活躍できる職場づくりを推進しています。
※アンコンシャスバイアスとは?:無意識の偏見や思い込みのこと。育った環境や経験、知識などから「〇〇だからこうだろう」という先入観を持つこと。
パナソニックでは「UNLOCK(解き放つ)」をキーワードに、ジェンダーギャップ解消に向けた全方位的な取り組みを推進しています。
女性管理職の増加を重点課題とし、「制度」「環境」「意識」の3つの側面から施策を展開。
柔軟な働き方制度やキャリア支援、意識改革プログラムに加え、男性の育児参加促進やジョブ型人事制度の導入にも取り組み、誰もが活躍できる企業文化を目指しています。
パナソニック
小泉さん
大王製紙
倉持さん
大王製紙では、女性向けのキャリアに関する研修やリーダーシップ研修、女性管理職のメンタリングプログラムなどを通じて、社員が自分らしいキャリアを描けるようサポートしています。
また、育児や介護と仕事を両立しやすいように、休暇制度や柔軟な働き方の仕組みを整え、安心して働き続けられる環境づくりを進めています。
さらに、男性の育児休業取得を積極的に後押ししており、取得率や取得日数も大きく伸びています。男性が家事や育児により関わりやすくなることで、ライフイベントによる負担が女性に偏らない、よりやさしい職場づくりにつながると考えています。
── 女性管理職が増えるために、必要なことは何だと思われますか?
パナソニック
小泉さん
まず、根強い「男性が働き、女性が家事をする」という性別役割分担意識を変え、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)に気づき、是正することが重要です。
次に柔軟な働き方改革を進め、育児や介護と両立できる環境を整える必要があります。さらに、企業では女性管理職がまだ少なく、周囲にロールモデルがいない人も多いのが現状です。
「見たことのないものは目指しにくい」ため、女性管理職のロールモデルを育成・発信し、キャリアの選択肢を示していくことが求められます。加えて、男性の育児参加や企業全体・上司の意識改革も不可欠です。
まずは、身近な課長層(男女問わず)が、やりがいをもって楽しそうに働いている姿を見せることが大切だと思います。
「こんなふうに働けたらいいな」と思ってもらえる存在になることで、管理職も悪くないと思ってもらえるようにすることが必要だと感じます。
制度や仕組みだけでなく、ふだんの雰囲気や前向きな姿勢が、次の世代の「やってみたい」という気持ちにつながると思います。
大王製紙
倉持さん
第一三共
福間さん
日本で女性のリーダーがまだまだ少ない背景には、さまざまな要因があると思います。何か一つだけを解消すればよいというものではないと思いますが、個人的には、「マインドを変えること」が重要だと思います。
「インポスター症候群※」という自身を過小評価する心理的傾向が女性には多いと言われており、実際このインポスター症候群がチャンスを遠ざけているのではないかと感じます。
メンタリングやコーチング、座談会などを通して、「私もできる」「やってみよう」というマインドを醸成していくことは、大事な取り組みだと思います。
※インポスター症候群とは?|高い実力があるにも関わらず、自身を過小評価する傾向のこと。完璧主義や自己肯定感の低さが原因とされています。
── 管理職やリーダーを目指す女性たちへ、アドバイスをお願いします。
大王製紙
倉持さん
私自身、子育て中で、家族はもちろん、両親や兄弟、友人にたくさん頼りながら日々を乗り切っています。ライフも仕事も周囲に助けてもらいながら、もっと気楽に取り組んでいいと思います。
管理職になると責任の重さを感じる一方、担当者時代とは違ったやりがいや楽しさが見えてきます。ジェンダーギャップのない社会になるよう、女性も男性も気にしないで働けるように、ぜひ一歩踏み出してほしいです。
目の前に来た”馬”には乗りなさい、と以前有識者の方から言われ、その通りだと思っています。自身の希望でも、会社都合でも、目の前に来た新しい業務、部署、ポジションを通り過ぎさせない。後のことは乗ってから考えればOK。
以下を自問自答しておくと、自分がやりたいことが明確になり、馬に乗った時の参考になると思います。
- 自分は何が大好きか?
- 自分は何が一番得意か?
- 世の中に貢献できることは何か?
- 自分は何のために働いているのか?
第一三共
福間さん
パナソニック
小泉さん
キャリアやライフスタイルの選択に迷うこともあるかもしれませんが、企業も女性のキャリアアップ支援に積極的に取り組んでおり、昔に比べて今は挑戦できる選択肢が確実に広がっています。
諦める理由を探すより、やってみる理由を探す方がずっと楽しい。
今の選択が10年後の自分をつくります。10年後の自分から「あの時頑張ってくれてありがとう」と言ってもらえる選択をしてください。未来をつくるのは、今の一歩です。
***
お話を伺った3人に共通していたのは、「社内制度や文化」「個人のマインド」がそろって初めて、ジェンダーギャップは縮まっていく──という実感でした。
近年はビジネス界全体でも「ジェンダーギャップ解消」を重視する動きが広がり、少しずつ変化が生まれています。
今日からできるアクション
仕事におけるジェンダーギャップを解消するために、私たち一人ひとりにも今日からできるアクションを紹介していきます。
学生なら ──
- 就職活動ではジェンダーギャップ解消に取り組む企業かどうかを確認する。
- ロールモデルを見つける。
- 過小評価せず「自分にはできる」というマインドを持つ。
社会人なら ──
- 育休や時短勤務を取りやすい社内の雰囲気づくりに関わる。
- 無意識の偏見による言葉遣い、ふるまいがないか見直してみる。
- 上司とコミュニケーションを図り、キャリアや働き方の要望を伝える。
- パートナーと家事・育児の負担を見直し、より公平な分担を目指す。
管理職なら ──
- 評価するときは「性別」ではなく「意欲や能力」「成果」を判断基準にする。
- 部下と密にコミュニケーションを図る。
- 無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)について学ぶ。
- 育休・時短勤務利用者がキャリア上不利にならない配置や評価をする。
ジェンダーギャップの解消は「女性だけの問題」ではありません。
育休の取得しやすさ、ライフステージにあわせた柔軟な働き方(テレワーク、フレックス制、時短勤務など)、性別による偏見をなくすことは、すべての人にとって働きやすい社会につながります。
誰もが自分らしく働ける環境をつくるために、まずは今日からできることを、できる範囲で始めていきましょう。
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プラン・インターナショナルは、生まれた地域や性別にかかわらず、子どもや若者、とりわけ女の子が差別なく成長し、学び、自分の人生を選び取れるようにすることを目指して、世界80カ国以上で活動している国際NGOです。
企業のみなさまとは、ジェンダー平等や子どもの権利に関するプランの知見を生かし、企業向け研修・講師派遣などを通じて、よりよい社会づくりに向けた協働を進めています。
また、パートナー企業とともにジェンダー平等の推進や社会課題の解決をめざす「PLAN MOVEMENT」も展開中です。
これらの活動もぜひチェックしてみてください。
プラン・インターナショナルは、企業とのパートナーシップで
女の子のエンパワーメントを促進しています。











第一三共
福間さん
私が入社した1995年頃は、官公庁への書類の提出や郵便当番は女性新入社員の仕事でした。また、結婚・妊娠したら会社を辞めるという風潮があり、実際多くの先輩社員が退職していました。
その後出産を経て、2009年頃に育児休業から復帰した際には、当時の上司から「子どもが3歳になるまではお母さんはなるべく一緒に過ごしたほうがいい」と言われ、時差の関係で夜間の会議が増える欧米との仕事は任せてもらえませんでした。
母親からも、仕事を辞めることを勧められたことも。
一方で2026年現在は、少なくとも私個人としては職場でジェンダーギャップを感じることはありません。