(2025年01月29日更新)

みなさんは「ルッキズム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、人を見た目だけで判断したり差別したりすることを指していて、最近はネットなどでもよく話題になっています。
今回は「女の子とルッキズム」をテーマに、なぜ起こるのか、どうすればそこから抜け出せるのかを、一緒に考えてみましょう。
「ルッキズム」とは?
「ルッキズム」とは、人を外見だけで判断したり、差別したりすること。日本では「外見至上主義」と訳されることが多い言葉です。
最近登場した言葉のように聞こえるかもしれませんが、もともとは1970年代にアメリカのメディアによって作られた、外見・容姿を意味する”look”と、主義をあらわす”ism”を組み合わせてできた造語です。
気をつけたいのは、「外見を褒めること」も場合によってはルッキズムに当てはまる可能性があるということ。
友人同士で見た目を褒め合うのはよくあることですが、これも「外見を重視している」という行為に変わりはなく、相手によってはコンプレックスに感じている部分に触れてしまったり、「綺麗でいなければならない…!」というプレッシャーになってしまったりする可能性もあります。
親しい仲であっても、容姿について不用意に言及するのは避けたほうがよいでしょう。
容姿に悩む女性は9割も!
ルッキズムは性別問わず起こりますが、なかでも女の子たちは影響を受けやすいと言われています。
たとえばプラン・ユースグループが15歳〜25歳の若者を対象に行った調査では、「自分の容姿に悩んでいる」と回答した女性は9割以上に達しました。
女性たちに具体的な悩みを聞いたところ、以下のような回答がありました。
調査では、「自分の容姿について気になる部分はどこですか?」という問いに対し、女性は「顔立ち」を最も気にする一方、男性は「肌の質」と回答するなど、男女間の違いも見られました。
ルッキズムが生まれる原因とは?
なぜルッキズムは生まれるのでしょうか?
主な原因を解説していきます。
SNSがもたらす「映え」文化
ルッキズムは、SNSが大きな影響を与えていると言われています。
SNSでは、すべてがキラキラして見えますよね。みんな綺麗でスタイルが良いし、投稿されるものも美味しそうなご飯、素敵な旅行、オシャレな暮らし────すべてがまぶしく映り、「自分なんて全然ダメだ…」と落ち込んでしまう人も少なくありません。
でも実際には、「SNS映え」を意識して、加工アプリによって加工されているものや、より良く見せるために「盛られた」投稿も多くみられます。SNSを繰り返し見ているうちに、自分とのギャップに苦しむ人も大勢います。
アイドルなど「憧れの人」の影響
アイドルやインフルエンサーなど「憧れの人」を、SNSでチェックしている人も多いのではないでしょうか。
日々、ダイエットや食事制限、美容ルーティン、コスメやメイク動画に至るまで、「綺麗でいる」ためのさまざまな情報が発信されています。
しかし、視聴者からすると「美しくなるためにはこれをやらなきゃ!」と焦ったり、「努力していないから、自分はダメなんだ…」と感じたりすることも。
こうした憧れが生む「美のプレッシャー」は、ルッキズムを助長する原因のひとつになっています。
実際に、アイドルやインフルエンサーのなかには、美を求めるプレッシャーに苦しんでいる人も多く、摂食障害などを経験しているという声も少なくありません。
コンプレックス広告
電車やSNSなどで、美容整形や脱毛サロンの広告、いわゆる「コンプレックス広告」を目にすることは多いはず。
二重整形、脱毛、エステ、最近では歯列矯正も急増しています。
こうした広告のなかには、女の子たちのコンプレックスを煽ってビジネスに結びつけているものもあります。コンプレックス広告は、特に若い世代の自己肯定感を低下させる要因のひとつと言えるでしょう。
周囲からのプレッシャー
小さなころから容姿を褒められることが多いと、「いつも綺麗でいたい」「やっぱり美人のほうがいいのかな」と、どうしても意識してしまいますよね。
たとえば親からの「かわいい」「スタイルがいい」「身長が高い/低い」といった言葉や、友人からの「ちょっと太った?/痩せた?」といった言葉。こうした周囲からの何気ない言葉は、ほとんどが悪意のないものですが、言われる側にとっては「美のプレッシャー」となることも。
常に外見に対する評価にさらされて育つと、いつの間にか「見た目が大事」という価値観、つまりルッキズムが心のなかに根づいてしまうことがあります。
ルッキズムが広がると…こんな悪影響が
ルッキズムが行き過ぎると、心や体に大きな負担がかかってしまう人が増えると言われています。
摂食障害
「もっと痩せなきゃ!」と思うあまり、極端なダイエットに走ってしまう人も。
その結果、食べることを拒む「拒食症」や、ストレスから過剰に食べ過ぎる「過食症」といった摂食障害に陥る危険性があります。
摂食障害は、栄養不良やホルモンの乱れなど深刻なダメージを与え、最悪の場合は命を落とすことも。
摂食障害は10〜20代の若者が多く、男性よりも女性の方が5〜10倍も多いことが分かっています。
身体醜形恐怖症
自分の外見に対して、他の人が気にしないような細かい部分まで過剰に気にしてしまう状態。
悪化すると、人に会えなくなったり、社会生活に支障が出たりすることもあります。
アメリカ心理学会の調査によると、1日2時間以上SNSを利用する若者は、自分の外見に対する不満が増加し、身体醜形恐怖症の傾向が強くなると報告されています。
ルッキズムから抜け出すためには?
ルッキズムから抜け出すためには、どうすれば良いのでしょうか?
スマホやSNSから少し離れてみる
スマホは便利で欠かせないツールですが、メンタルヘルスの悪化や、ルッキズムの助長につながることが、あらゆる研究で明らかになっています。
「疲れたときはSNSを離れる」、「1日のなかで数時間スマホをOFFにしてみる」などは、ルッキズムから抜け出すために効果的です。
ボディ・ポジティブを知る
「ボディ・ポジティブ」という考え方を知っていますか?
これは、自分の体型や容姿をそのまま受け入れようという運動で、2012年からアメリカを中心に世界中に広まりました。心理学的にも、ボディ・ポジティブは自己肯定感を高める効果があり、特に若者のメンタルヘルスに良い影響を与えることが分かっています。
「完璧ではない、不完全な自分を受け入れる」ことは、すぐには難しいかもしれませんが、少しずつ肯定できるようになると、自分を大切に思える瞬間が増えていきます。
「自分の心地よさ」を優先しよう
「綺麗になりたい」「かわいくなりたい」、そう思うのは自然なこと。しかし、美容に励む動機が他人からの評価である場合は注意が必要です。
美容は自分が「心地よい範囲」で行いましょう。「メイクをすることで気分が上がる」「体をケアすることで、自分を大切にしている感覚を得られる」など。
もちろん行き過ぎはNG。心がザワザワしたり、違和感を覚えたりしたときは立ち止まって考えることも必要です。
「自己効力感」を高める
自己効力感とは、ある課題や目標に対して、「自分ならきっとできる!」と信じる力のこと。
心理学では「自己効力感が高い人」は、他人からの評価に左右されにくいと言われています。
自己効力感は、小さな成功体験を積み重ねることで得られます。
たとえば、学びたいスキルを習得したり、好きな趣味をとことん深めたり、スポーツで上達を目指したり。ポイントは、他者との比較ではなく、自分自身の成長にフォーカスした活動をすること。
「自分にはこの能力があるから大丈夫!」という自信を持つことは、外見に左右されない強い軸を作ってくれます。
変わりつつある社会
ルッキズムは個人の問題だけでなく、社会全体にも深く根づいた問題です。
まだまだ問題は山積みですが、少しずつ、世の中も変わってきています。
ミスコンの廃止
「美しさ」だけを評価するミスコンが廃止される動きが広がってきています。
たとえば、アメリカやフランスの一部では、従来のミスコンが廃止され、外見ではなく地域貢献や内面のスキルを評価するコンテストに変更されています。
同じく日本でも、大学や自治体でミスコンの廃止が進み、代わりにクリエイティブな才能やリーダーシップを評価するイベントが増えています。
これらの動きは、外見だけではなく多様な美しさを大事にしようとするもので、皆が自分らしさや才能を活かせる社会を目指す大きな一歩です。
広告の規制
ヨーロッパの一部の国では、加工された画像にはその旨を明記する法律があります。
フランスでは2017年から、広告やメディアで使用される加工写真には「加工済み」であることを明記することが義務付けられています。
ノルウェーでも2021年に似た法律が施行され、SNSの投稿や広告での加工内容の開示が求められるようになりました。
また、コンプレックス広告に対する規制も増えています。
イギリスでは、18歳以下を対象とした美容整形の広告が禁止され、美容整形が盛んな韓国・ソウルの地下鉄でも、整形に関する電車広告が禁止されています。
今のところ日本ではこのような規制はありませんが、こうした動きが広がることを期待したいですね。
ポジティブなメディアイメージ
映画やテレビドラマ、アニメなどのメディアでもルッキズムをテーマにした作品が増えており、前向きなメッセージを発信しています。
たとえば、最近の映画やドラマでは、見た目にとらわれない多様なキャラクターが登場し、内面の価値が大切にされています。
特に、非典型的な美しさを持つ主人公が活躍するストーリーが人気です。これにより、より広い視野を持つ社会が期待されています。
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ルッキズムは個人の問題だけでなく、社会と強く結びついているため、なかなか手強い存在。
しかし、最近はルッキズムに対する認識が高まり、「この価値観はおかしい!」という意識が広まってきています。
ルッキズムについて理解を深めて、その価値観に対して「NO」と声を上げること。そうすることで、誰もが生きやすい社会へと近づいていくはずです。少しでも違和感を持ったら、まずは自分の気持ちを大切にして行動してみましょう。
国際NGOプラン・インターナショナルでは、日本の女の子たちが抱える課題の解決に向けて取り組んでいます。女の子の居場所「わたカフェ」の運営のほか、若者で構成しているプラン・ユースグループでは『ルッキズム』に関する調査も行っています。
気になった方はこれらの活動や、他の記事もぜひチェックしてみてください◎








