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(2024年10月02日更新)

心の健康、いわゆる「メンタルヘルス」について、ふだん意識していますか?

「心」は目に見えないため、ストレスを放置すると、いつか壊れてしまうことも…。
特に女性は男性に比べてうつの罹患率が高いため注意が必要です。

今回は、女性のメンタルヘルス問題から、ストレスへの対処法、自分らしさの見つけ方まで、精神科医の墨岡卓子先生に教えていただきました。

墨岡卓子 先生

精神科医。「成城墨岡クリニック」理事長。慶応大学病院、東京医療センター、桜ヶ丘記念病院の勤務を経て現職。臨床一般の他、女性のメンタルケア、子どもの不登校、発達障害の家族カウンセリングを行う。

成城墨岡クリニック

女性に多いメンタルヘルス問題とは?

── まずはじめに、女性に多いメンタルヘルス問題について教えてください。

墨岡:女性全体でいうと、男性に比べてうつ病や、摂食障害の割合が高いですね。
原因のほとんどは「対人関係」です。学校、職場、家族、友人、SNSなど、生活のなかで起こるさまざまな対人関係に原因があります。

特に女性の場合は、「周りからどう見られているか」を気にしている人がすごく多い。
例えば、SNSで他者と比較して落ち込んだり、友人のなかでの自分の立ち位置に悩んだり。さらには、どう見られているかに対して「役割」を作って演じてしまう。それに疲れている人も多いと思います。

心の不調を知るためのセルフチェックをご紹介します。
3つ以上項目が当てはまり、症状が2週間以上続いているならうつの可能性があります。専門家(スクールカウンセラー、精神科医、保健師など)に相談してみましょう。

── Girl’s Lab世代の20代だと、どんなメンタルヘルス問題が考えられますか?

墨岡:人は年代で抱える悩みが異なっています。
心理学者のエリクソンが、それぞれの年代で抱える悩み(課題)を明らかにしており、それに沿っていえば、13歳〜22歳の悩みは「アイデンティティの確立」です。

「自分とは何か」というアイデンティティをしっかり作ることで、自分が果たすべき役割が明確になって、その後の人生を歩んでいきやすい。

学校は成績など評価制度が明確でしたが、社会に出ると「何が自分を評価する基準なのか」が分からなくなっていく。
自分がどう振る舞っていいか分からない、それによって無理をしすぎたり、メンタルヘルスの不調を抱える人が増えていきます。

その後の22歳〜40歳は「親密性」が重要とされています。
この年代では、他者とうまく関係を作っていけるかが重要で、それができないことで孤独を抱えることにつながります。

── アイデンティティや自分らしさに悩める人は多いと思います。先生がアドバイスを送るとしたら?

墨岡:アイデンティティとは、自分の「好きなもの」でできていると思っています。まずは自分の好きを知ることからはじめてみましょう。

「好き」も、なんとなくではなく、細かく掘り下げてみる。
好きな音楽バンドがいたとしたら「私にとって何がそんなに刺さっているんだろう?」と考えてみる。音以外にも、コンセプトや衣装、MVだったり、いろんな要素がありますよね。細かく言語化することで、好きが明確になっていきます。

とはいえ、好きを見つけることは難しいことでもあるので、日常にある「小さなこと」を積み重ねていきましょう。

例えば、色で青が好きだとしたら「青の中でもこの青が好き」として、日常の中から探してみる。他にも、「なぜこの食事を選んだのか」、「なぜ今日この服を選んだのか」、いろいろ試す中で「自分の感覚を使って選んだものは、当たっていたかな?」と確認してみる。
このような日々の小さな積み重ねが、好きを見つける感覚を育ててくれます。

そして好きを見つけたら、ノートに書いたり、スマホに好きな写真を集めてコラージュしたりと集めてみましょう。

さらには、集めた「好き」を友人なり誰かに共有してみてください。
「私はこういうのが好きな人間なんです」と表明することで、自分というものが相手に伝わります。そして相手からの反応を見ることでも、さらに自分が確立されていく。

女性に多い「周りからどう思われるか」で決めるのではなく「私は何が好きで、何をしたいんだろう?」と、自分主体でじっくり考えてみましょう。

「好きなこと=わがまま」にならない?

── アイデンティティや自分らしさに悩める人は多いと思います。先生がアドバイスを送るとしたら?

墨岡:私がカウンセリングで「好きなことを見つけて、行動をしよう」と話すと、よく患者さんから「自分が好きなことだけしていると、わがままにならないですか?」と質問されます。

好きなことをするというのは、言い換えると「自分の本音通りに生きる」ということ。これはわがままにはならないですよね。
もし欲望のままに好きなことだけしていても、どこかで良心のブレーキがかかります。

例えばファッションが好きだから買い物をするとして、最初は欲望のままに買っているけれど、どこかの時点で罪悪感が湧いてくる。

まずは自分の好きのままに行動を起こしてみて、経過を自分でじっくりと観察する。「あ、ここは行きすぎているな?」とザワザワした所を見極めていく感じです。
自分の本音を敏感に見つめる練習をしてみましょう。1人で行うのが難しければ、カウンセラーに頼ってもOKです。

トリセツを作ると、人間関係はうまくいきやすい

── アイデンティティや自分らしさに悩める人は多いと思います。先生がアドバイスを送るとしたら?

墨岡:アイデンティティを考えるうえで、「長所」と「短所」という言葉がありますよね。
長所(得意)が良くて、短所(苦手)がダメということではなく、どちらも含めて「自分」だと受け入れる。

長所・短所含めて「自分はこういう人だよ」という自分のトリセツ(取扱説明書)が作れたら、人間関係もだいぶ楽になりますよ。

苦手なことは悪いことではなく、個性の一つです。それを友人や周りの人にも共有してみると意外な発見があるかもしれません。
例えば、私はレストランなどの予約を取るのが苦手なんです。どんな店がいいか色々考えてしまうし、頭のなかでグルグルとシミュレーションしたりして、完璧主義な自分が出てしまい疲れてしまう。

そのことを友人に話したら、「私は得意だから代わりにやっておくね!」とサラッと言ってくれたので驚きました。
自分にとっての苦手は、人によっては得意だったり、嫌じゃないこともある。

苦手なことって恥ずかしいからと隠しがちですが、自分のトリセツとして友人なりパートナーに共有しておくことで、人間関係がうまくいきやすいと思いますね。

ホルモンの乱れには、自律神経を整えよう

── 女性特有の不調といえば、ホルモンの乱れも影響しているかなと。それについてはいかがでしょう?

墨岡:そうですね。女性ホルモンの変動によって不調を感じる方もいます。特にPMSや更年期などホルモンが大きく変化する際に不調を感じる人も多い。
PMSが辛い人は、ピルなどで排卵をお休みする方法も効果的だと思います。

女性ホルモンを考えるうえで重要なのは「自律神経」です。
ホルモンと自律神経は密接に影響しあっているので、自律神経が安定してれば、ホルモンも大きく乱れにくい。あるいはホルモンが乱れても自律神経が整っていれば強いんです。

そして自律神経が整っていればストレスにも強い。
ホルモンバランスの乱れによる不調を感じる人は、自律神経を整えることを意識してみるといいと思います。

── 自律神経はホルモンにもストレスにも有効なのですね。どのように自律神経を整えればよいのでしょう?

墨岡:整え方の前に、自律神経について説明しておきます。
自律神経には、戦う力の「交感神経」と、リラックスする「副交感神経」があります。

身体にストレスがかかると交感神経が働きます。交感神経はガソリンを燃やすイメージで、身体にパワーを与えてくれます。
よく「ストレス=悪!」というイメージがあると思いますが、そうではありません。
適度なストレスがあることで交感神経が働き、朝起きられるし、日中エネルギッシュに働けるので、カラダには必要な作用です。

ただし「燃えすぎ」は体に負荷をかけすぎてしまうのでNG。
車でも常にガソリンを燃やすと消耗が早まりますよね、体も一緒です。

燃やす力(交感神経)とリラックス(副交感神経)、この2つの切り替えをスムーズにすることが大切。
不調を抱える人や、眠りが浅い人は、このリラックスの切り替えがうまくいっていないんですよね。

── 自律神経をスムーズに切り替えるためにはどうすれば良いのでしょう?

墨岡:人間も動物なので、本来は自然のサイクル通りに自律神経が整うようにできています。
「自然のリズムで生活する」ことを意識しましょう。

日中

朝、太陽が昇ったら起きる。カーテンを開けて太陽の光をしっかり浴びましょう。光を浴びることで、睡眠時のリラックス状態から、日中活動できる交感神経に切り替えることができます。

太陽が沈んだら、仕事もOFFにしましょう。日中は交感神経が優位になっているので、夜へのリラックスへと切り替えを促します。照明も暖色系にすると◎

都会だと夜でも明るいし、みんな忙しく活動していますよね。
本来、夜はリラックスの時間なので、活動することで交感神経が常に動いていると、自律神経が乱れる原因です。

自分で「〇〇時以降は仕事しない」と決めることが大事。
「メール返さなきゃ」とか「あの仕事どうだったかな…」など頭でずっと考えていると、体は休んでいるのに脳が活発に動いている状態。 みなさん忙しいとは思いますが、夜はOFFにしようと意識するだけでも全然違いますよ。

あとは、日常の中の「余白」が重要。
現代人は暇が苦手なので、動画を倍速視聴したり、暇な時間にただただボーッとすることが苦手ですよね。
でも人間は退屈や暇といった「余白」があることで、心に余裕が生まれるし、適度にリラックスした状態が作れる。

最近、リトリート(日常生活から離れてリフレッシュする)や、デジタルデトックス(スマホから離れてアナログな時間を過ごす)が人気なのも頷けます。
効率化を求めすぎるのではなく、日常のなかに「余白」を作って楽しみましょう。

辛いことは乗り越えず、受け止めるだけでいい

── 過去のトラウマなど、辛いことを抱えて生きている人も多いと思います。辛いことがあった場合の乗り越え方とは?

墨岡:みなさん辛いことがあると「乗り越えなきゃ!」と思いますよね。
乗り越える必要はなくて、「受け止める」だけでいいんです。

乗り越えるよりも「本当の欲求は何か」を考えてみましょう。
例えば、学生時代にいじめられて、学校に行けない辛い経験をしたとします。
いじめられて傷ついた心がありますよね。その時に「本当は欲しかったものは何か?」を考えてみる。

もしかすると、本当に傷ついたのは「友達が欲しかった」とか「こういう学校生活を送りたかったのに、できなかった」かもしれない。
本当の欲求を探していくと、実はほとんどの怒りのケースって、そのもの自体ではなく「できなかった自分自身」に対して怒っているんです。

本当の欲求が分かったら、その時の自分を褒めてあげてください。
「できなかったけれど、頑張った」「その時なりに自分はベストを尽くしたんだ」と褒めてあげる。
悩みって、乗り越えないと頑張っていないように感じてしまいますが、悩んだこと自体がすでに十分頑張っていますよね。

さらにいうと、悩むことはネガティブに捉えがちですが、本人の思考に深みがでるので、私はとてもいい行為だと思っていて。

例えば油絵では、最初に使う色の反対色をキャンバスに塗る。次に乗せる色がキレイに発色するし厚みも出るので、結果としていい絵ができるそうです。
これって悩むことも一緒だなと思っていて。頑張って悩んで思考してきたことは、必ず人としての厚みとして出ますからね。

「好きを知っている人」が輝く時代

墨岡:20代へ心に関するアドバイスをするなら、先ほどもお話しましたが「好き」を見つけてほしい。
なぜかというと、自分の好きを知っている人が、輝いて魅力的に見える時代だからです。

以前までは、周りの空気を読めて、相手の好みを知っていて、そつがない人が良いとされていた。でも今は、自分の好きを知っていて、それを周囲に伝えられる人が輝いて魅力的に映る。

好きを知って、トリセツを作る。そうすることで自己肯定感も上がるし、心の健康にとってもいい。
もちろん、20代は多感で悩み多き時期だとは思いますが、ゆっくり自分のペースでいいので「好き」を見つけて、長い人生を楽しんでいってほしいですね。

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