本文へ移動

気候変動の「見えない代償」世界の女の子に広がる児童婚・暴力・望まない妊娠のリスク――「世界ガールズ・レポート2026」発表

(2026年10月06日更新)

国際NGOプラン・インターナショナル、50カ国のデータと5,000人の声から、気候変動が女の子の健康と安全に及ぼす深刻な影響を明らかに

世界ガールズレポート2026概要

国際NGOプラン・インターナショナル(所在地:東京都世田谷区 理事長:池上清子 以下、プラン)は、10月11日の「国際ガールズ・デー」にあわせ、「世界ガールズ・レポート2026『女の子の未来予報を変えよう』」を発表しました。気候変動は世界中の人々に影響を及ぼす課題ですが、その影響は一様ではありません。本レポートでは、とりわけ女の子や若い女性が直面するリスクに焦点を当て、気候危機が教育や健康、安全、将来の選択肢に及ぼす影響を明らかにしています。

約50カ国の30年以上にわたる気候と保健のデータを分析した結果、洪水、干ばつ、サイクロン、猛暑などの気候災害が、早すぎる結婚(児童婚)や暴力、望まない妊娠といったリスクを高め、女の子たちの権利に深刻な影響を与えていることが明らかになりました。こうしたリスクの多くは、災害対応の計画や統計では『見えにくい』形で進行しています。

本調査では、上記のデータ分析とともに、バングラデシュ、ケニア、ペルー、セネガル、ジンバブエの5カ国で、15~24歳の女の子や若い女性5,000人を対象としたアンケートと、139人への聞き取りを実施し、気候現象が教育や保健サービスへのアクセスに影響を及ぼし、とりわけ脆弱な立場にある途上国の女の子たちほど深刻な影響を受けている実態を浮き彫りにしました。また、プランが日本で独自に実施した別の調査からは、気候変動が日本の女の子や若い世代の将来への不安や人生設計にも影響を与えていることが明らかになっています。

数字が示す「気候危機と女の子の権利侵害」の実態

主な調査結果は以下の通りです。

  • 10人に1人の女の子が、気候災害により「意図しない妊娠」を経験
  • 3人に1人が、気候災害後に「児童婚が増えた」と回答
  • 約3割が、気候災害後に「女性や女の子への暴力が増えた」と感じている
  • 4人に3人が、気候災害後に保健サービスへのアクセスが困難に
  • マイノリティの女の子は、他の女の子より、意図しない妊娠や若年結婚、サービスへのアクセス困難のリスクが著しく高い

これらの背景には、「女の子が学校から遠ざけられる」という構造的な問題があります。学校は、女の子たちにとっての学びの場であると同時に、暴力や搾取などから身を守る重要な保護要因でもあります。しかし、気候危機によって教育が中断されると、その保護機能が失われ、児童婚や暴力、意図しない妊娠、保健サービスへのアクセス喪失といったリスクが急速に高まります。

リーナ・ゲラーニ プラン・インターナショナルCEOのコメント

女の子たちにとって、気候危機は遠い未来の脅威ではありません。すでに彼女たちの日常を揺るがし、教育を奪い、必要な保健サービスから引き離しています。各国の気候計画のうち、女の子や女性の健康に言及しているものは半数に過ぎず、気候ショックが保健システムに与える影響が拡大しているにもかかわらず、多国間の気候資金のうち保健分野に充てられているのはわずか0.5%です。女の子たちの権利を守るために、今こそ緊急の行動が必要です。

気候災害と性暴力・搾取リスクの増大

調査に参加した女の子たちは、気候災害後に性搾取のリスクが高まる実態を語りました。生活が破綻し、保護システムや支援ネットワークが機能しなくなる中で、食料や生活必需品、わずかな収入を得るために性行為を強いられるケースが報告されています。

また、緊急避難所では、過密状態や照明不足などが原因で、ハラスメントや性暴力の危険が高まることも、多くの女の子たちが指摘しました。

バングラデシュのユース女性(19歳)

洪水で家族がどん底の状態になると、親は経済的な困難を理由に、娘をとても若いうちに結婚させてしまうことがあります。

見えない「ゆっくり進む」災害:干ばつが児童婚リスクを押し上げる

本調査は、災害対応の計画から見落とされがちな『ゆっくり進行する干ばつ』による被害にも光を当てています。
52カ国の30年にわたるデータを分析した結果、干ばつは、早すぎる強制された結婚の増加と最も一貫して関連する気候災害要因であることが分かりました。農作物の収穫や家畜、収入源が数カ月から数年にわたって失われていくなかで、「娘を結婚させる」ことが生計維持の戦略になってしまうのです。

ケニアのユース女性(22歳)

父はもう家畜を売って私を大学に行かせることができません。それで、私は結婚を受け入れるしかありませんでした。

このような「静かに進む」危機は、国際的な緊急支援の対象とならないことが多く、女の子たちへの影響が見えないまま蓄積していきます。

COP31を前に、女の子の権利を中心に据えた気候行動を

すでに世界各地に多大な影響を及ぼしている気候変動は、現在続いているエルニーニョ現象の影響も相まって、一部地域では被害や影響がさらに強まることが懸念されています。ペルーの女の子たちは、繰り返される洪水によって交通網が寸断され、保健サービスへのアクセスが妨げられているうえ、すでに苦境にある家計への負担がさらに重くなっていると語りました。ジンバブエでは、小学生や中学生の年齢にあたる女の子の妊娠が報告されています。

近く開催されるCOP31では、各国が気候変動への国際的な対策について交渉する重要な機会が訪れます。プランは、各国政府およびドナーに対して、次のような行動を求めます。

  • 女の子が学校に通い続け、中断されることなく学べるようにすること
    教育は30年分のデータで示された最も強力な保護要因であり、途切れると児童婚や意図しない妊娠のリスクが2倍に高まります。
  • 気候危機への緊急対応の一環として、SRHRのための資金を確保すること。
    性と生殖に関する健康サービス、避妊サービス、妊産婦ケアなどへの投資を拡大し、気候危機で負荷が増す保健システムを支える必要があります。
  • 緊急対応の一環として、SRHRに関する情報とサービスを利用できる状態に保つこと
    災害対応の初期段階から、生理用品、避妊具、性暴力被害者の保護サービスを標準的な支援項目として含めることが重要です。
  • 児童婚、望まない妊娠、搾取を生む経済的要因を断ち切ること
    経済的圧力にさらされている家庭に対する食料供給、生計手段、インフラへの支援を計画することが必要です。
  • 思春期の女の子とユース女性が、彼女たちの生活に影響を与える意思決定に参加できるようにすること
    女の子は、ユース主導の危機対応計画に対する資金面と実務面での支援を求めており、すべての女の子の意見を聞き、意思決定に参加できるようにする必要があります。

可視化された日本の「気候変動xジェンダー」問題

プランは、今年1月に日本の15〜39歳の若者2,070人を対象に実施した「気候変動×ジェンダー×ユース世代」をテーマとした全国調査結果を公開しました。気候変動がもたらすジェンダーに基づく影響は、これまで主に途上国の課題として語られてきており、日本の女の子や若い女性がどのような影響を受けているのかを定量的に示したデータはほとんどありませんでした。本調査により、日本における気候変動が女の子や若い女性の教育、就職、人生設計に与える影響が可視化されました。

気候危機は、もはや「環境問題」にとどまりません。私たちの生き方と社会のあり方そのものを問う課題であることが明らかになっています。

長島美紀(アドボカシーグループリーダー、政治学博士)のコメント

長島美紀(アドボカシーグループリーダー、政治学博士)

近年、日本でも豪雨や洪水、猛暑などによって、休校や通学・通勤への影響、避難生活における安全への不安など、気候変動に伴うさまざまなリスクが私たちの暮らしに身近なものとなっています。このような危機の影響は、すべての人に同じように及ぶわけではありません。災害時のリスクは、年齢、健康状態、所得、障害の有無、家庭内の役割、居住環境などによっても左右されます。そのなかで、女性や女の子は状況によって、避難や健康・安全面で不利を抱えやすいことが、世界各地で指摘されています。

プラン・インターナショナルはこれまで、気候変動が女の子の教育や健康、安全、将来の選択肢に及ぼす影響を訴えると同時に、女の子たちが気候対策の「受益者」として扱われるだけでなく、解決を担う「主体」として意思決定に参加することの重要性を指摘してきました。

気候変動への適応や緩和を含む対策を進めるうえでも、女の子や若い女性の声を政策や地域の取り組みに反映するとともに、グリーンエコノミーをはじめとする新たな分野への参画機会を広げていくことが重要です。気候危機への対応とジェンダー平等を別々の課題として捉えるのではなく、女の子たち自身が未来をつくる担い手となる仕組みを、今から整えていく必要があります。

報告書は以下からご覧ください

国際ガールズ・デーとは

「女の子の権利」や「女の子のエンパワーメント」の促進を、広く国際社会に呼びかける日。プラン・インターナショナルの働きかけを受けて、国連によって定められました。

国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに世界80カ国以上で活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。

このリリースに関するお問い合わせ

公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
PR/コミュニケーション 葉山
TEL:080-1017-4200
E-mail:kumiko.hayama@plan-international.jp

年別

プレスの方へTOP

トップへ