(2024年11月01日更新)
「難民」という言葉が、ニュースでも頻繁に聞かれるようになってきました。紛争や災害などが原因で、故郷を離れざるを得なくなった人々が、年々増加しているためです。
難民の人々が一時的に身を寄せる「難民キャンプ」の多くは過密状態で、住居や、水と衛生環境などが整っていないなど、さまざまな問題を抱えています。ここでは、難民キャンプで暮らす人々がどのような生活をしているのか、どのような問題に直面しているのかを解説します。

スーダン難民が身を寄せているキャンプ(チャド)
もくじ
難民キャンプとは?世界における難民の現状
「難民」とは人種、宗教、国籍、政治的な意見や特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるため他国に逃れ、国際的保護を必要としている人々を指します。難民となった人々は避難した後どこで生活をしているのでしょうか?

ウクライナから避難してきた家族(ルーマニア)
難民キャンプとは
難民キャンプとは、紛争や迫害、自然災害などの人道危機から他国に逃れてきた人々が一時的に避難し、生活する場所を指します。難民を受け入れる国の要請に応じて、国際機関やNGOなどの支援団体が設置することが多く、住居、食料、水、医療サービスなどの基本的な生活支援が提供されます。
難民キャンプはどこにある?
難民キャンプは世界のいたるところにあります。特に中東、アフリカ、南アジアの国々に多く見られます。隣接している国が難民の受け入れ国となるケースが多く、なかには不法入国なども含まれます。途上国から難民が流出した場合、難民を受け入れる隣国もまた途上国であるケースが少なくありません。そのため、受け入れ側も自国の課題を抱えるなかで、難民支援という新たな負担が重くのしかかります。
難民の出身国 難民の受け入れ国 1 シリア 約640万人 イラン 約380万人 2 アフガニスタン 約640万人 トルコ 約330万人 3 ベネズエラ 約610万人 コロンビア 約290万人
難民の出身国 1 シリア 約640万人 2 アフガニスタン 約640万人 3 ベネズエラ 約610万人 難民の受け入れ国 1 イラン 約380万人 2 トルコ 約330万人 3 コロンビア 約290万人
- *近隣国へ避難の割合:約69%
- *難民や国際保護が必要な人の75%が低中所得国で受け入れられている
出典:「数字で見る難民情勢(2023年)」(UNHCR)
世界における難民問題の現状
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、難民の数は年々増加傾向にあり、2024年5月時点で、故郷から避難を余儀なくされた人が12年連続で増加、過去最多の1億2000万人に到達したと発表しました。これは日本の人口に相当する数字です。
難民の増加にともない、難民キャンプ内は過密状態に陥りつつあります。資金や物資が不足し、生きるために必要な基本的なサービスを提供できなくなったり、自国の状況が変わらず避難生活が長期化したり、難民キャンプ内の治安が悪化したりしています。

脆弱な資材で作られた難民キャンプ(バングラデシュ)
「世界難民の日」とは?制定された目的や世界の難民問題の背景、現状
世界の難民キャンプが抱える主な問題と求められる支援
難民の数が増えるにつれ、安全なはずの難民キャンプ内ではさまざまな問題が発生しています。ここからは、難民キャンプが抱えている問題と、必要とされている支援を見ていきましょう。
住環境の悪化
問題の例
収容可能人数を超えた人々が集まることで難民キャンプ内は過密状態となり、住環境が劣悪化しています。テントや仮設住宅は不足し、水やトイレなどのインフラも不十分です。住環境の悪化は生活の質を低下させるだけでなく、マラリアやコレラなどの蔓延や衛生問題を引き起こすリスクが高まります。
求められる支援
トイレや給水施設などのインフラを整備することで衛生環境が改善され、感染症のリスク減少につながります。資材が提供されれば仮設住宅の設置も可能となるため、過密状態を解消するためにキャンプ地を拡張、分散させることも必要です。

キャンプ内に設置されたトイレ
(バングラデシュ)
食料不足と栄養悪化
問題の例
難民には1人1日あたり1900キロカロリー(緊急時には2200キロカロリー)の食料が支給されていますが、乳幼児、妊婦、病人など栄養が不足しがちな人々にとっては、十分な栄養を摂取することが難しく、抵抗力が弱まり、栄養不良に陥るリスクがあります。また、配給システムが整備されていない場合、食料が公平に支給されなかったり、不正が発生したりする可能性があります。

栄養価の高いおかゆを食べる子どもたち(ウガンダ)
求められる支援
栄養不良に陥っている人々のために、栄養価の高い食料の確保が必要です。また、キャンプ内で乳幼児や妊婦、病人などが、どこにどれくらいいるのかを確認できる体制づくりや、公平に食料が配られる仕組みの整備が求められます。
医療サービスの不足
問題の例
命からがら難民キャンプまでたどり着いた人々のなかには、乳幼児や高齢者、身体が弱っている人もいます。衛生設備が整備されておらず、過密状態の難民キャンプ内で病気が発生した場合には、医療サービスが追いつかず、本来なら治るはずの病気で命を落とすこともあります。

緊急支援物資の支給(スーダン)
求められる支援
薬や医療器具など物資支援のほか、医療サービスを受けるべき対象者を把握できる仕組みづくりも必要です。また病気を蔓延させないために、トイレや手洗い場の設置など、衛生環境を整えたり、衛生習慣を広めて予防に努めたりすることも重要です。
教育機会の欠如
問題の例
自国では学校に通えていた子どもたちでも、難民キャンプでは同じように学べる機会が得られなくなります。難民キャンプ内にも学校は設置されますが、危機的状況が過ぎてから開校することが多いのが現状です。開校しても教員不足や教師の質の低さなどの課題が残ります。また、キャンプ内で家事労働に追われる女の子たちは学びの機会を奪われています。

基礎的な読み書きや計算を学べる機会を提供(エチオピア)
求められる支援
子どもが安全に学べる場所や資材、教師の確保やトレーニングなどが必要です。子どもたちが健全に育つためには早く日常生活に近い状態にする必要があり、そのためにも教育はとても大切です。難民キャンプ内でも子どもたちが取り残されないようにサポートする必要があります。
女性や子どもが受ける被害
問題の例
難民の約8割が女性と子どもです。子どもたちのなかには避難途中に経験したり、目にしたりしたことがトラウマとして心に残り、心身に傷を残します。幼い子どもを連れて避難した女性には子どもの世話、家事などすべての負担がのしかかります。また、混乱のなかで女性や子どもたちが人身取引や性的暴力、搾取の被害に遭うリスクも高まります。

難民キャンプでの若者の活動(ウガンダ)
求められる支援
女性や子どもたちが人身取引や性的暴力、性的搾取の被害に遭わないよう、保護体制を整える必要があります。大勢の人が集まる難民キャンプ内で危険にさらされないように、子どもたちへ自分の身を守る方法の啓発活動なども必要です。
自立支援の不足
問題の例
避難生活の長期化や、難民キャンプ内の人口増加により、難民の人々の生活が逼迫しています。また、自国で行っていた仕事と同じことが難民キャンプ内でできるとは限らないため、収入減となり、経済的に困窮します。
求められる支援
職業訓練や農業支援などのトレーニングを通じて、キャンプ内で自立できるようにサポートする必要があります。自分で収入を得られることが自信になり、レジリエンス(回復力)を高めることにもつながります。

ビーズバックの作り方を学ぶ女の子たち(ケニア)
世界で行われている難民キャンプへの支援活動の例
プラン・インターナショナルは、これまでに世界の難民問題に取り組んできました。ここでは、プランが取り組んでいる事例を紹介していきます。
ロヒンギャの若者たちの学びを支える仕組み~ロヒンギャ難民の識字教育プロジェクト~
ミャンマー南西部のラカイン州に暮らすイスラム系少数民族ロヒンギャは、国籍を奪われ、長年教育を受ける権利や自由に移動する権利といったさまざまな権利が認められない生活を送ってきました。2017年に起きた暴動と軍の掃討作戦により、多くのロヒンギャがこれまで住んでいた土地を追われ、隣国のバングラデシュに逃れました。バングラデシュ南部コックスバザール県内にある難民キャンプに住むロヒンギャの若者のほとんどは、これまで読み書きや計算を学んだことがありません。そのため、薬や食品のラベルが読めない、キャンプ内の掲示板・配給情報を理解できない、詐欺や搾取に遭う危険が高いなど、日々多くの不都合やリスクに直面しています。

難民キャンプで学ぶ若者(バングラデシュ)
このプロジェクトでは、難民キャンプに暮らすロヒンギャの若者たちへの識字教育を強化するとともに、ロヒンギャの人々自らが指導者となり、コミュニティ内で継続して識字教育を行うことができる体制づくりを目指します。
ロヒンギャの若者たちの学びを支える仕組み~ロヒンギャ難民の識字教育プロジェクト
「食料危機下の子どもの栄養改善」プロジェクト(スーダン)
スーダンでは紛争が激化する以前から1580万人が人道支援を必要としていましたが、2023年の武力衝突以降、その数は2470万人に増加。天候不順、激しいインフレや穀物価格の上昇により、難民や国内紛争の影響を受けた人々が、日々の食事もままならないほど困窮しています。UNHCRが2022年に行った調査では、白ナイル州の難民キャンプで暮らす5歳未満児の16.9%が急性栄養不良に陥っており、生後6~59カ月児の50%超が貧血であることが確認されました。5歳未満の子どもの死亡原因の約45%は栄養不良に起因するとされており、食料不足への早急な対策が求められています。

重度の栄養不良に陥る前の治療開始を目指し、家庭を訪問(スーダン)
このプロジェクトでは、スーダン白ナイル州の難民キャンプ、国内避難民キャンプおよび周辺地域において、子どもや妊娠中や授乳中の女性の栄養改善にむけた支援を行います。栄養ボランティアが家庭訪問を行い、「隠れた栄養不良児」を探し出し、栄養治療食の支給や診療所での治療につなげます。また、母親へのカウンセリングや栄養教育の提供、給水スタンドの設置など水・衛生環境を改善させる活動も行います。
【活動報告】「食料危機下の子どもの栄養改善」プロジェクト(スーダン)
難民支援のために力を貸してください
SDGsの目標16では「平和と公正をすべての人に」と掲げられています。プラン・インターナショナルは、「世界でもっとも迫害された少数民族」といわれるロヒンギャの難民危機や、武力衝突によりますます状況が悪化しているスーダン危機において、難民の人々への支援活動を行っています。紛争や災害などが原因で難民として日常を奪われている多くは子どもたちです。
難民とならざるを得なかった子どもたちが安心して学び、育つ機会を奪われないように、あなたの力を貸してください。

難民キャンプが抱える問題から女の子や子どもたちを守るための支援はこちらから
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運営団体
国際NGOプラン・インターナショナルについて
国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに世界80カ国以上で活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。










