(2026年05月26日更新)
SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」は、年齢や住む場所にかかわらず、すべての人が必要な保健医療サービスを受けられる世界の実現を目指しています。しかしながら、世界では依然として予防や治療、衛生管理によって救える多くの命が失われています。
この記事ではSDGs目標3の達成状況や達成を阻む課題、目標実現に向けた取り組み事例などを解説します。

障害のある10歳の男の子とクラスメイトたち(シェラレオネ)
- SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」とは
年齢や性別、住む場所にかかわらず、全ての人が必要なときに必要な保健医療サービスを経済的負担なく受けられる社会の実現を目指すSDGsの目標3について解説します。 - SDGs目標3の達成状況と世界の保健分野の現状
妊産婦や子どもの死亡率の推移、増加が続く非感染性疾患や依然残る感染症、そして世界各国で生じている医療アクセスの格差など、保健分野を取り巻く課題と現状をわかりやすく整理します。 - この課題の鍵が途上国にある理由とは
妊産婦死亡や子どもの死亡が特定の地域(主に途上国)に集中している背景について、健康課題の影響が特に途上国で大きい理由を解説します。 - 途上国でSDGs目標3達成を阻む主な要因
医療インフラの未整備、貧困や教育不足、ジェンダー不平等といった社会的要因が、安全な医療サービスやケアへのアクセスを妨げている現状と、その構造を説明します。 - SDGs目標3の実現に向けた取り組み事例
プラン・インターナショナルが行う国際的な支援活動の具体的な事例を紹介します。
もくじ
SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」とは
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SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」では、2030年までに世界中の人が健康的な生活を確保し、年齢や住む場所にかかわらず必要な支援を受けられるようになることを目指しています。健康は、一人ひとりが生きていくうえで一番の土台となるため、ほかのSDGs目標を達成するためにも、目標3は極めて重要な目標です。
この目標は妊産婦と新生児の死亡率削減や伝染病の根絶、保健サービスおよび医薬品やワクチンへのアクセスの確保など10のターゲットで構成されています。
| 目標3.あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する | |
|---|---|
| 3.1 | 妊産婦死亡率の削減 |
| 3.2 | 新生児・5歳以下の子どもの死亡率削減と予防可能な死亡率の根絶 |
| 3.3 | エイズ、結核、マラリア、熱帯病などの伝染病の根絶、肝炎、その他の感染症への対処 |
| 3.4 | 非感染性疾患による若年死亡率の減少、精神保健と福祉の促進 |
| 3.5 | 薬物やアルコールなどの乱用防止・治療強化 |
| 3.6 | 道路交通事故による死傷者半減 |
| 3.7 | 性と生殖に関する保健サービスをすべての人に |
| 3.8 | ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)※の達成 |
| 3.9 | 有害化学物質、大気、水質、土壌汚染による死亡及び疾病の減少 |
| 3.a | たばこの規制に関する世界保健機関(WHO)条約実施強化 |
| 3.b | ワクチン及び医薬品の研究開発支援 |
| 3.c | 途上国の保健財政・人材の採用、能力開発・訓練と定着拡大 |
| 3.d | 健康危険因子の早期警告や緩和・管理のための能力強化 |
- ※ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは
すべての人々が、経済的な困難なしに、必要な時に、必要な場所で、ニーズに応じた質の高い保健医療サービスに十分にアクセスできることを意味します。UHCを達成することで、医療費の支払いのために貧困に陥るリスクを減らすことが重要です。 - 出典:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(日本WHO協会)
SDGs目標3の現状とは?世界の保健分野が直面している問題
世界の保健分野では母子保健や感染症対策で大きな進展が見られる一方で、近年、その改善ペースは鈍化し、COVID-19の影響で平均寿命が短縮するなど、SDGs目標3問題は依然として山積しています。プライマリ・ヘルス・ケアの必要性が叫ばれるなか、保健医療へのアクセスには大きな格差が見られます。これらの深刻な課題が世界の健康を脅かし続けている現状を、詳しく解説します。

移動診療所のテントに集まる人々(ウガンダ)
母子保健や感染症対策の進展は続く一方で、近年は改善のペースが鈍化
世界の保健分野では、2000年から2019年にかけて妊産婦や子どもの死亡率が大幅に低下し、HIVの新規感染者の割合も減少するなど、着実な進展がありました。健康寿命も5年以上延びていますが、近年は進歩のペースが鈍化しています。また、COVID-19の影響で一部の成果が後退し、世界の平均寿命は1.8年短縮するなど、深刻な影響が見られました。さらに、一部地域では予防接種の普及が進まず、基礎的な医療ケアの提供が停滞しているケースもあります。
感染症と非感染性疾患の「二重の負担」
感染症疾患に関する課題では、エイズ関連の死亡が2010年以降半減した一方、マラリア症例は増加傾向にあり、結核が再び主要な死亡原因となっています。一方、非感染性疾患(心疾患や糖尿病など)も深刻で、2021年には70歳未満で約1,800万人が命を落としました。たばこ、大気汚染、不健康な食生活への対策も依然十分ではありません。
非感染性疾患とは
ウイルスや細菌などの病原体によってうつる病気ではなく、主に生活習慣や環境、遺伝的要因などによって発症する病気のことです。代表例として、心臓病、脳卒中、がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患などがあります。
格差が残る医療アクセスと脆弱な保健医療体制
世界規模では保健医療人材が増え、サービスも向上し、拡大しています。しかしながら、そのアクセスには地域や所得ごとの格差が大きく、特に低所得国や脆弱な地域では、保健医療体制の資金不足、医師や必要な医療技術を扱える人材の不足が深刻です。地域の保健体制の充実には、基礎的な設備の整備と人材育成が必須であり、当たり前の医療を受けられる環境づくりが急がれています。
2030年までの目標達成には「投資」と「公平性」が必要
このような現状から、2030年までのSDGs目標3達成には、格差是正を重視した投資と施策による取り組みの強化が不可欠です。プライマリ・ヘルス・ケアの強化、包摂的な医療システムの整備、すべての人々への質の高い医療サービスの普及が今後のカギとなります。
プライマリ・ヘルス・ケア(Primary Health Care)とは
「すべての人にとって健康は基本的人権である」との考え方に基づき、地域住民一人ひとりが主体的に、自分たちに必要な保健医療サービスを公平かつ総合的に受けられる体制や方法を指します。住民の参加や自己決定権を重視し、健康問題の解決を地域全体で支えるアプローチです。1978年のアルマ・アタ宣言をきっかけに、世界的に提唱されています。
SDGs目標3の達成を阻む問題
保健分野の課題はとくに途上国で深刻化しており、なかでも女の子や子どもたちが最も大きなリスクにさらされています。2023年の世界の妊産婦死亡の87%が、サハラ以南アフリカと南アジアに集中しています。さらに、サハラ以南アフリカの5歳未満児死亡率はオーストラリア・ニュージーランドの18倍という大きな格差が存在します。またこの地域では、5歳未満の子どもや妊婦の40%以上が「殺虫剤処理蚊帳」を手にいれることができず、マラリアの脅威にさらされていることが報告されています。

プラン職員からマラリア対策の説明を受ける母親(ギニア)
インフラの未整備が、医療・保健サービスの提供を妨げている
世界の多くの途上国では、医療・保健サービスの提供を妨げるインフラの未整備がSDGs目標3の達成の大きな障壁となっています。たとえば、清潔な水や石けんへのアクセスがない、不安定な電力供給によってワクチンの温度管理が困難である、衛生環境設備が未整備である、といった状況が依然として多くみられます。
そのため、保健所までのアクセスが遠く、予防接種や定期検診など基礎的なケアを継続して受けることが難しい人が非常に多く存在しています。また、こうした状況は後発開発途上国や小島嶼開発途上国における社会的課題としても深刻化しており、費用面の負担が医療サービスの継続的な利用を妨げる一因にもなっています。
貧困と教育不足が、必要な保健サービスへのアクセスを遮断している
貧困や教育の不足も必要な保健サービスへのアクセスの障壁となります。多くの人が経済的な困窮により、治療費や交通費が払えず、基本的な健診や予防措置を受けることを断念せざるを得ないという状況にあります。
さらに、教育機会が十分にないことで手洗いの習慣や栄養バランス、性に関する正しい知識が広がらず、防げるはずの疾患や感染が繰り返されています。「病気にならないための知識」や「健康を維持する習慣」が、地域全体に浸透しないことが、保健水準の向上を阻んでいます。家族計画や性教育に関する情報が得られないことも、女性や女の子の医療アクセスを阻む要因にもなっています。
ジェンダーの不平等が、女性や女の子が適切なケアを受ける機会を奪っている
ジェンダーの不平等も大きな課題です。一部の地域では、「女性は家庭に」という社会的な通念や児童婚や若年妊娠によって、女性が自分の体や健康について十分な決定権を持つことができない状況にあります。女性と女の子が避妊や産前・産後のケアを受ける機会自体が奪われているケースも多く、適切な知識や医療を受けるうえでの大きな障壁となっています。
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の実現に向けた取り組み事例
SDGs目標3に関わる問題は幅広く、その解決のためにさまざまな国際的な取り組みが行われています。ここでは私たちプラン・インターナショナルの取り組みを紹介します。
南スーダン難民の保護と衛生改善プロジェクト
南スーダンで発生した紛争により228万人が難民となって他国へ避難。そのうち約79万人がウガンダへ、約85万人がスーダンへ逃れました※1。プランはこれらの国々で、2017年から2021年にかけて、子どもの保護や衛生状況改善のためのプロジェクトを行いました。
ウガンダへ逃れた難民の子どもたちの多くは、自国から避難する間に暴力や虐待、家族との離別や死別を経験していました。さらに長引く難民居住区生活のため、心理的・精神的に疲弊した親や養育者からの虐待や養育放棄の脅威にも直面していました。
支援内容
- 子どもたちが安全に安心して過ごすことのできる「子どもひろば」の設置
- 子どもたちの心のケアや個別支援
- 子どもの保護体制づくりなどの支援

難民キャンプに建設された病院(スーダン)
スーダンでは急増する難民を受け入れるための環境整備が追いつかず、1つのトイレを600人以上で共有していた難民キャンプも※2。キャンプ内の診療所は竹やビニールシートで作られた仮設のものしかなく、衛生状況は劣悪で感染症が蔓延しやすい環境になっていました。
支援内容
- トイレや診療所建設などのインフラ整備
- 感染症を防ぐ衛生啓発活動の実施
- 月経衛生管理
- ジェンダーに基づく暴力や女の子の中途退学を防ぐための取り組み
- ※1:UNHCR Operational Update South Sudan (1-15 March 2019)
- ※2:UNHCR Kosti Sub office資料(2018年9月時点)
乳幼児の栄養と教育改善プロジェクト
カンボジアは5歳未満の子どもの栄養不良の割合が高いことが、課題のひとつとされています。シェムリアップでは、多くの乳児が体重2500グラム未満で産まれており、妊婦の栄養不良が原因の一つとして考えられています。また、就学前教育の施設がないことや保護者の理解不足から、子どもたちは健全な心身の発達に必要な年齢に合った遊びや学習を経験することができません。プランは2020年11月から2022年3月まで、シェムリアップにおいてプロジェクトを実施しました。

栄養改善トレーニングを受け健康的な食事を与える母親(カンボジア)
支援内容
- 就学前の子どもと妊産婦の栄養改善のため、栄養不良児の特定や医療機関への紹介
- 妊産婦への調理実習
- 保護者や父親グループを対象とした母乳育児の重要性や、栄養、子どもの発達と保護、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防法指導
- 教師を対象とした子質の高い教育を実践する知識とスキルを身につけるための、子どもの指導法に関するトレーニング
- 就学前教育施設の学習環境の改善(幼稚園の教室やトイレの新設、遊具の整備など)
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の実現に向けて、ともにアクションを起こしていきませんか
「SDGs目標3」がなぜ重要なのか。その答えは、世界保健機関WHOの憲章前文に詰まっているのではないでしょうか。
“…健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつです。…”
世界保健機関憲章前文一部(日本WHO協会仮訳)
健康は、人類の普遍的な願いであり、持続可能な社会の根幹を成すものです。社会を構成する私たち一人ひとりの健全な心と体が土台になければ、世界全体がうまく機能し、これからも持続していくことは不可能かもしれません。
プラン・インターナショナルは多くの企業や団体と連携することで、活動の成果が非常に大きく、より効果的なものになることを実感しています。 CSR活動やサステナビリティの視点から、法人とのパートナーシップや寄付による協力は重要な力となります。
それぞれの持つ強みを活かして相乗効果を生み出し、CSR活動やサステナビリティへの貢献をともに進めていきませんか?

貧困により中途退退学・児童婚・若年妊娠を経験後、プランの支援で学校に戻った18歳の女の子
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国際NGOプラン・インターナショナルについて
国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。













