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教育格差の対策のためにできることは?世界の現状と格差の原因

(2026年04月13日更新)

教育格差の対策は、世界でも日本でも喫緊の課題です。家庭の経済状況や地域差、ジェンダー、紛争、災害など複雑な要因が重なり、子どもたちの学びの機会が不平等になる状況は、将来の就業機会や生活の質を左右する深刻な問題です。近年は行政の施策、NPO法人の活動、企業の取り組みなど多様な支援策が広がり、格差の是正に向けた取り組みが進んでいます。
この記事では、日本と世界の教育格差の現状と原因、実際に行われている対策についてわかりやすく解説します。

  • 日本では相対的貧困が、学力や体験の教育格差を生んでいます
  • 世界では今も、学校に通えない子どもが数多く存在します
  • 教育格差をなくすための具体的な対策と支援がわかります

日本における教育格差の現状

教育格差は、決して遠い国の話ではありません。日本では「教育は平等に受けられるもの」というイメージがありますが、実際には家庭の経済状況や地域差、親の学歴、ひとり親家庭の負担など、さまざまな要因によって子どもの教育格差が生まれています。たとえば、世帯収入の差は学習環境に直結し、都市部と地方でも、学校外の学びや体験活動の機会に大きな差が生じています。
厚生労働省の調査(2021年)では、子どもの約9人に1人が相対的貧困とされ、日本でも教育格差は確実に存在し、加速する傾向があります

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ここでいう「相対的貧困」とは、その国の平均的な生活水準に比べて生活が困窮している状態を指し、衣食住が不足する「絶対的貧困」とは異なります。日本の教育問題では、まさにこの相対的貧困が教育機会を左右している点が大きな課題です。

経済格差は、以下の2つの側面で教育格差を生んでいます。

学力格差

日本では、親の世帯収入と子どもの学力には明確な相関があると多くの調査で示されています。家庭に余裕があれば塾や習い事、参考書、オンライン教材などに投資できますが、そうでない家庭では十分な学習機会が確保できません。また、放課後に家庭学習をサポートする大人がいない家庭環境では、学習習慣が身につきにくく、結果として学力に差がつきやすくなります。

体験格差

教育格差は学力だけでなく、文化・体験の差にも現れます。旅行、自然体験、美術鑑賞、科学館などの“学校外の体験”は、子どもの知的好奇心や視野の広がりに大きく影響します。しかし、家庭の経済状況によってこうした体験の機会が限られる場合、探索的な学びや意欲の差につながることが指摘されています。これは学校教育外の体験が学力や進学率にも影響する点で重要です。

日本で行われている教育格差への対策とは

日本では、子どもたちの学習機会を確保するため、行政による経済支援や、地域のNPO法人・市民活動による学習支援など多様な施策が広がっています。特にコロナ禍で顕在化した家庭環境の差を踏まえ、教育政策や民間による居場所づくりなど、包括的な教育格差への対策が進められています。

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行政による経済的支援

  • 幼児教育・保育の無償化(義務教育前の負担軽減)
  • 私立高校授業料の実質無償化
  • 児童手当の拡充
  • 学用品費補助、学習支援クーポン制度など
  • 文部科学省による教育費負担軽減策の推進

これらは、家庭の経済状況に左右されず、等しく学ぶ基盤を整えるための重要な支援制度です。

民間による居場所支援

行政だけでは補いきれない部分を支えるのが、民間団体の活動です。

  • 子ども食堂による食事提供
  • 無料・低額の学習支援
  • 地域住民とNPO法人の協働による安心できる居場所づくり
  • 不登校・孤立を防ぐコミュニティサポート

都市部・地方を問わず、地域全体で子どもを支える体制が広がっています。

【教育格差への対策】プラン・インターナショナルによる国内の女の子たち支援

プラン・インターナショナルでは、日本国内で悩みを抱える女の子たちを支えるため、安心して過ごせる居場所「わたカフェ」と「ゆうカフェ」の運営を行っています。ここでは自分のペースで過ごしたり、交流したりすることができます。また、食料品や生活用品の提供に加え、専門スタッフによる相談支援などを通じ、悩みや生きづらさを抱える女の子たちが日常の問題に向き合えるよう寄り添う支援も行われています。

写真:安心して過ごせる居場所「わたカフェ」を運営

安心して過ごせる居場所「わたカフェ」を運営

さらに、東京都豊島区の「すずらんスマイルプロジェクト」と連携し、女の子たちが安心して生活するために必要な知識を学べる「生活スキル講座」もオンラインで実施しています。
こうした支援を通じ、女の子たちが長期的に自信を持って社会とつながるための基盤づくりにも貢献しています。

世界における教育格差の現状

世界における教育格差は、日本とは異なり「学校に通えるかどうか」という根本的な機会の喪失として表れています。絶対的貧困、紛争、ジェンダー差別、政治不安、災害、ICT環境の未整備など、複数の要因が重なり、子どもたちが教育のスタートラインに立つことすら難しい状況が続いています。
ここでは、世界で起きている教育格差の実態と、その背景にある複雑な原因について詳しく解説します。

「絶対的貧困」の壁

途上国の多くでは、衣食住が十分に確保できない絶対的貧困が深刻であり、子どもたちが教育を受けられない最も大きな障壁になっています。日本では主に「教育の質の格差」や「体験格差」が問題となりますが、世界の多くの地域では、そもそも学校に通うこと自体が困難な状態が続いています
生活のために家事や労働を担わなければならず、家計を支える役割を求められる子どもも多くいます。また、学費や教材費を支払えないことから、通学を断念せざるを得ないケースも少なくありません。

教育を受けられない子どもたち

UNESCOの調査では、2023年時点で約2億5,000万人の子どもや若者(6〜17歳)が学校に通えていないとされています。特に、インド、パキスタン、ナイジェリア、エチオピア、中国、インドネシア、タンザニア、バングラデシュ、コンゴ民主共和国、スーダンの10カ国に多く、その多くは開発途上国で人口規模が大きい一方、深刻な貧困問題を抱えています。その結果、学校数や教員が不足し、教材や通学環境が整わず、教育が行き届かない状況が続いています。

教育を受けられないことは将来の所得や就業機会に影響し、親から子へと続く貧困の世代間連鎖を生み出します。この連鎖を断つには、家庭・地域・行政がそれぞれ役割を担い、社会全体で多面的に支援することが不可欠です。

写真:学校にも行けず、仕事をしながら兄弟の世話も担う女の子(インド)

学校にも行けず、仕事をしながら兄弟の世話も担う女の子(インド)

教育格差が起きる原因

教育格差は、家庭の所得、地域のインフラ、ジェンダー、政治不安、自然災害など、複数の要因が絡み合って生じます。これらを理解することは、効果的な格差解消のための対策に取り組むうえで重要です。

家庭の貧困

途上国では、食料や水を買うお金がなく、医療や教育も受けられないなど人間として必要最低限の生活を送ることも難しい絶対的貧困に直面している人々が大勢います。
絶対的貧困に苦しむ家庭では、生きることに精一杯で、教育は後回しにされてしまいがちです。子どもたちは、経済的な理由により学校に通わせてもらえず、生活のために幼いうちから働かなくてはならない場合があります。そのような家庭では、親自身が十分な教育を受けていないことが多く、教育の重要性が理解されていません。そのため、貧困の連鎖に陥っている状況が見られるのです。

写真:教材費の負担軽減のために学用品を配布(ナイジェリア)

教材費の負担軽減のために学用品を配布(ナイジェリア)

学校や教員の不足

途上国では、ひとつの小学校に何千人もの児童が通うことがよくあり、児童数に見合った数の学校や教室が不足しています。地域によっては、教室数が足りないため午前と午後の入れ替え制で授業を行うところもあります。また、教員の待遇が低いことでなり手が不足し、教職に就いたとしても十分な研修を受けられないまま教壇に立つケースが多く、専門的な指導法が身につかないまま授業が行われている状況です。
さらに、少数民族が多く暮らす地域では、家庭で使われる言語と学校で教わる言語が異なることも多く、現地語を理解できる教員が不足しています。少数民族の言語による授業を受け入れない学校もあるため、初等教育の段階から言語の壁が学びの妨げになるケースがあります。加えて、オンライン学習に不可欠なICT設備が整っていないなど、教育環境そのものが未整備であることも教育格差を広げる一因となっています。

戦争や紛争

戦争や紛争の影響によって何百万人もの子どもたちが教育を受ける機会を奪われています
2022年以降、紛争の激化により多くの人々が故郷を追われたウクライナでは、子どもたちの半数以上が国内外での避難生活を余儀なくされています。学校など多くの教育施設が全壊し教育の継続が困難を極めている状況です。
また、多くの地域で断続的な紛争状態が続いているアフリカでは、通学途中で危険な目に遭うことが懸念されると同時に学校が軍の拠点とされ攻撃の対象となってしまうこともあり、多くの子どもたちが命の危機にさらされています。

写真:爆撃で破壊された体育館(ウクライナ)

爆撃で破壊された体育館(ウクライナ)

中途退学により学習の機会を失い、選択肢がなくなってしまった子どもたちは、自ら志願して武装グループに加わる、児童婚や人身取引、性的搾取や性暴力などあらゆる形態の暴力にさらされるなど、多くの危険に直面してしまいます

宗教や地域性

途上国のなかには、宗教や地域に古くから根づく価値観や慣習により、教育を受けることができない女の子が大勢います。「無償ケア労働に携わる女の子には教育は不要である」との考えや、「家に経済的な余裕がない場合は男の子への教育を優先する」という考えや文化が根強い国や地域が多くあります。このような国々では、女の子の教育を受ける権利に対する理解が得られず、女子教育の促進が難しいとされています。

女の子が教育を受けられない原因の一つとして特に問題視されているのは、早すぎる結婚(児童婚)と妊娠です
途上国では18歳未満での早すぎる結婚(児童婚)を強いられている女の子が多くいます。学校にトイレがないことを理由に初潮を迎えると中途退学をしてしまったり、保護者が遠方にある学校までの長い通学路での暴力の危険を恐れて学校に通わせたがらなかったり、女の子が学校に通えない理由はさまざまです。
このような宗教や地域性により起こる性差別は、女の子から教育機会を奪い、女の子に対する差別や偏見、不平等を加速化させ、彼女たちの可能性の芽を摘む結果となってしまっています

写真:早すぎる結婚(児童婚)の弊害を学ぶトレーニング(ネパール)

早すぎる結婚(児童婚)の弊害を学ぶトレーニング(ネパール)

不安定な政治

長びく紛争で疲弊している国々では、不安定な政治が質の高い教育の提供を難しくしています。政治的に不安定な状態が続くと、政策についての不確実性が高まり、貯蓄や投資などの経済活動にも悪影響が生じます。その結果、政府はインフラや教育、保健・医療といった公的サービスを適切に届けることができなくなり、負のスパイラルを招いてしまいます
国の政策が遅れているため学校数が不足し、たとえ校舎があったとしても荒廃していたり、指導を行う教員が不足したりするなど、教育を阻害するさまざまな問題が混在しています。

自然災害

干ばつや洪水などの自然災害が多発している国や地域では、通常の支援体制が機能せず、社会的不公正や不平等といった既存の問題が浮き彫りになりがちです。その影響は教育分野にも及び、子どもたちの就学にも大きな影響を及ぼしています。
世界銀行と世界銀行防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の報告書は、甚大な自然災害による影響は年間消費にして5200億ドルの損失に相当し、毎年約2600万人が貧困状態に陥る状況を作り出していると解説しています。自然災害によりもたらされる貧困も、教育格差を助長させています
特に昨今は、災害が起こってもオンライン授業などを通じ教育を受けられる子どもとそうでない子どもが共存しており、これまでにない教育格差が生じているとの報告があります。

写真:災害時には教育格差が拡大することも

災害時には教育格差が拡大することも

世界の教育格差をなくすために必要な対策・支援

世界の教育格差を縮小するには、安全に学べる環境整備、教員育成、地域への意識啓発など、多角的な対策が求められます。国際機関、各国政府、企業や市民社会が協力し、持続可能な学びを支える取り組みが進められています。ここでは、主要な支援を分野ごとに整理して紹介します。

学習アクセスの確保

子どもたちが安全に学校へ通えるよう、教育環境の整備は最優先の対策です。

  • 学校・教室の建設

    • 遠距離通学を減らすために学校を増やす
    • 雨漏りや老朽化した校舎が多い地域で、安心して学べる建物を整備する
  • 給食の提供

    • 食費の負担を軽減し、家庭の経済状況に左右されず通学できるようにする
    • 栄養改善と、登校意欲の向上にもつながる

写真:新設した手洗い場(カンボジア)

新設した手洗い場(カンボジア)

  • 男女別トイレの設置

    • プライバシーと安全性を確保し、生理を理由に学校へ通えなくなる女の子を減らす
  • 井戸・水飲み場(手洗い場)の設置

    • 学校に安全な水の供給環境を整えることで、衛生環境を改善する
    • 感染症による欠席を減らす

教員の育成と教育内容の改善

学校があっても、教員が不足していたり、専門的な研修が受けられなかったりする場合は、質の高い教育は実現できません。

  • 教員トレーニング

    • 指導法、児童心理、学習評価など専門的なスキル向上を行う
  • 少数民族言語への対応

    • 公用語がわからない子どもたちが授業についていけるよう、現地語での補助教材やバイリンガル教育を支援
  • インクルーシブ教育

    • 障害のある子どもたちが一緒に学べる環境づくりを進める

写真:車いすで登校する男の子(ナイジェリア)

車いすで登校する男の子(ナイジェリア)

貧困の連鎖を断ち切る仕組みづくり

教育格差は、家庭や地域社会の環境とも密接に関係しています。子どもが安心して学び続けるには、家庭・地域双方の支援が欠かせません。

  • 親世代・地域への意識啓発

    • 特に女の子の教育の重要性や、児童婚の弊害を伝え、親世代の意識を変える
  • 奨学金・学用品の支給

    • 制服やノート、教材など基本的な学びの道具を揃えられない家庭を支援し、経済的な壁を取り除く

写真:学用品を受け取る女の子(スーダン)

学用品を受け取る女の子(スーダン)

  • 出生登録の支援

    • 公的な身分証明書(出生登録)がない子どもたちの登録をサポート
    • 正規の学校へ入学できるよう支援

教育格差をなくすために必要な対策と、今日からできる一歩

教育格差をなくすためには、行政、学校、地域、国際機関、企業、そして私たち一人ひとりが役割を果たすことが必要です。家庭の経済状況によって子どもの未来が左右されない社会をつくるには、長期的で持続可能な支援の仕組みが欠かせません

私たちにできることは多様です。寄付やクラウドファンディングへの参加、情報発信、教材寄贈、地域での学習支援ボランティアなど、小さな行動でも確かな格差解消につながります。教育格差は放置すれば広がりますが、社会全体で取り組めば必ず縮めることができます。

写真:「私たちの生活を好転させる唯一の希望は、教育を受けることです」と語る女の子(インド)

「私たちの生活を好転させる唯一の希望は、教育を受けることです」と語る女の子(インド)

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運営団体

国際NGOプラン・インターナショナルについて

国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに世界80カ国以上で活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。

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