(2024年10月15日更新)
皆さん、こんにちは。アドボカシーグループのアンナ・シャルホロドウスカーです。
今年9月、プラン・インターナショナル・コロンビア国統括事務所長を務めるアンヘラ・アンソラ・デ・トロと、現地の提携団体であるプロロンガー財団※の理事長、レナータ・セルナ・ホシエ氏が来日。コロンビアの現在の状況や課題について説明するとともに、アートを取り入れた平和構築ワークショップなどを通じ、コロンビア社会に前向きな変化をもたらした経験を日本のプラン職員たちに共有しました。1週間の滞在期間中には、現在私が取り組んでいる、偏見やステレオタイプの脅威を考えるワークショップの精査や改善に向けたアドバイスも得ることができ、非常に大きな学びとなりました。
- ※プロロンガー財団:コロンビアで人種や階層を超えた紛争解決と平和学習の活動を行っている団体
和平合意後も紛争が続くコロンビアの現状
コロンビアでは、1985年以降続く武力紛争により、これまでに約970万人が犠牲となっています。2016年に和平合意が締結されたものの、実際には多くの人々がその条件を受け入れていないことから、紛争はいまだ継続中で、死者数も増え続けています。紛争当事者双方が納得できる平和的な解決策を見出すまで、長期間にわたる意見交換や交渉、状況の説明と理解が求められています。
また、多文化・多民族国家であるコロンビアには、ベネズエラをはじめとする近隣諸国からの移民も多く、長引く紛争により国内避難民が急増しています。移民の多くは日常的な差別に直面しているため、コロンビアと近隣諸国の双方が互いの多様性や特性を受け入れ尊重し、差別や暴力を回避し、紛争の誘因を避けることが非常に重要です。
私の母国ウクライナも長期にわたり紛争下にあるため、自国で平和構築のために日々活動している人たちからその経験や実践、考え方やアイデアを学ぶことは、私自身にとって貴重な経験となりました。
アンヘラの発表資料より
自己認識を深めて問題解決を図る「平和構築ワークショップ」を体験
紛争や差別の問題を考えるにあたって、まず大切なのは、自分自身の考えや感情について理解を深めることではないでしょうか。そうすることで、誰もが他者に対して何らかの偏見や先入観を持っていることは、ごく自然なことだと理解していくことができます。
しかし、出身国や民族、ジェンダー、言語、職業、外見などによって相手を判断することを許してしまうと、たとえそれが表立って示されないとしても、差別を助長することにつながる可能性があります。さらには、人権侵害やメンタルヘルスの不調、孤立感や不快感を招き、社会における不平等の拡大につながりかねません。
こうした問題を理解するために、プラン・インターナショナル・コロンビアでは、プロロンガー財団と協力して、紛争や差別、偏見を乗り越え、平和構築につなげるためのワークショップをコロンビア各地で開催しています。
プロロンガー財団が採用しているワークショップの手法や特徴は極めて独特でした。ワークショップで行うエクササイズは、「はい」「いいえ」などの選択肢のない、参加者が自由に考えて答える問いかけが中心。そうした問いかけを通じて自省を促し、今ある問題と、それに対する各自の役割について考えることを後押しするものでした。
「モラ刺繍」を使った多様性を考えるアクティビティ


モラ刺繍を活用したアクティビティの様子
コロンビアの先住民族、グナドゥル族の女性たちに伝わる「モラ刺繍」の作品を縫い合わせるアクティビティもありました。モラ刺繍は、伝統的な表現であるとともに、先祖代々伝わる知識を伝授する方法でもあるそうです。一枚一枚異なる図柄の刺繍作品を選び、組み合わせ、縫い合わせる作業を通じて、モラ刺繍と同様に、私たち一人ひとりが多様で唯一の存在であり、異なることに価値があるという理解が生まれます。異なる存在に対して距離を置いたり、相手の特性や特徴を否定的に捉え差別したりするのではなく、多様性を尊重することで、すべての人々にとって居心地のよい環境が生まれることを、縫い合わせる作業を通じて学ぶアクティビティです。


モラ刺繍を活用したアクティビティの様子
傾聴を重視した新たなワークショップづくりにむけて
コロンビアの経験と助言に基づき、私が現在準備している偏見とステレオタイプを考えるワークショップを再検討し、手法の見直しをすることができました。
私がこれまで準備していたワークショップでは、参加者に、紛争下の住民やより弱い立場に置かれている人、地元政府などの役割を疑似体験してもらうことで、各当事者の主張の理解を図ることに重点を置いていました。しかしこの方法だと、立場の違いが強調され、かえって人と人との間に壁を作ってしまう恐れがあります。 助言を受けて、参加者同士がそれぞれの意見に耳を傾ける手法により重点を置くようになりました。お互いを評価することなく質問しあうだけでも、共感を生み出し、信頼と理解の架け橋を築けることが期待できます。
言語の違いが招く誤解や問題をどう解決していくか
私はこれまで、なぜウクライナ国内でウクライナ人同士の誤解が生じるケースがあるのか、疑問に思っていました。私見では、その最も大きな理由は、言語です。
歴史的な理由により、ウクライナ西部に住むウクライナ人のほとんどはウクライナ語を話し、東部の住民は主にロシア語を使用しています。しかし、ウクライナでの紛争が激化して以来、言語をめぐる問題は深刻化しています。双方が互いの言語を誤解したり拒絶したりすることで偏見が生まれ、それが時には衝突を引き起こす場合もあるのです。
今回の経験を通して、この問題が自分にとって重要であることを再認識するとともに、相手に考えを伝えることの大切さや、相手の立場や気持ちを理解しようと努めることの価値を学ぶことができました。こうした努力が、お互いの偏見や否定的な認識を克服し、紛争の解決に役立つはずです。
コロンビアからのゲストと経験を共有し、助言を得た1週間は、私にたくさんの新しいアイデアと刺激を与えてくれました。私自身のワークショップの手法をより効果的でわかりやすいものに変えることができたことを、嬉しく思います。 今後、偏見やステレオタイプなどによって引き起こされる既存の問題に対処するためのワークショップを、関心を持つ方々向けに開催したいと考えています。詳細が決まり次第ご案内しますので、ぜひご参加ください。






