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(2024年11月15日更新)

皆さん、こんにちは。アドボカシーグループのアンナ・シャルホロドウスカーです。
世界では紛争が増加の一途をたどり、私の母国ウクライナの紛争のように長期化するおそれもあります。今回、紛争がもたらす極めて重大な、時に目に見えない影響について考えてみたいと思います。それは、人命や健康への直接的な脅威や世界経済の悪化だけにとどまりません。

世界で増え続けている紛争

世界平和度指数(GPI)の第18版によると、世界の紛争は10年連続で増加し続けています。現在、世界では56の紛争が起こっています。92カ国が国境外での紛争に関与しており、第二次世界大戦後で最多の紛争件数となっています。数年前には小規模な紛争と考えられていたウクライナやガザ地区の紛争が、ここ1年で最も多くの犠牲者を出しているという事実は、紛争発生の初期段階における迅速な対応がいかに重要であるかを如実に示しています。

世界平和指数2024年度版

世界平和指数2024年度版

紛争がユースの生活と健康に与える影響

写真:世界ガールズ・レポート2024:それでも私たちは夢をみる~紛争下で生きる女の子とユース~

世界中で紛争が増加し、人々の生活や健康に深刻な影響を及ぼしていることを受け、プラン・インターナショナルは今年、ウクライナを含む現在紛争下にある10カ国から1万人を超える女の子や子ども、ユースへの調査やインタビューを基に、「世界ガールズ・レポート2024:それでも私たちは夢をみる~紛争下で生きる女の子とユース~」をまとめ、公表しました。

私は、その報告書を読んで改めて、国や紛争の原因に関わらず、紛争が引き起こす結果と、子どもやユースの生活への影響は、等しく極めて深刻であることを認識しました。生命や身体的健康にもたらす直接的な脅威に加え、紛争下で暮らすユースは、常にストレスを感じている可能性が高く、それが彼らのメンタルヘルスにも甚大な影響を与え、成人後の生活にも悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。

紛争はまた、劣悪な生活環境や医療へのアクセス制限を生み出し、基本的な人間のニーズすら満たされないことが多々あります。危機的状況下では、成長に不可欠な十分な食料が不足したり、学習のための適切な環境が欠如しがちであり、子どもとユースの将来にも影響を及ぼします。さらに、紛争はジェンダーに基づく暴力(GBV)の発生率を高めるため、女の子と女性たちの状況は特に過酷です。

紛争時にジェンダーに基づく暴力が増加する理由、ウクライナの女の子や女性に及ぼす影響

ジェンダーに基づく暴力(GBV)は、国境を越えて世界中に横行している、時に発見や認知が難しい人権侵害のひとつです。そのほとんどが女性に対するもので、紛争時には特に被害が拡大します。
私は、ウクライナのNGO「Girls」が実施した、「紛争下のウクライナにおけるGBVに関する調査」、そして、「紛争がウクライナ社会における女性のスティグマ化やジェンダーの役割に対する認識に与えた影響に関する調査」を読んで、執筆した団体に、調査で得られた知見を共有してほしいと依頼しました。

「Girls」によると、紛争が長期化するにつれて、家庭内の経済状況が悪化し、精神的なストレスが増大することで、GBVの発生件数が増加しています。特に、思春期の若者に対するGBVでは、保護者が紛争の影響で心理的・情緒的に不安定になったり、子どもの様子を気にかける時間的余裕がなかったりすることで、子どもに気を配ることなく一人置き去りにしたりすることで、暴力がエスカレートしたり、デジタル性暴力にさらされたりするケースも指摘されました。

しかし、レポートを作成したスタッフは、ウクライナにおけるGBVの報告の増加は、発生件数の増加だけではなく、GBVを認識する方法やどこに助けを求めれば良いか、継続的に情報開示が行われたことも理由のひとつであると述べています。現在ウクライナでは、女の子や女性がGBVに関する理解を深め、さまざまな形の暴力を認識し、記録し、助けを求めることができるようになっています。
これは前向きな一歩ですが、紛争のような緊急時に限らず、あらゆる状況下で誰もがあらゆる形態の暴力を認識し、それを止めるか、助けを求める勇気をみなが持てるようになれば、はるかに望ましいと言えます。

ウクライナの女の子と女性を支援するためのステップ

先日、UNFPA(国連人口基金)の報告会に参加しました。UNFPAウクライナ事務所のプログラム・スペシャリストであるアナスタシア・クラシェフスカさんと、プログラム・マネジメント・オフィサーの本田綾里さんが、紛争下にあるウクライナの女性が現在直面している課題、支援内容、さらに支援が必要とされている分野について説明されました。

紛争により家庭内暴力が増加し、経済的依存、心理的圧力、安全な地域への移住による環境の変化といった一連の要因が重なり、女性が暴力から逃れることが困難になっています。そのため、さまざまなレベルでの支援が急務となっているそうです。この場合、女性が「ひとりではない」ことに気づき、徐々に平常の生活に戻り、ストレスから解放されるための心理的な支援が極めて重要となります。また、女性の経済的自立を回復させるステップとして、リスキリング支援だけでなく、女性が自身の強みや能力に自信を持つよう促すことも、自己実現のためには重要です。

UNFPAウクライナ事務所は、日本からの多大な支援を受けてこうした取り組みを継続しており、成果をあげています。支援のおかげで暴力から解放され、新しい生活を始めた女性たちの素晴らしい事例は、とても喜ばしいことです。

写真:本田綾里さん(写真左)とアナスタシア・クラシェフスカさん(写真右)

本田綾里さん(写真左)とアナスタシア・クラシェフスカさん(写真右)

写真:アナスタシア・クラシェフスカさん(左)と

アナスタシア・クラシェフスカさん(左)と

紛争は、負の影響を生み出すだけでなく、既存の問題を一層深刻化させます。その解決には、確立された継続的な支援をあらゆる可能な方法で行っていくことが必要です。同時に、こうした問題は、紛争地だけではなく、今まさにここ日本でも発生していることを認識する必要があります。GBVは日本を含めた世界各地で起きており、悲惨な結果を招いています。状況を一段と悪化させないためにも、平時からの対策と支援策の充実が求められているのです。

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