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(2025年03月25日更新)

皆さん、こんにちは。アドボカシーグループのアンナ・シャルホロドウスカーです。
国連安全保障理事会が女性・平和・安全保障(WPS)に関する決議を採択してから、今年で25年となります。この決議は、紛争下の女性の権利保護に加え、紛争解決・平和維持・紛争後の平和構築における女性の重要な役割を認識し、それらの実現に向けた行動を規定しています。
しかし実際には、それらの過程におけるジェンダー平等の達成は依然として極めて困難であり、状況を徐々に変えるためには、さまざまなレベルでの取り組みが必要です。

2014年に紛争が始まってから10年、全面的な危機の発生から3年が経過したウクライナでは、女性の保護と平和構築プロセスへの参加が極めて重要になっています。平和構築における女性の役割の可能性について理解を深めるため、先月、日本政府とノルウェー政府が共催したWPSのシンポジウム「WPSアジェンダ推進のための議員の役割」と「災害と紛争下の女性の声と尊厳:困難と日本のNGOからのWPSの未来への提言」に参加してきました。そこでは、ウクライナの問題も取り上げられていました。

WPSアジェンダ推進のための議員の役割

WPS決議が採択されて25年が経過しても、和平プロセスや交渉に関与し、実質的な影響力を発揮する女性はいまだ少なく、女性はジェンダーに基づく暴力(GBV)の被害を受け続けています。
WPSの理念と行動のギャップを埋めるために、政府に働きかけ、戦略を練り実行することができる国会議員が果たしうる役割は重要です。さらに、世界各地で紛争が多発するにつれ、何百万人もの女の子と女性が紛争地域の近くでの生活を強いられ、紛争による避難民の数も増加の一途をたどっています。
これによるGBVの発生率の増加は、今日、WPSのより喫緊の懸案事項となっています。

2025年2月、笹川平和財団とジョージタウン研究所が主催し、外務省が後援するシンポジウムが東京で開催されました。同シンポジウムには、フィリピン、インド、ウクライナの国会議員や代表者が参加し、実践や好事例を共有し、WPSアジェンダ達成にむけた次のステップについて共に考えました。

写真:セミナー「WPSアジェンダ推進のための議員の役割」

写真:セミナー「WPSアジェンダ推進のための議員の役割」

セミナー「WPSアジェンダ推進のための議員の役割」

各国のWPSアジェンダの詳細

登壇した各国の状況は、それぞれ異なります。セッションに参加した公明党の岡本みつなり衆議院議員は、日本国内では紛争はないものの、地震や津波、台風といった自然災害は非常に深刻だと指摘しました。緊急避難の際の一時避難所の数や環境の改善・調整が求められており、そのためには女性の平等な参加と保護が不可欠だと述べました。

現在、紛争の長期化により、ウクライナでの女性の役割や平和構築プロセスに対する認識に変化が生じています。ジェンダー平等と女性の権利の実現にむけて積極的に取り組んでいるウクライナのOlena Khomenko議会議員は、議員としてのウクライナにおけるWPSの取り組みの現状と経験について共有しました。
現在、約7万人の女性が軍の任務に就いており、ジェンダー・ステレオタイプに挑んでいます。平等な機会が与えられている一方で、議会はこの状況下で女性を保護し、安全を保障する策を講じる必要に迫られています。この課題に取り組むなかで、ウクライナでは軍の医療に関する規則や保証、メンタルヘルス・プログラムが整備されました。

政府の統制が及ばない地域では、性暴力犯罪が頻発しており、GBVの被害状況は極めて深刻です。そのため、平和について語る際には、その価値を認識することが重要であり、その維持には身体的安全の保障が欠かせません。平和構築プロセスに女性を積極的に関与させるWPSアジェンダの推進と同様に、現在のウクライナにとっては、強力な協力国が不可欠です。
しかし、ウクライナ議会で、平和構築プロセスに直接関与し、強い影響力を持つ女性の割合は依然として非常に低い状況です(女性議員は約20%、男性議員は約80%)。私は、WPSアジェンダやジェンダー平等の実現に向けて、この問題は極めて重要であり、是正すべきだと考えています。

WPSアジェンダ達成に対するNGOの役割

写真イベント「災害と紛争下の女性の声と尊厳:困難と日本のNGOからのWPSの未来への提言」

イベント「災害と紛争下の女性の声と尊厳:困難と日本のNGOからのWPSの未来への提言」

議会の動きとは別に、NGOは、紛争下の女性の命と尊厳を守り、平和構築プロセスへの参加促進を目指すプロジェクトを実施することで、WPSの目標達成に重要な貢献を果たしています。
プラン・インターナショナルも加盟している、緊急人道支援を展開するジャパン・プラットフォーム(JPF)もWPSアジェンダに積極的に取り組んでおり、さまざまなNGOが日本や海外で実施したプロジェクトの好事例を共有するイベントを開催しています。

私は、WPSアジェンダ達成のために紹介されたプロジェクトから、実施国の状況や喫緊の課題によって特徴が異なることに気づきました。たとえば、ミャンマーの難民キャンプでは、衛生用品等の人道支援に加え、その状況下では女の子と女性は暴力に最も脆弱であるため、GBVへの対処・予防・啓発が極めて重要です。

NGO代表者によるWPSアジェンダに関するパネルディスカッション

実施したプロジェクトの経験の共有だけでなく、発表者によるパネルディスカッションでの意見や経験の共有は非常に貴重なものでした。WPS実施の最大の課題として、ジェンダーギャップ克服のために、平和構築プロセスに女性を参加させる難しさが挙げられました。
講演者によると、紛争下である場合、女性はしばしば自身を先導者には不適格と考える傾向があるため、とりわけ困難であるそうです。また、女性は声をあげることを躊躇するため、啓発活動を展開し、国内プロジェクトを実施することが極めて大切です。

続いて、WPS実施への最も効果的な方法に関しても議論が交わされました。
認定NPO法人Reach Alternatives(REALs・リアルズ)の理事長・瀬谷ルミ子さんをはじめ、多くの方の考えや提案に感銘を受けました。瀬谷さんは、「持続可能な活動を実施することとともに、好事例やロールモデルを創出することが肝要である」と指摘されています。そのうえで、女性の活躍を促進するためにはユースや男性を巻き込み、多様なステークホルダーと協働し、女性がリーダーシップを発揮しやすい環境を整えることや、新たなアプローチを模索し続けることも大変重要であると述べました。
認定NPO法人ワールド・ビジョン・ジャパンの支援事業部プログラム・コーディネーターの池内千草さんは、女性のリーダーシップ促進には、それを妨げる行動や文化を変えることが重要であると指摘しました。
また、認定特定非営利活動法人SEEDS Asia事務局長の大津山光子さんは、女性が沈黙している理由を疑問視し、背景や環境から分析することが欠かせないと語り、「たとえば、語ることの難しい空間、あるいは社会における伝統的な原則や役割に起因する場合は、それらの根本的な土台に影響を与えるからこそ、支援する側に工夫が求められる」と述べています。

終わりに

WPSのセッションに参加し、これらの考えや見解を聞き、WPSアジェンダの達成には、さまざまな分野やレベルでの包括的な取り組みが極めて重要であると思いました。具体的な方法は国ごとに異なりますが、平和構築プロセスへの女性の参加が象徴的で表面的なものになったり、実際の関与を伴わない/彼女たちの行動に影響を及ぼすことのない「見学者」としての関与にとどまったりしてはなりません。
女性が意思決定や提携に対する真の権限や発言力を有し、真にプロセスに関与することこそが不可欠です。そうした条件が整って初めて、社会全体にとって極めて大切なWPSアジェンダが達成されるのです。

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