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(2025年04月09日更新)

写真:ワークショップでのプレゼンテーション

ワークショップでのプレゼンテーション

皆さん、こんにちは。アドボカシーグループのアンナ・シャルホロドウスカーです。 2025年2月に、「差別に対する意識を高め幸福を創出する:偏見・差別・憎悪・暴力」というワークショップを実施し、このテーマに関心を持つ、さまざまな経歴の約30名の方に参加いただきました。

私たちは、異なる背景を持つ人に対して偏見や先入観を抱いてしまうことがあります。しかし、それが相手に対する言動に反映されることはあってはなりません。それがさまざまな形の差別や憎悪に発展し、紛争を引き起こすことすらあるからです。

ウクライナでの全面的な紛争勃発から今年で3年となり、世界の紛争の原因と、その回避のために私たちができることを考える重要な局面を迎えています。そこで、このワークショップを通じて、ウクライナと日本の実例を踏まえつつ、誰も権利を奪われたり、さまざまな形の憎悪に苦しんだりすることのない、皆が心地よく暮らせる社会の実現にどう貢献できるかを、参加者の皆さんと深く掘り下げて考える時間をもちました。

私がこのワークショップを開発するに至った思いや気づきのプロセス、ワークショップ参加者の皆さんの反応から感じたことなどをお伝えします。

私が偏見と差別について考えるようになった背景

私はウクライナに住んでいる頃から、人権と民主主義が最も重要視されるべき価値であるはずの社会で、特定の社会集団や少数民族が、依然として常に権利を侵害され、否定的な態度を示され続ける不平等な状況に置かれていることに疑問を感じていました。
大学での勉学や学校での勤務の傍ら、さまざまな分野での民主主義と人権に関連する研修プロジェクトに何度か参加し、これらの価値を自らの仕事に取り入れることが極めて重要であると考えていました。しかし、当時は、差別や憎悪を生み出す根本原因について十分に理解するには至っていませんでした。

日本で目の当たりにした対立、そしてワークショップの開発に着手

ウクライナでは、ウクライナ語を話す地域、ロシア語を話す地域、その両方を話す地域が混在しています。2022年の全面的な紛争の開始以来、ウクライナでの言語問題は非常に深刻化しました。日本に来たばかりの頃、私は異なる言語を話すウクライナ人同士が同じ避難民であるにもかかわらず激しく言い争う場面に遭遇したことがあります。
相手が話す言語に対する偏見や、お互いの意見に耳を傾けず共感を拒む姿勢が、いかに対立や衝突を誘発するのかを目の当たりにしました。こうした衝突が激化すれば、大規模紛争に発展する可能性さえあるのです。

偏見が憎悪となり、ジェノサイドにまで発展しうることを示すピラミッド

偏見が憎悪となり、ジェノサイドにまで発展しうることを示すピラミッド

その後、このワークショップを開発するプロセスで、私は「憎悪を生む根本原因」について考察を深めることができました。最初に形成される偏見とステレオタイプな思い込みこそが、重大な危険性を孕み、さまざまな形の憎悪を煽り立て得ること。加えて、社会での多様性に対する理解不足や受け入れの難しさも、大きく関わっていることに気づいたのです。
こうした理解により、ウクライナ国内の特定の少数民族や社会集団が置かれている状況や、国内でさえも紛争問題が起こる理由や前提となる環境に関し、異なる視点から考えられるようになりました。

偏見と理解不足が何につながるか:ウクライナと日本の事例から

ワークショップでは、ウクライナのロマの人々の状況を実例として取り上げることにしましたが、これによって偏見とステレオタイプがどんな危険を孕んでいるかを明確に理解しました。ウクライナでは、ロマの人々に対する一般化された否定的な認識が極めて広く浸透しており、ロマに属するすべての人が同様のイメージをもたれてしまうため、彼らは社会的に孤立し、権利を剥奪され、身体的な攻撃を被ることさえあります。

また、日本に住むなかで、私はある種の社会の閉鎖性または多様性が受け入れられることの難しさが、特定の少数集団に対する偏見、時にはヘイトスピーチ(クルド人や韓国人などに対するもの等)に発展し得ることに気づきました。ワークショップでは、それらの事例の1つを扱い、それが起きてしまう理由について考えるだけではなく、私たち自身に何ができるかも検討しました。

憎悪を回避し、阻止するためにできること

私は、ワークショップで一番大切な部分は理論ではなく、そこで扱われる問題について考える機会をもてることであると考えており、それは内省や自己変革を促し、状況改善や好ましい変化へのステップとなります。役割や立場にかかわらず、自身の力や潜在的な影響力を認識することが、身の回りで起きることに対して無関心な態度をとるという社会の空気を変える鍵になると信じています

グループワークでの議論

グループワークでの議論

ワークショップでは、社会に存在する憎悪の原因と自身の立場からそれを克服する方法について考える時間を設けましたが、参加者の方々がこうした問題について積極的に議論し、解決策を探し出そうとする姿勢に大変感銘を受けました。このワークショップが、問題をより深く、また異なる視点から捉えることを参加者に促し、実現可能な解決策やとるべき行動を見出す機会となったのではないかと感じました。

参加者の皆さんのコメント

グループディスカッションののち、各グループの発表者から、まとめのコメントが寄せられました。

写真:ディスカッションの様子

ディスカッションの様子

「お互いを深く知る機会は既存の偏見やステレオタイプを解消する助けとなるため、そのような対話や深いコミュニケーションの機会を増やすことがとても重要」

「単なる個人の意見にすぎないものを、信頼できる情報として鵜呑みにすることによる誤解を防ぐため、常に異なる情報源や見解に触れることが必要。それは状況の正確な把握や多様性を受け入れること、憎悪の回避につながります」

「憎悪を防ぐためには、自身の心の内に幸せを感じることも重要であり、それを育むことも必要です。内面の調和を感じることで、他者を尊重し思いやることもできるようになり、皆にとってよい社会を築くための大切な一歩となるのです」

ワークショップを開催してみて

ワークショップ参加者の感想や所感を伺い、社会での憎悪や差別を防ぎ、克服するために何ができるかについて改めて考えさせられました。当たり前のことと思われるかも知れませんが、そのための最初の、かつもっとも重要な一歩は、身の回りで起こることに無関心でいないことだと思います。

ワークショップ参加者の方々は、この点の重要性を十分認識されているように見受けられ、グループディスカッションではそれが顕著に感じられました。互いの意見を補い合いながら、新しい考えや今後の行動へと発展させていく調和のとれた意見交換が、随所で展開されていました。

ワークショップ参加者と

ワークショップ参加者と

ワークショップ後、参加された何人かの方が、長年近所に住んでいながら、交流する機会がなかった外国人と知り合う機会を設けたいと意欲を示されたことに、私は大変感銘を受けました。そうした交流や対話の機会は、お互いを深く知り、ステレオタイプや偏見を克服するだけでなく、包摂的で多様性のある社会への道筋をひらくものでもあります。
世界を皆にとって快適で幸せな場所にするために、ともに一歩を踏み出しましょう!

執筆者紹介

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