(2025年06月12日更新)
皆さん、こんにちは。アドボカシーグループのアンナ・シャルホロドウスカーです。
先日、私は日本に避難しているウクライナの子どもたち29人を対象に、教育環境とメンタルヘルスに関するオンライン調査を実施しました。今回のブログでは、その結果から浮かび上がった課題と、子どもたちに今まさに求められている支援策について報告します。
紛争激化によって一変したウクライナの学びの風景
勤務していた学校のイベントで、生徒たちと
私はかつてウクライナの学校で働いていました。多くのウクライナの子どもたちにとって、5月は特別な月です。学年末にあたるため勉強や試験で忙しく、非常に大変な時期である一方、6月から約3カ月続く夏休みの始まりを目前に控え、楽しみにしている子どもも多くいました。
しかし現在、状況は大きく変わっています。ロシアによる武力行使の拡大により、600万人以上のウクライナ人が避難を余儀なくされ、その約4分の1は子どもです。多くが、約3年にわたって外国での生活を余儀なくされています。
故郷を離れた多くの子どもは、新しい言語を学ぶだけでなく、ウクライナのオンライン授業と避難先である現地の学校での授業への参加をこなさなければなりません。
日本で直面する二重の学習負担と心理的な影響
前回(2024年)に実施した調査のレポート
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2023年末、私は日本へ避難しているウクライナの子どもたちを対象に、教育とメンタルヘルスに関する調査(「ウクライナから日本に避難している子どもの教育とメンタルヘルスに関する現状調査」)を実施しました。その結果、過重な学習負担に加え、ストレスや故郷を思う気持ちが重なり、心の健康に深刻な影響を与えていることが明らかになりました。
2025年5月、状況の変化や、子どもたちが直面している課題や必要とされる支援を把握するため、紛争により日本に避難している29人の子どもを対象にオンラインで小規模調査を行いました。
ウクライナ紛争下における教育上の課題
破壊された学校の内部
2022年2月にウクライナで全面的な紛争が始まって以来、教育制度は深刻な困難に直面し、授業の形も大きく変わりました。これまでに3,000校以上が損傷し、300校以上が完全に破壊されています。そのなかには、私が学び、働いた学校も含まれています。特に非支配地域では遠隔授業の再開が難しく、多くの教室が過密になっています。こうした状況と子どもの安全確保のため、前線地域を中心に多くの学校がオンライン授業へと移行しました。これにより、国外避難中の子どもたちもウクライナの教育を受け続けることが可能になっています。
日本に避難したウクライナの子どもの教育状況とメンタルヘルス
2025年5月時点で、日本には1,931人のウクライナ避難民が暮らしており、そのうち252人が子どもです。5月に実施した小規模調査には、1~3人の子どもを持つ22人の保護者が参加し、対象の子どもは計29人でした。年齢別では、11~15歳が40%超、6~11歳と15~18歳がそれぞれ約4分の1、6歳未満は最も少数でした。参加者の82%(18人)が2022年に日本へ避難し、2023年以降に来日したのはわずか4人でした。
対象となった子どもの半数超が日本の学校に通っており、40%は日本とウクライナ両方の学校で学んでいるため、学業負担は2倍になっています。日本での生活が3年近くに及ぶ子どもも少なくありませんが、40%以上が言葉の壁を感じており、これは前回調査と同様の結果でした。また同じ割合の子どもがコミュニケーション不足を感じています。これらの問題は密接に関連しており、日本の学校に通う子どもだけでなく、ウクライナの遠隔授業のみを受けている子どもにも共通して見られました。さらに、4人に1人がストレスや不安などのメンタルヘルスの問題を抱えていることも明らかになりました。


日本に避難したウクライナの子どもに必要な支援
多くのウクライナ避難民の子どもたちが、言語の壁やコミュニケーション不足に悩んでいることから、保護者は日本の子どもとの交流機会を増やすことが特に重要だと感じています。調査によると、約半数の子どもが地域での定着を目的としたイベントや課外活動、旅行などへの参加を必要としています。リラックスした雰囲気のなかで他の子どもと交流することがストレスを軽減し、言葉の壁を越えて関係を築く助けになります。
また、40%超の子ども(前回調査とほぼ同じ割合)が、クラブ活動やスポーツへの参加機会が限られていると答えており、この分野への支援も求められています。心理的支援の必要性も依然として高く、前回同様、約4人に1人がストレスや不安などに対して専門的なサポートを必要としています。その背景には、コミュニケーション不足など複合的な要因があると考えられます。さらに、保護者の半数が学習用機器や教材の購入支援を希望しており、一部の家庭では情報提供やスキルトレーニングへの支援も求められています。
ウクライナ避難民の子どもたちが経験する困難に関する考察
今回の調査から、日本に避難している子どもたちは今なお深刻な言語の壁とコミュニケーションの不足に直面しており、それらがメンタルヘルスや幸福感に大きく影響していることが分かりました。前回と今回の調査結果を比較すると、言葉の壁が子どもの教育と充実した生活を享受する機会に対する厚い障壁であることも明らかになりました。
日本の学校にのみ通っている場合でも、他の生徒と同じ水準で学ぶためには、言語的な負担により学習量が実質的に倍増しています。調査では、「言葉の壁によって同級生との学力差を感じ、自信や将来の夢に影響が出ている」という声も寄せられました。こうした状況を踏まえ、子どもたちが交流し社会に定着できる機会をできるだけ多く提供すること、言語学習支援を継続すること、教育要件の一部を柔軟に見直すこと、そして学びの過程での伴走支援とモチベーション維持を図ることが重要だと考えます。
これらの取り組みを通じて、子どもたちが安心して学べる環境を整えていくことが大切です。






