(2026年02月18日更新)
皆さん、こんにちは。アドボカシーグループのアンナ・シャルホロドウスカーです。
2026年2月24日で、ウクライナにおける全面的な武力衝突の開始から4年が経過します。数百万人のウクライナ人が国外への避難を余儀なくされ、現在も約600万人が国外で生活しており、その多くを女性と子どもが占めています。
危機や強制移住の状況下において、女性は特有の困難に直面する一方で、復興や平和構築において重要な役割を果たしています。これは、「女性・平和・安全保障(WPS)」の枠組みにおける中心的な考え方でもあります。
今回、私は日本を避難先として滞在しているウクライナ人女性43名を対象に、アンケート調査を実施しました。調査では、統合の現状に加え、ウクライナの復興および平和構築への参加意欲や、その可能性について理解を深めることを目的としています。
調査を始めた背景
ウクライナから日本へ避難した人々は、長期にわたり日本で生活しており、多くの人が初期の基本的な生活ニーズを満たす段階を徐々に乗り越えつつあります。現在では、日常生活における困難は以前に比べて軽減され、将来の人生設計や自己実現について考える段階へと移行しつつあります。これは、支援プログラム終了後の安定した就労や経済的自立の必要性にとどまらず、自らの価値観や願いをどのように実現していくかという課題とも深く関わっています。
ウクライナ人女性との対話のなかでは、「日本にいてもウクライナと積極的に関わり続けたい」「日本とウクライナをつなぐ架け橋になりたい」といった声が数多く聞かれました。こうした対話を通じて、紛争や強制移住という困難な経験が、女性たちに内面的な強さをもたらし、復興や平和構築に関与していくための重要な資源となり得ることが示唆されました。
一方で、そのような願いや意欲があっても、多くのウクライナ人女性にとって、平和構築への参加や祖国支援は、実際の行動に結びつかず「意向」にとどまってしまう現状もあります。
調査では、女性たちの希望や動機、参加意欲をより深く理解するとともに、活動への参加を阻む主な障壁や困難を明らかにすることを目的として実施しました。あわせて、参加しやすく現実的な支援のあり方や可能な参加形態を探り、彼女たちの持つ潜在力を発揮できる機会を広げるための手がかりを得ることを目指しています。
貢献したい思いと、統合の現実との間で
日本に避難したウクライナ人女性へのアンケート調査からは、紛争や強制移住の経験が、祖国支援や平和構築への参加意欲に大きな影響を与えていることが明らかになりました。多くの女性が、日本で生活しながらも自分なりに祖国へ貢献したいという思いを抱き、ウクライナの未来に対する責任感を持っていることがうかがえます。
一方で、日本社会への統合には依然としてさまざまな課題が存在します。特に、安定した就労の確保や経済的自立は多くの女性にとって大きな壁となっており、希望する活動に参加するための時間的・心理的余裕を持てない場合も少なくありません。
また、今回の調査では、状況が安定したとしても「ウクライナへ完全に帰国する予定はない」と回答した人が多く、その理由として、安全面への不安や社会経済状況の厳しさが挙げられました。
しかしながら、紛争や強制移住を経験したこと、そして日本で得た知識やスキル、学びや就労経験は、いずれも大きな価値を持つ資源といえます。ウクライナと日本という二つの社会的・文化的背景を理解し、新たな視点を獲得した彼女たちは、復興や平和構築において重要な役割を果たし得る存在です。
調査結果は、女性たちの潜在力を実際の活動につなげるためには、柔軟な参加形態――とりわけオンラインなど遠隔からでも関与できる仕組み――の整備が重要であることを示しています。さらに、多くの参加者が祖国支援を「市民としての参加」であると同時に、「自らの専門性を活かす機会」として捉えていることも明らかになりました。そのため、経済的自立の必要性を踏まえつつ、公正な報酬や持続的なキャリア形成につながる機会を提供することが重要です。
平和構築における女性の重要な役割
現在、世界各地で紛争や人道危機が増加しており、そのなかで女性は特に脆弱な立場に置かれることが少なくありません。暴力のリスク、経済的な不安定さ、資源へのアクセスの制限など、多面的な困難に直面する一方で、こうした経験を通じて培われる力は、復興や持続的な平和構築に積極的に関与する可能性を生み出します。しかし、現実にはジェンダー格差の影響により、意思決定プロセスへの参加機会が十分に確保されていない状況が続いています。
こうした課題に対応するため、国際的な「女性・平和・安全保障(WPS)」の枠組みは、危機下で女性が直面する固有の課題を認識すると同時に、復興および平和構築において女性が果たす不可欠な役割を強調しています。女性の潜在力を引き出し、ジェンダー平等を推進することは、持続的な平和の実現に不可欠な要素と位置づけられています。
日本に避難しているウクライナ人女性の事例からも、紛争や強制移住、さらに新たな国での生活への適応といった経験が、復興や平和構築に活かし得る独自の知識やスキルを育んでいることが示されています。
より広い視点で見ると、紛争や強制移住を経験した女性たちは、地域社会や祖国の再建を支える重要な主体となり得ます。専門性や経験を活かしながら、多様な形で復興に貢献し、国際的なつながりを強化し、平和構築プロセスを前進させる可能性を有しています。こうした経験と蓄積された知見は、持続的な平和と社会の長期的な回復に不可欠な資源といえます。
今回のアンケート調査を通じて、日本に避難しているウクライナ人女性たちが強い意欲と大きな潜在力を有している一方で、その力を発揮するまでの過程にはさまざまな課題が存在することが明らかになりました。復興や平和構築への参加は、必ずしも現地にいることを前提とするものではなく、国外からでも多様な形で貢献することが可能です。
本調査の結果が、危機を経験した女性たちの参加を後押しするための環境整備や、よりアクセスしやすく柔軟な参加形態の検討に資することを期待しています。今後も、彼女たちの潜在力を具体的な行動や機会へとつなげる方策を探求しながら、このテーマに継続して取り組んでいきます。6月20日の「世界難民の日」には、調査結果をまとめた完全版の報告書を公開する予定です。






