(2025年02月28日更新)
プラン・インターナショナルは、ジェンダー平等な社会の実現を目指し、あらゆる活動において「ジェンダー・トランスフォーマティブ・アプローチ」を採用しています。近年、ユニセフや国連女子教育イニシアティブ(UNGEI)などの国際機関とともに、このアプローチに基づく「ジェンダー・トランスフォーマティブ教育(GTE)」を広げる取り組みを行っています。
教育の国際デーである2025年1月24日に、「教育を起点にジェンダー平等を目指す ジェンダー・トランスフォーマティブ教育に向けて」と題した、実務者向けウェビナーを開催しました。当日は、国際協力に携わる国際機関、政府機関、NGO、研究者やコンサルタントなど、約60名の方々がご参加くださいました。
トランスフォーマティブであるということ
開会の挨拶をする三輪さん
ウェビナー開会では、一般財団法人アジア・太平洋人権情報センターの三輪敦子さんが挨拶に立ち、「トランスフォーマティブ」という概念が意味する「変革志向」という考えは女性のエンパワーメントにとって非常に重要と強調。教育はエンパワーメントの最重要要素ですが、世界では今も、原理主義や過激主義の影響で女性であるという理由で多くの女の子が教育機会を奪われています。コロナ禍で児童婚が増加に転じた国や地域もあります。
一方で教育機会が普及しても、必ずしもトランスフォーメーションが起きていないという現実もあります。これは日本のジェンダーギャップ指数における教育分野の課題でもあります。日本では今も専攻分野の選択に関するジェンダーギャップが存在しますし、中等教育から高等教育に向かうにつれてジェンダー規範/固定観念の影響を強く受けた意識や行動が表れるようになり、それが進路やライフコースの選択にも影響を与えます。
三輪さんは、こうした状況を改善することこそジェンダー・トランスフォーマティブ教育(GTE)の鍵であり、「隠れたカリキュラム」を克服し、ジェンダーに基づく無意識の偏見、家父長制的な考え方を変革する必要があると強調。「そうすることで、性別に関係なく、誰もが安心して自己肯定感を育みながら、自由に人生を選べる社会が可能になる」と呼びかけました。
ジェンダー・トランスフォーマティブ教育(GTE)とは?
ジェンダー・トランスフォーマティブ教育(GTE)を推進するUNGEIは、GTEを次のように定義しています。
- GTEとは、ジェンダー不平等と不公正の根本原因を理解し、認識し、それに挑戦する学習である。「変革」とは、人々の態度、信念、行動、そして教育システムにおいて、ジェンダー不平等からジェンダー平等へ変化させることである。
- GTEは、教育政策から教授法、地域のエンゲージメントに至るまで、教育システムのあらゆる部分を活用して、ステレオタイプ、態度、規範、行動を変革するものである。
- GTEの目標は、ある人のジェンダーが権力、資源、機会へのアクセスに影響を与えない世界を創ることである。ジェンダー・トランスフォーマティブという言葉は、ジェンダーへの交差的な理解を前提としている。
- GTEは、フェミニスト教育と呼ばれることもある。(FemNet4GTE/UNGEI、2024)
GTEは2022年の国連総会にあわせて行われた「教育変革サミット」で注目され、国際機関やプラン・インターナショナルが主催したサイドイベントを通じて「Feminist Network for GTE(FemNet4GTE)」が発足。2023年、2024年と、GTEについて学び合い、アドボカシーを目指す国際会議を開いています。
プランの澤柳職員は、ジェンダー・トランスフォーマティブ教育に関するプランの独自調査の結果や提言を紹介するとともに、外務省の助成で参加した第2回FemNet4GTE(南アフリカ・ヨハネスブルグ)の報告や、就学前教育でGTEを実践する南アフリカのNGO「VVOB」への訪問の報告を行いました。
日本によるGTEへの貢献
JICA(国際協力機構)のジェンダー平等・貧困削減推進室長・溝江恵子さんは、JICAが進めるGTEの取り組み事例を共有。JICAは「ジェンダー平等と女性のエンパワメント」※1をグローバル・アジェンダとしており
、教育は優先課題の一つです。たとえばケニアでは、ジェンダーに基づく暴力防止対策として、対象地域の教員向け暴力防止研修を実施し、学校現場でのジェンダーに基づく暴力の抑止と教育環境の改善を目指しています。また、生徒を対象とした空手トレーニングを行い、護身術として身につけてもらいながら、「道場訓」に「他者の尊重」「暴力を許さない」といった項目を入れて、稽古の前後に読み上げることで学び合いを行っていると紹介しました。
さらに、JICAの「教科書・教材開発を中心とした学びの改善クラスター」※2によるエチオピアにおけるパイロット活動にも言及
。初等・中等教育の理数科教育におけるジェンダーに対応した教授法に関する教員研修、ジェンダー・バイアスのない教科書開発、学校やコミュニティへの啓発活動などを通じたGTEの取り組みを紹介しました。
実践から見えてきたGTEの可能性と課題
ウェビナーでは、NGO、コンサルタント、JICAといった多様な立場から日本のGTEを考えるディスカッションが行われました。
パネルディスカッション登壇者(上段左から溝江さん、井川さん、下段伊藤職員)
まずNGOの事例として、プランの伊藤職員がネパールで取り組んでいる「ジェンダー平等推進のための教育」プロジェクトを紹介。プランでは、外務省NGO連携無償資金協力の支援を受け、女の子の教育アクセス改善のために、女子トイレの整備や教員研修(ジェンダー・バイアスのない教授法や指導法)などを実施しています。また、コミュニティへの啓発活動として、女子サッカークラブの活動も支援しています。コミュニティではサッカーは男の子がプレイすることが当然視されていましたが、ある女の子が学校対抗のサッカー大会で準優勝を果たし、地方政府からMVPを授与されたことで周囲の見方が変わり、彼女がロールモデルとなりました。伊藤職員は、こうしたロールモデルを複数育てていくことで、地域のジェンダー役割や規範に変化が生まれる可能性があると述べました。
株式会社コーエイリサーチ&コンサルティングの井川さんは、成人教育の一環としての職業訓練(TVET)の事例を紹介。女性が職業訓練を受け、家計収入の多様化・生計の安定に貢献する点は評価しつつも、スーダンの案件を例に、一つのプロジェクトでジェンダーの役割分担まで踏みこむことは容易ではないと述べました。女性には働く場が少なく、多くの女性は地域で「女性の役割」とされている手工芸やお菓子作りなどで生計を立てているとのことです。井川さんは、女性たちがそうした役割のイメージを内面化してしまうケースが多いと指摘。このような意識を変えていくには、自分自身の教育やキャリアに誇りを持てるよう支援することが重要であり、GTEを通じてロールモデルを作り、社会にアピールしていくことが大切であると訴えました。
溝江さんはJICAの立場から、GTEを国レベルで進めるには、相手国の教育関係者が「GTEが良い取り組みである」と本気で理解し、広げていきたいと思ってもらうことが大切で、そのためにもGTEの成果を実感してもらうことが欠かせないと強調しました。
世界にはGTEと呼びうる事例は複数あります。しかし、GTEに関する調査が不足しており、十分なエビデンスが示せていないことは世界的な課題です。プランは、これからもGTEの取り組みについて多くの方に知っていただけるよう、またGTEを実践する輪を広げるために働きかけを行っていきます。






