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プラン・ユースグループが、パートナー間の対等な関係づくりに関する調査報告書を発表~
アドボカシー
ユースの活動レポート
(更新)
プラン・インターナショナルとともにアドボカシー活動に取り組むプラン・ユースグループは、「ユースがパートナー間で対等な関係を築くためには」という調査報告書を発表しました。
性的関係を含むパートナーとの関係構築の実態を調査
2021年にプラン・ユースグループが実施した、「包括的性教育※1」に関する調査※2では、ユース(国連による定義では15~24歳の若者)は「恋人との良い関係の築き方」について、学校で学ぶ機会が限られているものの、もっと学びたいと考えていること、なかでも避妊に関する知識をもっと具体的に身につけたいと考えていることが明らかになりました。今回の調査では、日本の若者たちが、性的関係を含め、パートナーとどのような人間関係を築いているのかを知るために、21~24歳までの男女5人にインタビュー調査を実施しました。
- ※1. 包括的性教育とは:ユネスコの定義では、「包括的性教育」とは、「妊娠、避妊、性感染症という限定的な生殖教育だけでなく、人間の尊厳や他人を尊重することなどを網羅的に学習するための教育」を指します。セクシュアリティ、人権、お互いが幸せである対人関係、価値観の尊重、暴力(性暴力を含む)の防ぎ方、LGBTIQ+の人々への偏見や差別をなくすことも、包括的性教育に含まれます。
- ※2. プラン・ユースグループ、「ユースから見た日本の性教育の実態調査報告書」(2021)
インタビュー調査から見えてきたこと
インタビューでは、ジェンダー観に加え、「パートナーとの平等な関係性とは何か」「実際に平等な関係を築けているか」などの質問を行いました。そのうえで、「性行為も含めた人間関係づくりに関する価値観がどのように構築されているのか」、また、「健全な人間関係を築くためには学校教育に何が求められているのか」について考察しました。
ジェンダー役割への期待が、対等な関係を築きにくくしている
経済面での理想的な関係について聞いたところ、代表的なものとして「女性のパートナーを養いたい」(男性)、「男性が多く稼いでいる場合は女性より多く払ってほしい。パートナーにかける金額が愛情に比例する」(女性)という回答がありました。男女ともに、「男性は女性に奢るべき」、「男性はお金を多く稼ぐべき」といった役割を男性に求める傾向がありました。こうしたジェンダー役割に関する期待は、対等な男女関係を築きにくい原因の一つと言えそうです。
恋愛や性を含めたパートナーとの悩みは友人に相談
インタビューでは、恋愛や性行為など、パートナーとの関係について相談する相手として、「友人」を挙げた人が多くいました。友人との対話が、ジェンダー観を含めた価値観を形作るうえで影響を与えている可能性がうかがえました。友人からのアドバイスが、先入観や偏見に基づく根拠のない情報によるものであれば、その後の判断や行動に負の影響をもたらすことも考えられます。性的な話題や問題について友人に相談する、また友人から相談を受ける機会が多いユース世代の一人ひとりが、科学的にも正しい知識を持つことがとても重要です。
性的同意を含むコミュニケーションや避妊の必要性を認識
性的同意についての質問では、インタビュー参加者全員が、「性的同意は重要」と回答しました。また、避妊についても、パートナーとのコミュニケーションが大切であると認識しています。一方で、「相手に合わせて性行為をしている」(女性)という回答もありました。性的同意をとること、避妊に関する配慮をすることの大切さについて、ユース世代へのさらなる啓発が必要と考えられます。
今回のインタビュー調査に参加してくれた5人のユースは、概ねパートナーと良好な関係を築いていました。一方で、理想として挙げられた関係性からは、男女双方が互いに期待するジェンダー役割も垣間見えました。そのことが、対等な関係の構築や、性的同意や避妊の問題においても影響を及ぼしていると言えます。
「包括的性教育」の導入をはじめとするユースの提言
プラン・ユースグループは、パートナーとの対等な関係構築において、教育が果たす役割についても考察しました。現在の日本の教育現場では、性教育のなかで生理や妊娠、避妊や性感染症についての知識を学ぶことに重きが置かれ、人権尊重や良好な人間関係の築き方、性と生殖に関する健康と権利などを十分に学ぶ機会はありません。「包括的性教育」の完全導入・促進が不可欠です。今回の調査結果を踏まえた、ユースから教育機関・関係者にむけた提言は以下の通りです。
ユースからのおもな提言
- 多様性に配慮し、特定の偏った価値観を子どもに押しつけない人権教育を拡充してください
- ユースが対等な関係性を持って安全で幸福な形の性行動をとるために、平等なジェンダー観を構築する性教育を行ってください
- ユースが性的同意を実行し、自分にあった避妊法を正しく実践できるように、性的行為を安全に行うための実践的なスキルを教えてください
プラン・ユースグループ メンバーの声
渡辺さん(大学1年生、報告書の編集を担当)
調査を通して印象に残っているのは、回答者が性に関して意識下、及び無意識下での葛藤を抱いていたということです。世間が期待するジェンダー像と自分の理想像のギャップによる葛藤や、性的同意や避妊は重要だと認識しつつも口頭でコミュニケーションをとる難しさを感じる葛藤などです。これは生の声を汲み取るインタビュー調査だからこそ見えてきた部分だと思います。今後の活動では、性に関して葛藤を抱えるユースが、自信を持って行動し自分もパートナーも大切にできる関係性を築くために、この報告書をどのように活用できるかを検討していきたいです。また、ジェンダー課題解決の過渡期とも思われる現在、一人の人間としてどのような行動が正しいか、どのような姿勢を大切にしたいかを模索しつつ日々を過ごす私自身、今回調査に関われたことを本当に感謝しています。
久保さん(社会人)
皆さんは、恋愛やパートナーとの悩みを抱えた時どんな行動をとるでしょうか。今回インタビュー対象者の多くが、性の悩みがあった際「友人に話す」と回答しています。周囲に話を聞いてくれる存在がいることは素晴らしいことです。しかし、もしその友人が誤った知識や不確実な情報を示してしまった場合、特に若い世代の場合は知識や経験が浅いために事態を悪化させてしまうかもしれません。性行為におけるトラブルに関しては、自分ひとりでは解決できないデリケートな問題です。だからこそ、人から聞いた情報や、検索して偶然ヒットした情報をただ鵜呑みにするのではなく、一人ひとりがどんな時も自ら正しく判断できるようにするためにも、若いうちからのユースに寄り添った包括的性教育や、身近な相談窓口が必要です。私はこの調査が、これからの性教育を担う第一歩に、そして少しでもユースがパートナーとのより良い関係を築くきっかけになってくれたら嬉しいです。
横山さん(大学2年生)
ジェンダー平等を達成しようとするとき、男女間における関係づくりにおいて感じる身近な疑問や問題意識から、今回の調査に至りました。実際のインタビューからは、対等な人間関係を築くうえで、ユースが何をもって不足と感じているのか、本音の部分を聞けたのではないかと思います。5人のケースから見えてきた社会的な風潮や雰囲気を形成するさまざまな要因の背景には、育った環境や、男女の考えの違いが共有されていないことがあると学びました。まずは、その「違い」を知ろうとすること、理解し合うことか大切だと感じています。そして、最終的には段階的な性教育の導入により、格差なく私たちが当たり前に知識を得られる土壌をつくりたいと思います。これからも、時代に合わせて考えをアップデートし続けられる社会づくりに貢献していきたいです。
プラン・ユースグループは、今後もユースが直面する課題に当事者として向きあい、調査や提言活動を通じて、誰もが自分らしく生きられるジェンダー平等な社会の実現に貢献していきます。
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