(2026年10月08日更新)
- 人身売買(人身取引)とは何か、世界で起きている被害の現状
- 性的搾取や強制労働など、子どもや女の子が直面する人身取引の事例
- 貧困や教育機会の不足、紛争など、人身取引が起きる背景と原因
- 人身取引から子どもや女の子を守るための取り組みと、私たちにできること
世界では今も、性的搾取や強制労働などを目的とした人身売買(人身取引)によって、多くの人々の自由や尊厳が奪われています。なかでも、貧困や差別、教育機会の不足などによって弱い立場に置かれやすい子どもや女の子は、被害に遭うリスクにさらされています。
人身売買はなぜ起こり、どのような被害をもたらしているのでしょうか。この記事では、人身売買の意味や世界の現状、子どもや女の子が被害に遭いやすい背景、実際に起きている搾取の事例を紹介するとともに、人身売買を防ぐための取り組みや、私たちにできることについて解説します。

人身取引から保護された女の子(インド)
もくじ
人身売買とは何か?
「人身売買※」とは、搾取を目的として、暴力、脅迫、誘拐、詐欺、権力の乱用をすること、または相手の立場につけこんで人を獲得、輸送、引き渡すなどの行為を指します。
その搾取の目的は、性的搾取、強制労働、奴隷化、臓器摘出など、多岐にわたります。これは現代社会における重大な人権侵害です。
- ※近年、日本政府や国際機関では、より包括的な概念として「人身取引」という語を用いています。この記事では以降、原則として「人身取引」と表記し、必要に応じて「人身売買」を補足します。

人身取引の定義
「人身取引」とは、「国際的な犯罪組織の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書」第3条において定義され、「搾取」を目的とし、暴力等の「手段」を用いて、対象者を獲得するなどの「行為」をすることをいいます(被害者が18歳未満の児童の場合は「手段」は不要です)。
世界でどれくらいの被害が起きているのか
人身取引は、遠い国や過去の出来事ではなく、現代においても世界中で多くの人々が苦しんでいる深刻な社会課題です。
国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、2022年に世界で確認された人身取引被害者数は約7万4,000人にのぼり、新型コロナウイルス感染症の拡大以前(2019年)と比べても25%増加しています。
また、被害者の内訳は特に女性や子どもが多く、女性が39%、子ども(男女)が38%を占めています。しかしながら、人身取引の実態は発見されにくく、この数字は把握された被害の一部に過ぎないと考えられています。
- 出典:Global Report on Trafficking in Persons 2024GLOTIP2024_BOOK.pdf
なぜ女の子がターゲットにされやすいか
世界中で、子ども、特に女の子は人身取引のターゲットにされやすい傾向にあります。「女の子だから」という理由だけで、性別による差別や固定的な性別役割の影響を受け、教育、経済的自立、健康的な成長の機会が失われています。
貧困や社会的な差別の影響を受けやすく、その結果として生まれる「情報や支援につながりにくさ」「安全な働き口の選択肢の少なさ」といった脆弱さが、人身取引につけこまれる原因となることがあります。
家族を養うため、または「良い仕事がある」という甘い言葉に騙されて故郷を離れ、知らない土地で頼れる人がいない状況に置かれることで、結果として人身取引の被害に遭うケースが後を絶ちません。
世界の子ども・女の子が直面する人身売買の例
事例①:性的搾取
女の子の人身取引では、性的搾取を目的とする被害が多く確認されています。
UNODCによると、2020~2023年に世界で把握された性的搾取目的の人身取引被害者の28%が女の子でした。被害には、売春を強要されたり、性的な画像・動画の制作や撮影を強制されたりするケースなどがあります。
また、過去と比較して、性的搾取を目的として人身取引される女の子が増えているとも指摘されています。被害者は、借金を負わされたり、身分証明書を取り上げられたり、本人や家族への危害をほのめかされたりすることで、搾取される状況から逃れることが困難になる場合があります。

子どもの人身取引の危険について警告する掲示(カンボジア)
事例②:強制労働(子どもの労働搾取)
人身取引の被害は、性的搾取だけではありません。強制労働を目的とする人身取引も多く確認されており、子どもたちも被害に遭っています。
人身取引の被害に遭った子どものうち、男の子は女の子に比べ、強制労働を目的とする人身取引の割合が高い傾向があります。被害は農業、漁業、製造業、建設業など、さまざまな産業で発生しています。
長時間の労働を強いられたり、賃金がほとんど、あるいはまったく支払われなかったり、危険な環境で働かされたりするケースもあります。
また世界各地では、衣類やカーペット、農水産物、花火など、さまざまな製品の生産に児童労働や強制労働が関わっていることが報告されています。
事例③:臓器売買やその他の搾取
人身取引の目的は、性的搾取や強制労働だけではありません。詐欺などの犯罪行為や物乞いを強要されたり、強制的に結婚させられたり、臓器摘出の対象にされたりするなど、さまざまな形態の搾取が確認されています。
近年では、詐欺などの犯罪行為を強要することを目的とした人身取引も確認されています。被害者自身が犯罪行為に加担することを強いられるため、被害者であるにもかかわらず、犯罪者として扱われる危険もあります。こうした人身取引は、被害者の自由や尊厳を奪い、心身に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
人身売買が起きる背景と原因
貧困、教育機会の不足、社会的要因
人身取引の被害に遭うリスクを高める要因のひとつに、貧困や経済的困窮があります。
生活に必要な収入を得ることが難しい状況では、子どもが家計を支えるために働かざるを得なかったり、「高収入の仕事がある」「海外で働ける」といった誘いを受け入れざるを得なかったりすることがあります。人身取引の加害者は、こうした困窮した状況につけ込み、被害者を勧誘・搾取することがあります。
教育を受ける機会が限られていることも、人身取引への脆弱性を高める要因のひとつです。十分な教育を受けられないことで、将来の就労や収入を得る選択肢が狭まり、危険な労働や移住の誘いを受け入れざるを得ない状況に置かれることがあります。
さらに、ジェンダーによる不平等や差別、移民など社会的に弱い立場に置かれた人々の権利が十分に守られない状況、不当な雇用慣行なども、人身取引への脆弱性を高める要因となります。

人身取引の危険性について理解を深めるための教育活動(ネパール)
紛争・災害時に高まるリスク
戦争や紛争、自然災害によって生活基盤が失われることも、人身取引のリスクを高める要因となります。住居や収入源を失い、安全な場所や仕事を求めて移動する中で、仕事や支援を装った勧誘などにつけ込まれる危険があります。
特に、保護者と離れた子どもや、避難によって家族・地域とのつながりや収入源を失った人々は、より脆弱な状況に置かれることがあります。紛争や災害そのものが人身取引を直接引き起こすというよりも、それによって生じる避難、貧困、家族との離別、社会的保護の弱まりなどが、人身取引の加害者に悪用される危険を高めます。
人身売買に対するプラン・インターナショナルの取り組み
人身取引から子どもたちを守るためには、被害に遭った子どもを保護するだけでなく、再び被害に遭わずに生活できるよう自立を支え、人身取引が起こりにくい地域社会をつくっていくことが重要です。
プラン・インターナショナルは、「子どもの権利」と「ジェンダー平等」を推進する国際NGOとして、世界各地で人身取引や児童労働などの搾取から子どもたちを守る活動に取り組んでいます。特に、貧困やジェンダーに基づく差別などによって、より困難な状況に置かれやすい女の子への支援を重視しています。

ブルキナファソで「女の子が売られない社会づくり」を支援
西アフリカのブルキナファソでは、長らく国内や近隣国への子どもの人身取引が問題となっていました。「よい仕事がある」「教育を受けられる」といった言葉に誘われた子どもたちが、金採掘場や農場、雇用主の家などで労働搾取を受けるケースがあります。
特に女の子は、性的搾取の被害に遭うリスクにもさらされています。こうした状況を受け、プラン・インターナショナルは2019年7月から2022年6月まで、ブルキナファソ南西部で「女の子が売られない社会づくり」プロジェクトを実施しました。

美容の実習に参加する女の子(ブルキナファソ)
プロジェクトでは、人身取引から救出された子どもたちを保護し、家族のもとへ帰るための支援を行うとともに、それぞれの希望や適性に応じた職業訓練を実施。自ら収入を得て生活できるようになることは、子どもたちが再び経済的に困難な状況に陥り、人身取引の被害に遭うことを防ぐことにもつながります。
3年間の活動を通じて、人身取引から救出された106人の子どもに保護・帰還支援を行ったほか、人身取引の被害に遭うリスクが高い若者や被害から救出された人など191人に職業訓練を実施しました
被害に遭った子どもを支えるだけでなく、人身取引を防ぐ地域づくりへ
人身取引をなくすためには、被害に遭った一人ひとりを支援するだけでは十分ではありません。子どもや家族が人身取引の危険性を知り、地域全体で子どもを守る仕組みをつくることも必要です。
ブルキナファソでのプロジェクトでは、子どもたちへの人身取引に関する啓発活動に加え、コミュニティの住民や市民団体、行政関係者などへの働きかけも行いました。ラジオ放送や住民集会、子ども向けの研修などを通じて人身取引の危険性を伝えたほか、政府関係者や警察、司法関係者なども参加して、人身取引への対応について話し合う機会を設けました。

人身取引について話し合うコミュニティ集会
また、人身取引の防止につながる出生登録も支援。プロジェクト期間中には500人の子どもの出生登録を後押ししました。こうした活動を通じて、子どもたち自身が危険を知ること、被害に遭った子どもを適切な支援につなげること、そして地域や行政が一体となって子どもを守ることを目指しました。
人身売買を減らすために私たちができること
人身取引は、貧困やジェンダーによる不平等、教育機会の不足、紛争など、さまざまな問題と複雑に関係しています。そのため、ひとつの方法だけで解決できる問題ではありません。
一方で、人身取引について正しく知ることや、子どもや女の子が搾取される背景に目を向けること、そうした課題に取り組む活動を支援することなど、私たち一人ひとりにもできることがあります。
人身取引の背景にある問題への支援
人身取引を防ぐためには、被害に遭った人を保護するだけでなく、子どもや女の子が搾取されやすい状況そのものを変えていくことも重要です。
プラン・インターナショナルでは、世界各地で子どもや女の子の権利を守る活動を行っています。
例えば、早すぎる結婚(児童婚)の防止、ジェンダーに基づく暴力から女の子を守る活動、教育機会の提供、生計向上支援などを通じて、子どもや女の子が自分の人生を選択できる環境づくりに取り組んでいます。
「プラン・グローバルサポーター」は、こうした女の子や子どもたちが直面する課題に取り組むプロジェクトを支える、月1,500円からの継続寄付です。寄付は、支援を必要とする地域で実施されるさまざまなプロジェクトに活用されます。
また、継続寄付だけでなく、1回限りの寄付という方法もあります。

自分に合った方法で、世界の子どもや女の子を取り巻く課題の解決に参加することができます。
寄付以外にもできること
人身取引を減らすためにできることは、寄付だけではありません。まずは、人身取引がどのように起こり、どのような人々が被害に遭っているのかを知ることが第一歩です。信頼できる情報を家族や友人と共有したり、SNSなどを通じて広めたりすることで、これまで問題を知らなかった人が関心を持つきっかけをつくることができます。
また、私たちが日々購入している衣類や食品などが、どのような労働環境でつくられているのかに関心を持つことも大切です。企業の人権への取り組みを確認したり、フェアトレード認証などをひとつの手がかりとして商品を選んだりすることも、消費者としてできる行動です。

人身取引は遠い国だけで起きている問題ではありません。まずは知ること。そして、日々の選択や支援を通じて、子どもや女の子が搾取されることなく、自分の未来を選べる社会を後押ししていくことが大切です。
女の子や子どもが安心して生きられる世界へ
人身取引は、性的搾取や強制労働などを目的に、人の自由や尊厳を奪う深刻な人権問題です。その背景には、貧困やジェンダーによる不平等、教育機会の不足、紛争など、さまざまな要因が複雑に関係しています。なかでも、社会的・経済的に弱い立場に置かれた子どもや女の子は、こうした状況を悪用した人身取引の被害に遭うリスクにさらされています。
人身取引をなくしていくためには、被害に遭った人を保護するだけでなく、子どもたちが教育を受け、自分の将来を選択できる環境を整えること、女の子への差別や暴力をなくすこと、そして地域や社会全体で子どもの権利を守ることが大切です。

プラン・インターナショナルは、世界各地で子どもの権利を守り、女の子が差別や暴力、搾取から守られ、自分の人生を自分で選択できる社会を目指して活動しています。
まずは、人身取引について知ることから。そして、できることから行動につなげていくことが、すべての子どもたちが安心して成長し、未来を選べる社会への一歩になります。
人身売買・人身取引に関するよくある質問
運営団体
国際NGOプラン・インターナショナルについて
国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに世界80カ国以上で活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。









