(2026年01月08日更新)
この記事では、移民と難民の違いをわかりやすく解説し、世界で移民・難民が増加している背景や直面する課題を紹介しています。紛争や貧困、災害などにより移動を強いられる人々の現状や、特に子どもや女の子が受ける影響、人道支援の重要性について理解を深めることができます。
もくじ
移民と難民の違いとは?
移民と難民はどう違うのでしょうか。どちらの場合も、人々が国籍国である本来の居住地を離れ、別の地で暮らすことを指します。
しかし、移民と難民は別のものではなく、移民の一部に難民が含まれているのです。ここでは、移民と難民の意味や違いを詳しく解説していきます。

ベネズエラから避難する家族
移民の定義
移民には、国際法で定められている定義はありませんが、国際移住機関(IOM)によれば、「国内または国境を越えて、一時的または永続的に、さまざまな目的で通常の居住地から離れる人
」※と表現されています。
難民の定義
難民とは、難民条約※1で「人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々
」※2と定義されています。
また、国内の紛争によって、居住地を失い、自国内で避難を強いられている国内避難民と呼ばれる人々もいます。国内避難民は難民の定義から外れるため、国際条約上の保護の対象になりません。
- ※1難民条約とは「難民の地位に関する条約」(1951年)「難民の地位に関する議定書」(1967年)の2つをあわせたものを指し、難民の権利や受け入れ国の義務が明示されている明示されている。
- ※2「難民とは?」(UNHCR Japan)

紛争で難民となった南スーダンの人々(スーダン)
第三国定住とは?
第三国定住とは、難民が最初に避難した国で保護を受け入れられない場合、他国(第三国)へ移住することです。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、第三国定住の候補になるには以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 申請者がUNHCRにより難民認定されていること
- すべての恒久的解決策についての見通しの評価が実施され、その結果第三国定住が最適な解決策であることが確認されていること
- ただし、難民ではないが第三国定住が最適な恒久的解決策と考えられる無国籍者の場合や、難民ではないが特定の扶養家族との家族の結合を維持するために第三国定住を行う場合は、これに当たらない
上記の条件をすべて満たしたうえで、難民の置かれている状況を調査し、第三国定住を申請すべき環境かどうかを受け入れ国が精査します。
庇護希望者とは?
居住地から他国に逃れて、その国での庇護を求める人を指します。公式にはまだ難民と認められていません。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、世界には庇護希望者が約540万人おり、なかには親や保護者とはぐれた子どもたちも含まれています。子どもたちの安全が確保され、人身取引の危険にさらされないように保護することが必要です。
世界の移民問題
移民の増加は、不法入国者の問題や、それによる治安の悪化など、受け入れ国にも何らかの影響を及ぼすことがあります。ここでは、ヨーロッパとアメリカの移民問題について紹介します。

ウクライナから避難する親子
ヨーロッパの移民問題
ヨーロッパでは、2015年に前年の倍以上となる何十万人もの移民や難民がヨーロッパ各国に流れ込む「ヨーロッパ難民危機」が発生しました。移民政策は各国により異なり、たとえば、ハンガリーでは2018年に移民支援を罰則化する「ソロス阻止法」※が可決。移民、難民の対応に厳しい政策を打ち出したため、難民申請が承認された件数は減少しました。一方でドイツは2022年の移民、難民の受け入れが130万人になるなど積極的な受け入れ姿勢を見せています。
- ※ソロス阻止法 ハンガリーの投資家ジョージ・ソロス氏が移民支援を行っていることに対し、政権が批判。国家安全保障を脅かすとし、法案を可決した。
アメリカの移民問題
アメリカは長年、世界有数の移民受け入れ国として多くの移民を迎えてきました。特に2023年には、不法移民※1の数が記録的に増加し、約1,400万人に達したと推計されています。こうした状況を受け、トランプ政権では国境管理や摘発が強化され、不法入国の取締りなどが進められました。その結果、2025年時点では移民人口は約5,190万人と依然高水準にあるものの
※2、人口に占める移民数の増加の勢いは弱まり、純流入は以前に比べ抑制される見通しです。移民の受け入れ数や政策は、今後も政権の方針によって変動すると考えられます。
- ※1不法移民とは 国境を越えた移民、難民が不法に他国へ入国し、在留資格を持たないまま、その国に留まっていること
- ※2Pew Research Center
日本の移民問題
日本では、人口減による労働力不足を補うため、一定の技能がある外国人労働者の受け入れを拡大しているものの、難民やそのほかの移住者を積極的に受け入れていません。
難民の受け入れは申請件数に比べ、認定される人は非常に少なく、2024年の難民認定の割合は約1.5%
※。他のG7加盟国と比べてかなり低いといえます。
難民認定数が極めて限られているうえ、申請手続き自体に数年、あるいはそれ以上の時間がかかります。この間、難民申請者は合法的に滞在し、自活のための仕事を見つけ、福祉支援サービスを利用するのが困難になる場合もあります。
- ※ 法務省
世界の難民問題
紛争や災害などさまざまな原因で多くの難民が避難を余儀なくされています。難民となった人々は周辺国に避難しますが、周辺国は難民支援が十分にできるほどの物資や予算を確保できず、難民は避難先でも飢餓や貧困に苦しんでいます。
国外へ逃れた難民の受け入れ国も低中所得国で、2024年時点でもっとも多くの難民を受け入れているのはイラン(350万人)、次いでトルコ(290万人)、コロンビア(280万人)です。アフガニスタン、シリア、ベネズエラからの難民をそれぞれ多く受け入れています
。
ここでは、世界の難民の事例をいくつか紹介します。
シリア難民
2011年3月に始まったシリア危機は12年経った今でも深刻な状況が続き、難民の数が増え続けています。2023年時点で約680万人の国内避難民、約536万人の難民がおり、人道支援を必要としている人は1530万人
※にものぼります。新型コロナウイルス感染症の流行や2023年2月にトルコとシリアの国境付近で発生したトルコ・シリア地震の影響で、もともと厳しかった人々の暮らしがさらに困窮しています。
- ※「シリア」(国連UNHCR協会)

難民キャンプで生活をするシリア難民の女の子(ヨルダン)
ロヒンギャ難民
2017年8月にミャンマーのラカイン州で起きた暴動と混乱が原因で、多くのロヒンギャの人々がバングラデシュに難民として逃れています。2023年2月時点で難民の数は95万人超で、そのうち半数以上が18歳未満の子どもです。また、5歳未満の子どもの10%以上は栄養不良状態にあり、子どもたちの生命が脅かされています。避難先のバングラデシュは自然災害の多い地域でもあり、雨季はモンスーンが発生し、難民キャンプでは大雨、洪水、地滑りなどの被害が頻発します。また、2023年3月にはバングラデシュ南部コックスバザール県の難民キャンプで火災が発生し1万6000人以上の人々が避難を余儀なくされました
※。
- ※「ロヒンギャ」(国連UNHCR協会)

ロヒンギャ難民キャンプで起きた火災(バングラデシュ)
南スーダン難民
2011年に独立を果たした南スーダンですが、その後も長期的に内戦が続いています。2013年には民族対立、2016年には政府と反政府間で衝突が発生し、アフリカ最大の難民危機と言われるようになりました
※1。2023年2月時点で南スーダン難民は232万人にものぼり、そのうち223万人が国内避難民、他はウガンダをはじめ、エチオピア、スーダン、ケニア、コンゴ、中央アフリカなどの周辺国に避難をしています。しかし、受け入れ国も貧困国であるため、約10人に1人の子どもが5歳未満で亡くなる
※2など、支援活動は逼迫しています。自然災害や食料不足で難民の生活は困窮する一方です。
- ※1「南スーダン 世界で最も急速に深刻化する人道危機」(国連UNHCR協会)
- ※2「南スーダン」(国連UNHCR協会)

布で簡易シェルターをつくる南スーダン難民
アフガニスタン難民
多民族国家であるアフガニスタンは、昔から紛争が頻発していました。1979年のソ連侵攻がきっかけで多くの人々が難民となりました。2022年6月にはアフガニスタン南東部で大地震が発生し、ますます支援が必要になっています。2022年12月時点で200万人の難民がおり、周辺国であるイランやパキスタンなどがアフガニスタン難民の90%近くを受け入れています
※。しかし受け入れ国においても干ばつによる食料不足や新型コロナウイルス感染症による社会経済の悪化で、危機的状況が続いています。
- ※「アフガニスタン」(国連UNHCR協会)
移民、難民のために私たちができること
世界で困難に直面している移民、難民のために私たちにできることは何でしょうか。ここでは2つの方法を紹介します。
①難民支援をしている団体、NPO法人へ寄付をする
難民支援に取り組んでいるNGO、NPOへの寄付は私たちにできることのひとつです。上記で紹介しているロヒンギャ難民の人々はミャンマーでも長らく差別を受けており、教育を受ける権利や自由に移動する権利を奪われていました。
バングラデシュ南部コックスバザール県のロヒンギャ難民キャンプで暮らす15~24歳の若者たちのほとんどは、読み書きや計算を学んだことがありません。そのため、詐欺や搾取に遭う危険が高い毎日を過ごしています。プラン・インターナショナルでは、若者たちが基本的なスキルを身につけ、将来の選択肢を増やせるようにロヒンギャ難民の若者たちへの識字教育を実施しています。

識字クラスの視察(バングラデシュ)
この活動はSDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」、目標16「平和と公正をすべての人に」の達成に貢献しています。
②移民、難民問題の情報を収集し、発信する
世界で起きている移民、難民問題への関心を持ち続け、情報を収集したり、発信したりすることも私たちにできることのひとつです。あなたの発信が誰かの目に留まり、関心を持つ人たちが増えることが国際社会を動かす第一歩になるかもしれません。
プラン・インターナショナルでは、活動地域の様子を動画で紹介しています。
ご覧いただき、感じたことをSNSなどで広めてください。
運営団体
国際NGOプラン・インターナショナルについて
国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに世界80カ国以上で活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。












