(2025年02月04日更新)
すべての人々は誰もが生まれながらにして自由で、平等で、幸福になる権利を持っています。しかしながら、世界には性別や性的指向、年齢、国籍、民族、宗教などに基づいたあらゆる差別が存在し、多くの人が不当な扱いを受けています。
持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)は、開発途上国だけでなく先進国も含めたすべての国が2030年までの達成を目指して取り組むべき17の目標と169のターゲットを定めた国際目標です。
ここではSDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」について、特に人種差別問題をテーマに詳しく解説し、企業のCSR活動に役立つ事例をご紹介します。

もくじ
SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」=人種などのあらゆる差別の根絶を目指す
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SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」は、2030年までにジェンダーや人種などのあらゆる差別の根絶を目指す目標です。この目標は、世界に存在するあらゆる不平等の是正や安全な正規の移住の確保、開発途上国の発言力促進など7つのターゲットで構成されています。
| 10.1 | 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。 |
|---|---|
| 10.2 | 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 |
| 10.3 | 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。 |
| 10.4 | 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。 |
| 10.5 | 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。 |
| 10.6 | 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。 |
| 10.7 | 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。 |
| 10.a | 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。 |
| 10.b | 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。 |
| 10.c | 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。 |
ターゲット目標10.2および10.3には、人種を含めたあらゆる差別の根絶が含まれています。「すべての人が能力を高め、社会的、経済的及び政治的に取り残されないようにすること」、「差別的な法律や政策、習慣を撤廃し、すべての人に平等な機会を与え、成果の不平等を減らすこと」です。差別は所得や教育の格差、不平等を生む要因のひとつ であり、世界の持続可能な発展を阻害しています。
なかでも人種差別は、人類の長い歴史のなかで古くから存在しています。人種を理由にした差別や偏見は、人の心に深く根ざし、発言や行動を大きく左右するものです。そのために親から子へと、次の世代へ受け継がれてしまうケースが多くみられます。そういった点からも、あらゆる差別のなかでも特に改善が難しい問題といえるものです。ここでは人種による差別について、詳しく解説していきます。
世界で起きた人種差別に関する問題の具体例
世界各地で、さまざまな人種差別問題が起きています。自らと異なる人種の人々に対し、優位な立場を築こうとして差別を行う行為は、歴史のなかで繰り返されてきました。その背景には、奴隷制度、植民地主義、アパルトヘイトといった、長く根深い歴史が存在します。以下に、世界で発生した人種差別の代表的な事例を見ていきましょう。
例① アパルトヘイト
「アパルトヘイト」とは、アフリカーンス語で「分離・隔離」を意味する言葉で、1948年から1994年まで南アフリカ共和国で実施された人種隔離政策のことです。白人少数派による政府が、白人(特にアフリカーナー)の優位性を維持するため、非白人(特に黒人)を差別・抑圧するさまざまな法律を制定しました。これらの法律によって南アフリカでは人種差別が制度化されていましたが、国連による働きかけや国際社会からの制裁や孤立、国内の反アパルトヘイト運動の高まりなどにより、1994年に完全撤廃されました。アパルトヘイト政策の根幹をなしたのは、主に以下の3つの法律です。

警察の発砲で犠牲者となった黒人少年の記念碑(南アフリカ)
原住民土地法
黒人が土地を所有・借りることを厳しく制限し、彼らの経済的基盤を奪いました。
異人種間結婚禁止法
白人と他人種との結婚を禁じ、人々を強制的に分断しました。
隔離施設留保法
人種別に居住区を割り当て、他の人種の地域に住むことを厳しく規制しました。
例② ホロコースト
1933年にヒトラーがドイツで政権を握って以降、第二次世界大戦中にナチス・ドイツ政権とその同盟国や協力者によって行われた、組織的なユダヤ人の迫害および大量虐殺のことです。ヨーロッパに古くから根づいていたユダヤ人に対する偏見がその基盤となり、ナチスの反ユダヤ主義として極端に発展しました。この悲劇は、1945年に連合軍がナチス・ドイツを降伏させるまで続き、強制収容所を含む各地で約600万人が犠牲になったと言われています。人類史上最悪の人権侵害のひとつとして、同じ悲劇を繰り返さないように今も世界各地で語り継がれています。

アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所(ポーランド)
例③ アイヌの人々の人権問題
日本国内では、同和地区の出身であることを理由に差別を受ける同和問題(部落差別)と呼ばれる人権問題が古くから存在しています。また、独自の言語や文化、生活習慣を持ち、日本列島北部周辺や北海道に多く暮らす先住民族であるアイヌ民族に対する差別問題も挙げられます。
明治政府は、アイヌの文化や習慣を禁じ、日本語の学習を奨励する同化政策を推進しました。その結果、土地の没収や狩猟の禁止などによってアイヌ文化は深刻な打撃を受けることになります。1899年には「北海道旧土人保護法」という保護をうたいながらも極めて差別的な法律が施行され、これは1997年に「アイヌ文化振興法」が施行されるまで続きました。以降、国は国立の文化施設を設置し、アイヌ文化の研究や継承を進めていますが、見た目の違いなどを理由に学校でいじめを受けたり、結婚や就職で不利になったりする不当な差別は今も続いています。
少数民族・先住民族に対する差別は、日本だけでなく、アジア、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパなど世界中で今なお起きている深刻な問題です。
例④ ジョージ・フロイドさん暴行死事件
2020年5月、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで白人の警察官が黒人男性のジョージ・フロイドさんを不当に逮捕し、首を圧迫して死に至らしめた事件です。その場に居合わせた人が撮影した動画は世界に大きな衝撃を与えました。この事件は、2012年2月にフロリダ州で黒人の高校生が射殺され、翌2013年に加害者が無罪となったことを契機に始まったBlack Lives Matter(BLM)運動と連動し、世界的な大規模抗議運動へと発展しました。
人種差別をなくすためにできること
世界のあらゆる場所で起きている人種差別。その背景には複雑な歴史的・社会的な要因がありますが、どのような差別もあってはならないことです。人種差別をなくすために、私たち一人ひとりに何ができるのか、一緒に考えてみましょう。
自分のなかにある人種へのステレオタイプに気づく
私たち人間は、意図せずとも自分とは異なる人々(集団)に対して、何らか偏見を持っている場合が多いと言われています。まずは、無意識のうちに心に刷り込まれている偏見やステレオタイプがないか、客観的に振り返ってみましょう。また、自分の発言が差別につながっていないか、マスメディアやSNSの情報を鵜呑みにしていないか、常に注意を払うことが大切です。

人種差別に反対しよう
人種に関する偏見を次の世代に受け継がせない
子どもは、身近な大人の言動から多大な影響を受け、そこから学びます。そのため、子どもの人種差別意識は、いじめという形で表面化することが少なくありません、次の世代を担う子どもたちが、性別や人種に基づく偏見や固定観念といった差別意識を持たないようにするには、私たち大人が正しい知識と態度を示すことが重要です。差別につながる可能性のある発言や誤った考え方を見直し、日々の生活のなかで改めていくことこそ、人種差別問題を解消するための大きな一歩です。
人種差別の解消がSDGsの達成の鍵
人種差別によって生じる不平等は、教育・就業・医療・社会保障など、さまざまな分野で格差をもたらし、貧困などの深刻な社会問題につながります。誰もが平等に扱われなければ、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」世界を実現することは難しく、人種差別の解消こそがSDGs達成の鍵と言えるでしょう。

栽培研修を受ける先住民族(エクアドル)
2017年に日本に住む外国人を対象として行われた調査では、「いやな視線を向けられた(知らない人からじろじろ見られた)」と回答した外国人が30%を超えており、経験した差別のなかで最も多い事例
でした。見ていた側に差別の意識がなくても、見られた側は差別と感じることがあります。自分が差別を受ける立場だったらどう感じるか、相手の立場を理解し配慮することが、人権を尊重するうえで重要です。
プラン・インターナショナルは、世界の少数民族・先住民族などへの人種差別をなくすため、意識啓発や、国際社会・政府・地域行政への働きかけを積極的に行っています。一人ひとりが等しく尊重され、機会を得られるようにすることは、小さな社会である企業にとっても不可欠な取り組みではないでしょうか。
多様な従業員を抱える企業が、差別や偏見のない社会を実現しようと行動することは、多くの人々の意識を変える力となります。私たちと一緒に、差別解消に向けた課題に取り組んでいきませんか?

少数民族の女の子たち(ベトナム)
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国際NGOプラン・インターナショナルについて
国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。










