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SDGs目標16の実現に向けた取り組みとは?世界や日本の現状

(2025年09月29日更新)

私たちの社会がより平和で公正なものになるためには、依然として解決すべき課題が山積しています。世界では武力紛争や内戦が後を絶たず、難民や人身取引(人身売買)の被害者も急増しています。一方、日本国内でも、児童虐待や家庭内暴力(DV)といった問題が深刻な状況です。

SDGsの目標16は、すべての人が公正・公平に扱われ、安全で暴力や差別のない社会を築くことを目指しています。ここでは、世界と日本の現状を交えながら、目標16達成への道筋を探り、それぞれの課題に対する具体的な取り組みや企業が果たすべき役割についてご紹介します。

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SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」とは

はじめに、目標16の概要や、達成に向けて設定されているターゲットについてご紹介します。

SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」の概要

SDGsのなかでも重要な位置づけにある目標16は、世界中のあらゆる地域で暴力をなくし、すべての人々が紛争や犯罪の恐怖を感じることのない、安心して暮らせる平和な社会の実現を目指しています。また、法律やルールに基づき、誰もが差別されることなく平等に扱われる機会を得られる公正な社会の形成を目的としています。

貧困の解消や教育の普及、環境保護など、多岐にわたる課題を解決するためには、まず社会が平和で公平であることが不可欠です。それが、目標16がSDGsの他のすべての目標の達成に関わる「土台」と位置づけられている理由です。

そして、目標達成に向かう道筋は、具体的な12のターゲット(行動目標)として設定されています。

目標16のターゲット

この12のターゲットは、子どもへの暴力や虐待といった個人の人権を守るものから、汚職や贈収賄の防止、透明性の高い制度づくりといった社会全体の仕組みに関するものまで、平和と公正に向けて幅広い領域を網羅しています。

16.1 あらゆる場所において、全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
16.2 子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
16.3 国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、全ての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
16.4 違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16.5 あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
16.8 グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16.9 全ての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
16.10 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
16.a 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
16.b 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。

SDGs目標16の達成に向けた現状と課題

目標16「平和と公正をすべての人に」を達成することは、サステナブルな社会の構築において非常に重要な鍵となっています。しかし現状を見ると、この目標を実現するには多くの課題が残されているのが実情です。その中心にあるのは、世界各地で続く紛争や人権侵害、そしてそれらの影響による難民や民間人への被害の深刻化です。

破壊された自分の家で洗濯物を干す女性(パレスチナ)

世界の現状:紛争や人権侵害は続いている

紛争と増え続ける難民

現在、武力衝突が続く紛争地域が世界各地に広がり、その結果として強制的に避難を強いられた人々の数は増加の一途をたどっています。2024年末、世界の難民・避難民の数は、前年より約700万人増加し、1億2,320万人に達しました。この深刻な状況の背景には、スーダンの武力闘争、ロシアとウクライナ間の紛争の長期化、シリアでの情勢不安など、複数の要因があります。

破壊された小学校(ウクライナ)

これらの紛争の影響は被害者数の急増にも表れています。約5万人もの人々が2024年に紛争によって命を落としたとされ、そのほとんどが民間人です。民間人被害は、2023年と比べて約40%増加しており、3年連続で増加しています。なかでも子どもや女性への影響は特に深刻で、犠牲者数はこの2年間で4倍に増加し、その多くがガザ地区で発生しています。こうした数字は、紛争がより悲惨で長期化している現状を物語っています。

急増する人身取引(人身売買)の被害者

世界的に人身取引の被害者数は増加傾向にあり、その矛先が最も向けられているのは子どもたちです。2022年に摘発された世界の人身取引の被害者のうち38%が子どもというデータがあります。2004年の13%と比べると、約20年で大幅に増加していることが浮き彫りになりました。

特に中米、カリブ海地域、サハラ以南および北アフリカでは、子どもが人身取引の主要な標的となっている割合が非常に高く、検出された被害者の約60%が子どもという報告もあります。経済格差、教育機会の不足、法の支配の脆弱性が複合的に作用し、犯罪ネットワークの温床を形成しているケースが多いとされています。

プランの支援で出生証明を受け取った子ども(カメルーン)

日本の現状:身近に潜む「不公正」

平和や公正という理念は、日本では比較的実現されていると認識されがちですが、実際には目に見えないところでそれに反する状況が存在しています。

なかでも子どもへの虐待問題は依然として深刻な課題です。身体的・性的・心理的虐待、さらには児童買春など、多様な形態で子どもたちが被害にさらされています。その対応状況を示すデータも増加傾向にあり、令和5年度の児童相談所における児童虐待相談対応件数は22万5,509件と過去最多を記録しました。

そのほかにも、家庭内暴力(DV)や外国人労働者の人権問題、ジェンダーギャップなど、多岐にわたる不公正の課題があります。これらは単なる個別事例ではなく、社会的な不均衡や偏見が絡み合う構造的な課題と言えます。平等な機会と公正な制度の実現には、より多くの公共サービスの整備や啓発活動などによる社会構造の是正が必要となるでしょう。

SDGs目標16達成に向けて私たちにできる具体的な取り組み

目標16「平和と公正をすべての人に」の実現には、私たち一人ひとりの行動とともに、企業の取り組みが大きな役割を果たします。企業活動のなかで職場環境の改善や地域社会の発展に貢献することは、平和と公正の実現に寄与します。ここでは、私たちができる具体的な取り組みを解説します。

企業ができる取り組み

公正な労働環境を整備する

最も基本的な取り組みのひとつは、企業内で公正な労働環境を整備することがあります。これには、社内でのハラスメントや偏見、差別を防止するための運動を進めることが含まれます。すべての従業員が、国籍や性別、信条にかかわらず平等に扱われる職場環境を構築することは、目標16が掲げる「公正な社会」の実現に直結します。従業員向け教育研修の実施や公平な評価制度の導入など、働く人々が安心して能力を発揮できる環境を整えることは、企業全体の推進力にもなるでしょう。

サプライチェーンに責任を持つ

企業が関与する製品やサービスを供給する取引先(サプライヤー)が、児童労働や強制労働、人権侵害などの問題を引き起こしていないかを確認することも、目標16への取り組みの重要な側面です。倫理的かつ責任ある調達方針を徹底することは、社会的信頼を築く基盤にもなり、事業リスクの管理やブランド価値の向上にも寄与します。

地域社会に貢献する

地域の清掃活動や防災訓練への参加、子ども食堂への協力などは、地域とのつながりを深める取り組みです。さらに人道支援団体や難民支援団体への寄付などの活動を通じて、平和な社会づくりに貢献できます。

個人ができる取り組み

声を上げて相談する

虐待やハラスメント、差別といった不当な行為を見聞きした際に、見て見ぬふりをせず、適切な窓口に相談・通告することは、平和と公正を支える最も直接的で重要なアクションのひとつです。もし児童虐待を目撃した場合には、児童相談所全国共通ダイヤル「189」へ。その行動が、誰かの命や尊厳を守るための第一歩となります。

政治に関心を示す

社会のルールや仕組みを決める政治に参加することは、平和と公正を築くうえで不可欠です。選挙に参加し、信念に基づいて投票することは、自分の意思を社会に示す明確な方法であり、より良い未来を築くための基盤になります。

考えて選び、支援する

日常生活のなかで、よりよい選択をすることで目標16に貢献する方法もあります。手に取る商品が私たちに届くまでに、どのような労働環境や人権への配慮のもとで生産・流通されたのか。商品本体だけではなく、その背景にも関心を持ちましょう。フェアトレード製品などを選ぶなど倫理的な消費を心がけ、実践することは、より公正なビジネスを支援することになります。

また、信頼できるNPOやNGOへの寄付やパートナーシップを通じて、支援を必要とする人々や地域を支えることも私たちにできる重要な取り組みです。

SDGs16「平和と公正をすべての人に」の実現に向けた取り組み事例

不公正な状況を解消し、すべての人が安心して暮らせる社会の実現に向けて、世界各地でさまざまなプロジェクトが行われています。私たち国際NGOプラン・インターナショナルが実施する具体的な取り組みをご紹介します。それぞれの事例が、地域に根ざした課題を解決する道筋を示し、平和と公正な社会を実現するためのヒントになるのではないでしょうか。

インドにおける「暴力の被害にあった女の子を守る」プロジェクト

活動地域の現状

インドでは、レイプ、性的虐待、ドメスティック・バイオレンス(DV)などのジェンダーに基づく暴力が頻発しています。被害にあった女の子たちは自身に非があったかのように不当な差別やさらなる暴力を受けたり、警察や病院でさえも人権を軽視した扱いを受けたりするなど、社会的に根深い問題となっています。なかでも性暴力に関する専門知識が不足しているため、ジェンダーに基づく暴力犯罪の有罪判決がわずか19%であるなど、捜査から裁判の過程にも多くの欠陥が見られます。

活動内容

被害を受けた女の子や女性の多くは、司法制度へアクセスする知識もなく、経済的困窮から有能な弁護士を雇用することもできません。また、加害者の男性が「結婚」することで罪を逃れようとし、家族が世間体を気にして結婚を認めてしまう場合もあります。プラン・インターナショナルは、被害を受けた女の子や女性が適切な裁判を受けるためのサポートやカウンセリングを行うことで、彼女たちが心身の健康を回復して社会に復帰し、自らの権利を実現できる人生を歩めるよう支援しています。

写真:トラウマケアの一環として子どもの保護施設でヨガをする女の子たち

トラウマケアの一環として子どもの保護施設でヨガをする女の子たち

「暴力の被害にあった女の子を守る」プロジェクトは、企業・団体マンスリーサポートを通じてご支援いただけます

ベトナムにおける早すぎる結婚(児童婚)防止プロジェクト

活動地域の現状

近年、高い経済成長が続いているベトナムですが、少数民族の大部分が暮らす遠隔地や山間部のマイノリティの子どもたちは、社会や経済の発展から取り残され国内の最貧層に位置づけられています。なかでも、北部のティエンクアン省やライチャウ省において、この地域に多く住むモン族が18歳未満で結婚する割合は51.5%と国内で最も高い数字となっています。さらに、18歳未満の女性の出産件数も全国平均の2.5倍に達しています。

活動内容

プラン・インターナショナルは、児童婚などの慣習から女の子を守り、弱い立場に置かれがちな女の子が尊重され、自分の人生を主体的に選択することができるよう、学生寮の建設・整備や、子ども、若者、保護者や教育関係者への児童婚防止の意識啓発と能力強化などを支援しています。

写真:ト早すぎる結婚の防止などに関するトレーニング

早すぎる結婚の防止などに関するトレーニング

この活動は、株式会社ファーストリテイリングが2022年にスタートさせたチャリティTシャツプロジェクト「PEACE FOR ALL」の一環として実施されています。「世界の平和を心から願い、アクションする」という思いが込められたプロジェクトで、Tシャツの利益の全額は貧困、差別、暴力、紛争、戦争によって被害を受けた人々を支援する、国際的な団体へと寄付されます。ファーストリテイリングからのご寄付を受け、プラン・インターナショナルでは、活動国のニーズに合わせて案件を形成するオーダーメイドでのご支援としてこのプロジェクトを実施しています。

写真:早すぎる結婚(児童婚)の理解を深めるため、クイズ形式で学ぶ子どもたち

早すぎる結婚(児童婚)の理解を深めるため、クイズ形式で学ぶ子どもたち

企業の「SDGs目標16の取り組み」を、未来への価値ある投資へ

SDGs目標16は、他の目標を支える土台であり、持続可能な社会の実現に欠かせません。そして達成の鍵を握るのが企業の参画です。

目標16:平和と公正をすべての人に

企業が目標16に向けた行動を積極的に起こすことには、実際に大きなメリットがあります。まず、サプライチェーンにおける人権リスクを適切に管理できることで、ビジネスの信頼性が向上します。また、公正な雇用環境を整えることは、従業員のエンゲージメント(仕事への意欲や満足度)を向上させ、組織全体の活力を高める効果にも繋がります。さらにSDGsの実現は、ESG経営を推進する重要な要素でもあるため、持続可能な社会に貢献する企業としての評価を高める機会が増えるでしょう。

しかし、紛争下の女の子の保護や児童婚の防止といった課題は、一企業が単独で取り組み、成果をあげるのは簡単ではありません。資源や専門知識だけでなく、地域特有の文化的背景や現地の人々との関係づくりが不可欠だからです。この点で、信頼できるパートナーと連携することが欠かせない戦略となります。

国際NGOプラン・インターナショナルは、長年にわたる経験と専門性、そして世界各地で構築したネットワークを活かし、企業の想いを「確かな成果」へとつなぐ架け橋としても活動しています。

多くの企業からの支援が、紛争や貧困など困難な状況に置かれた子どもたちの未来を切り拓いています。同時に、国際社会では社会課題解決に取り組む企業かどうかが非常に重要な指標となっています。

子どもたちが安心・安全に過ごせる「子ども広場」(ハイチ)

未来への価値ある投資として、プラン・インターナショナルとともに、
社会全体の平和と公正を支える力となっていただけることを心から願っております。

運営団体

国際NGOプラン・インターナショナルについて

国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。

写真:プラン・スポンサーシップ

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