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(2023年02月02日更新)

プログラム部の水上です。2021年10月にプラン・インターナショナルに入局し、インドなどプランの活動国での月経衛生管理プロジェクトの案件形成・管理を担当しています。現場での実践例を学ぶことでプランの活動に活かしたいと考え、外務省主催のNGOスタディ・プログラムに応募し、2022年11月下旬から約1カ月間、月経に関する差別や偏見が依然として根深いインドで、スラムに住む女の子や女性たちに月経衛生管理の啓発活動を行う現地のNGOの活動を視察してきました。現場での学びをお伝えします。

スラムでの月経衛生改善にむけた取り組みを視察

訪問先はインド西海岸にある大都市、ムンバイの地元NGO Myna Mahila Foundation (以下、Myna)です。 Myna が月経衛生管理を通じて、スラムに住む女性や女の子の自立と健康を支援している取り組みを視察しました。Mynaはスラムに拠点を置き、女の子や女性たち、学校での啓発活動を行っています。6つのスラム・コミュニティにて計1年間の月経衛生管理、ジェンダー平等に関する研修を実施。その後、参加者に対しては英語のレッスンやライフスキル研修を提供しています。

写真:スラムの住宅での啓発活動の様子

スラムの住宅での啓発活動の様子

研修はスラム内の民家を間借りして行う場合が多く、場所の確保にもひと苦労だそうです。部屋のなかでは、女の子や女性たちがすし詰め状態で研修を受けていました。参加を呼びかけても、家事や育児で忙しいという理由で、思ったように集まらないことも。住民参加型の活動には、参加者が自発的に参加したいと思えること、活動場所が常に用意できることが重要だと実感しました。

研修に参加した女性たちの声

写真:現地職員(左)と話すアルシャナ・ソニさん(右)

現地職員(左)と話すアルシャナ・ソニさん(右)

アルシャナ・ソニさん、27歳
「月経は穢れていると思っていましたが、研修を通じて、月経は胎児を育てる重要な役割を果たすものだと認識が変わりました。ジェンダー平等を学び、家事や育児を夫と分担したいと思いつつ、私の夫は夜遅くまで働いており実践は難しいと感じています。せめて、自分の子どもたちにはジェンダー平等の大切さを教えたいです。また、研修を通して、自信をもって英語を話すことができ、子どもの宿題の英文を理解できました」

写真:(左から)タバスムさん、姉のシャマさん

(左から)タバスムさん、姉のシャマさん

タバスム・ハシミさん、18歳
「姉妹で研修に参加し、ジェンダー平等について以前よりも話すようになりました。今では、父親とも月経について話すことができます。また、『月経中はピクルスに触ってはいけない』という迷信を信じていましたが、現在は平気で触っています。一方で、父親からは大学進学の許可が出ず、家で裁縫の内職をしています。本当は勉強を続けたいです」

ほかにも、研修に参加した女の子や女性たちの多くが「月経に関する差別や偏見に対する正しい知識を得たおかげで意識や行動が変わった」と答えてくれました。しかし、夫や父親など、男性側の意識や行動を彼女たち自身の働きかけで変えていく、という段階にはまだ至っていない現状も垣間見えました。

月経にまつわる迷信に疑問を持つことの大切さ

インドには、月経中の行動規範に関する昔からの言い伝えや迷信がたくさんあります。「月経中の女性は穢れている」という理由から、月経中は「入浴してはいけない」、「聖なる植物やピクルスに触ってはいけない」、といったことが信じられており、今でも多くの女の子や女性の行動が制限されています。ピクルスは塩気や油分が多いため、健康の観点から控えた方が良いものかもしれませんが、「穢れているから触ってはいけない」という考え方は、「女性は穢れた存在であり、地位が低いもの」という女性自身による誤った思い込みを助長しかねません。

写真:生理ナプキンを作るスラム出身の女性たち

生理ナプキンを作るスラム出身の女性たち

Mynaでは、高校や大学などの教育機関において、女子学生を対象に、思春期の身体の変化、月経に関する迷信、月経の仕組み、衛生習慣や月経用品(生理ナプキンなど)に関する啓発活動を実施しています。月経中の行動に関する迷信や言い伝えについて、まずは疑問を持つことの重要性を伝えている点が、Mynaらしいアプローチだと感じました。また、スラム出身の女性たちの生計向上支援として、生理ナプキンの製造・販売も行っています。

スラム出身の女性が啓発トレーナーとして活躍

写真:アイシャさん

アイシャさん

こうした啓発活動を率いているのは、スラムに住んでいる22歳のアイシャ・シャイクさんです。アイシャさんの家族は大学進学までは応援してくれたものの、女性が外で働くことについては反対していました。しかし、今から3年前、彼女はMynaでスラムの女性のために働きたいと家族を説得。現在は啓発活動のトレーナーとして、月経衛生管理に関する正しい知識を学生たちに伝えています。経済的にも自立し、家族の医療費を負担するなど家計を支えるまでになりました。そんな彼女の姿を見て、家族も応援してくれるようになったそうです。

写真:月経に関する正しい知識を学生に伝えるアイシャさん

月経に関する正しい知識を学生に伝えるアイシャさん

「Mynaで啓発活動を始める前は、初めて会う人に対して考えを伝え、コミュニケーションをとることに、まったく自信がありませんでした。しかし、今では自信をもって自分の意見を伝えられます。また、新しいスキルを学ぶことにも前向きになれました。これからは英語や文書作成などを学び、学生への啓発活動だけでなく、Mynaの他の仕事にもぜひ挑戦してみたいです」

月経衛生管理は、女の子や女性の健康と尊厳にも関わるとても重要なことです。今回、地元NGOの活動視察を通して、貧困のなか弱い立場に置かれている女の子や女性たちが自発的に月経衛生について学びたいと思える工夫が、住民参加型の活動では必要だと分かりました。また、月経にまつわる差別や偏見をなくしていくことが、女の子や女性のエンパワーメントに直接つながっていることが実感できました。現場での学びを、今後のプランでの月経衛生管理プロジェクトの案件形成や管理に活かしていきます。

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