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(2024年07月29日更新)

こんにちは!プログラム部の永島実紀です。グアテマラで実施中の「先住民族の小学校教育」プロジェクトを担当しています。グアテマラの教育システムの課題について、日本の教科書事情との比較も交えてお伝えしたいと思います。

日本の公立小学校の教科書が無償になった背景とは?

日本の公立小学校に入学すると、子どもたちに教科書一式が大判の封筒で配布されるのですが、封筒の表に以下のようなメッセージ(一部を抜粋)が記されているのをご存じですか?

~次代を担う子供たちに対し、わが国の繁栄と福祉に貢献してほしいという国民全体の願いを込めて・・・この制度に込められた意義と願いをお子様にお伝えになり、教科書を大切に使うようご指導いただければ幸いです~

教室に整然と並んだ机の上の帽子と教科書

この文部科学省からのメッセージの背景には、1961年に高知県の小学生の子どもをもつ母親たちが立ち上げた、「教科書無償化運動」があるそう。当時は、毎年保護者が教科書を準備する必要があり、つまり教科書は有償でした。当時のこの地域の一般的な家庭の経済状況では、教科書を買う、譲ってもらって揃えるなど大変な苦労があったとのこと。高知県の母親たちが起こした運動は、瞬く間に全国に普及、国会での審議に至った結果、憲法の「義務教育はこれを無償とする」(26条)の精神に合致していることが認められ、関連する法律が成立。1966年には全国で小学校の教科書無償配布が実現しました。以来、冒頭でご紹介したメッセージ入りの封筒に入れられて、新入生への教科書配布が続けられているそうです。

グアテマラの教育事情

一方で、教科書の無償配布はグアテマラでも法律で明記されています(Ley de Educación Naciona ARTICULO 81º)が、国内全域に行き渡らなかったり、配布されたとしても年度の途中であったり…。ほかにも、教育システムではさまざまな課題があり、中学・高校の低い就学率や識字率の向上のため、行政官や教員の育成が急務となるなど、問題が山積していると言われています。

社会全体に目を向けると、国内格差、特に先住民族の貧困問題が深刻です。先住民族の識字率、就学率や進学率は非先住民族と比して明らかに低くなっています。たとえば、先住民族が多い地域の中学校の就学率は、首都のあるグアテマラ県と比較して低く、グアテマラ県が75%であるのに対し、プロジェクトを実施しているキチェ県では 23.1%にとどまっています(全国平均:52.7%)。

きょうだいの世話や家事のため十分な教育を受けられないことも

きょうだいの世話や家事のため十分な教育を受けられないことも

現在、外務省の支援のもと実施している「先住民族の小学校教育」プロジェクトでは、国際協力機構(JICA)が技術協力の成果品として作成した算数の教科書を活用しています。対象校に配布し、教員向けのトレーニングを実施し、学力不足が顕著な算数の授業改善を目指しています。

家庭における教育への理解の大切さ

今年5月、プロジェクトの対象地であるキチェ県へ出張してきました。これから協力して活動を進めていくグアテマラ事務所の同僚スタッフたちに、どのようにして今の職を得るに至ったのか、自身の受けてきた教育を踏まえて語ってもらいました。

起業支援担当 Arnoldo Rafael Rodríguez Maldonado職員(グアテマラ国統括事務所)

起業支援担当 
Arnoldo Rafael Rodríguez Maldonado職員
(グアテマラ国統括事務所)

父は男手ひとつで、5人の子どもを育ててくれました。父自身は教師で給料は安かったけれど、常に進学を応援してくれたんです。私が大学に行けたのは父のおかげです

算数事業担当 Mynor Eduardo Sucuquí Morales職員 (キチェ現地事務所)

算数事業担当
Mynor Eduardo Sucuquí Morales職員
(キチェ現地事務所)

私の母は読み書きができないことをとても後悔していました。父からは、私が長男ということもあり、妹や弟たちのために早くから働きにでるよう促されていて…。でも母が、私が大学を卒業できるよう、ずっと父に掛け合ってくれたんです。そうして得た理数系の学位のおかげで、この仕事ができています

彼らの言葉に、日本の教科書無償化に向けた高知県の保護者の熱量とも共通する、家庭の教育への理解の大切さが浮き彫りになった気がしています。プロジェクトでも、保護者対象の啓発活動などを通じて、教育の重要性への理解促進を支援していきたいと思います。

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プログラム部

永島 実紀

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