(2026年03月02日更新)
シンチャオ!プログラム部の水上です。「早すぎる結婚の防止」プロジェクトの現地事業責任者として、ベトナムに赴任し、まもなく1年になります。少数民族の暮らすベトナム北部の山間地域で、教師、保護者と子どもたちとともに「性、身体、心の変化」を尊重し合いながら、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)について学ぶ包括的性教育を進めています。かつて話題にしづらかった思春期のテーマが、いま、学校・家庭・地域で少しずつ開かれようとしています。
都市部と地方の山岳部の大きな差
同僚と屋台にて(左が筆者)
ハノイを拠点としながら、毎月北部の山岳地帯へ出張しています。経済発展著しいハノイでは、大気汚染が深刻な問題となっており、世界で最も汚染のひどい都市としてランキングに名が挙がることもあります。けれども、ベトナムにはたくましい人々が多く、大気汚染に負けじと皆ストリートフードを楽しんでいます。料理は優しい味付けで、何を食べても美味しいので驚きです。
プロジェクト実施地トゥエンクアン省の棚田
首都から大体6~7時間ほど車に揺られると、北部の中心地に。そこで一泊し、さらに5時間ほどかけてプロジェクトの実施地にようやくたどり着きます。急峻な山の稜線、息をのむほど美しい棚田、そしてベトナム人の同僚でさえ酔ってしまうほどの、ぐねぐねと続く山道が、少数民族が多く住む山岳部の特色です。基本的なインフラがまだまだ整っていないほか、冬の厳しい寒さと濃霧に耐えながら、人々が暮らしています。山の上の方では、日々の水にも困る人たちがいて、首都との大きな差に驚きました。
小学生からだって早くない!包括的性教育の教材を開発中
ベトナムには、政府公認の中学生向け包括的性教育のカリキュラムと教材があります。けれども、思春期の身体と心の変化が始まる前に、正しい知識を身につけ、準備しておくことが大事です。そこで、プロジェクトでは小学生向けの教材を開発中。グローバルレベルの教材をベトナムの少数民族の文脈にどう落とし込むかは難しくもあり、面白くもあります。2025年、小学校で生徒クラブを立ち上げたところ、先生たちから「教材開発中なのはわかるけれど、小学生向けに包括的性教育を今すぐ実施したい」という熱い声が。そこで、中学校の先生たちと協力し、パイロットとして小学校でも授業やイベント実施することにしました。
ベトナムは、情熱にあふれ、創意工夫を惜しまない先生たちのおかげで、なんとプロジェクト開始から1年も満たないうちに、包括的性教育の授業を始めることができたのです。そんな先生たちの挑戦に呼応するように、授業でいきいきと発言する子どもたちの姿から、ベトナムの底知れぬ向上心を感じました。


タブーを乗り越えた保護者の変化
中学校向けイベントで児童婚の寸劇に参加する父親
また、中学校で実施した包括的性教育のイベントには、約40名の母親・父親が参加しました。初参加の方のなかには「性教育は早すぎる」「話題にしたことがない」という声もありました。しかし、時間が進むにつれて、保護者たちは自らの経験や子どもへの思いを語り始め、聞き手としても互いに支え合う雰囲気が生まれました。
あるお母さんは、「初めて娘の体の変化について話せた」と目を輝かせ、「子どもの成長を見守る責任を以前より強く感じた」と語ってくれました。この活動前後での変化は、言葉だけではありません。多くの保護者がタブーと考えていた「思春期の心と身体の変化」は、「子どもと対話し、一歩踏み出して見守る姿勢」へと変わりつつあります。


支えに応え、次の飛躍へ
意欲溢れる先生たち、素直で元気いっぱいの子どもたち、タブーを打ち破る勇気を持つ保護者。そして、教材開発を一緒に進めてくれる専門家、濃霧と寒さのなか険しい山道を移動しながらプロジェクトの実施を進める県レベルのベトナム人スタッフ、そして近くで支えてくれるハノイ事務所のスタッフ。多くの仲間のおかげで、何とかベトナムでの駐在1年目を終えようとしています。
2025年の7月に行政区分が再編され、ベトナム政府は大変化の1年でしたが、2年次は行政とも連携をより深め、持続可能な変化を起こせるプロジェクトにしていければと思います。また、2026年2月のプラン・ラウンジでは、支援者の方々から直接激励をいただいたことが、何よりの励みになりました。今後とも、プロジェクトへのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
- ※このプロジェクトは、外務省(NGO連携無償資金協力)の支援のもと実施します。日本人職員が現地に赴任し事業統括を行っています。








