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信仰心が培うラオスの国民性~穏やかで寛容な気質の人々の原点は…~
プログラム部
長島 千野
Asiaアジア
ラオス便り
(更新)
プログラム部、ラオス駐在中の長島です。少数民族が多く住むボケオ県パウドン郡の中学校と高校で、「学校でのジェンダー平等促進」プロジェクトを実施し、女の子の教育を支援する活動を行っています。今回は、駐在生活の中で垣間見たラオスの宗教文化について紹介します。
ラオスにおけるピー(精霊)の存在
ちょうど1年前、活動地であるボケオ県への着任にあたり引越しをした際、プランの現地職員から「家に幽霊は出ないの?」など幽霊に関する質問を頻繁に受けました。あとになって『幽霊』ではなく『精霊(ラオス語でピー)』を指していることがわかりました。
ラオスの大部分の人々は、東南アジア、南アジアで多い上座部仏教を信仰していますが、山岳地域の少数民族の多くは、アニミズム(精霊信仰)を信仰しています。
ピーを祭っている場所
アニミズムでは、家、森、山などあらゆるところにピーが宿り人々の生活を守護すると同時に、不敬な行いに対しては不運、病気、災害などをもたらすとされているため、崇拝され大切にされています。
プランが活動している山岳地帯において、ダム建設のため村全体が移住することになった際には、山に宿っているピーにも新しい村に移住してもらうための大がかりな儀式が行われたと聞きました。
その一方で、仏教のお寺にもピーを祭る場所があったりと、アニミズムと仏教が融合していることがよく分かります。
日常生活の中に定着している儀式
ラオスでは、人生の節目となる記念行事やお祝い事があると、バーシーという儀式を執り行い、身体に宿る精霊を祭り健康や幸運を祈願します。
プランの活動の中でも、学生寮を建設し学校側に引き渡す式典の中で、バーシーの儀式が執り行なわれました。
バーシーの儀式でもアニミズムと仏教が融合しており、引渡し式の時も、元僧侶の村人がパーリ語(上座部仏教の言語)でお経を唱えていました。
学生寮の引渡し式でのバーシーの様子
健康を祈願するために、腕に白い糸を巻いてもらいます
社会や文化に深く浸透している宗教
上座部仏教は、ラオスの主要民族であるラオ族が信仰しています。タイなどの近隣国に比べて信仰心や実践度は低い印象を受けますが、それでも夜遅くまでパーティーをしても、朝早起きして托鉢をする僧侶に食事を提供したり、お寺に参拝に行ったりと日常生活の中に仏教があります。ラオス人は、穏やかで寛容な人が多いのですが、自然と融合するアニミズム、仏教の信仰がラオス人の大らかな性格や世界観をつくり出している気がします。
托鉢をする僧侶たち
一方で、ラオスでは子どものときに修行僧として出家する場合が少なくなく、プランの現地職員の中にも18歳くらいまで修行僧だった人が何人かいます。中には、大学に通う奨学金を得るために修行僧になることもありますが、上座部仏教では、女性が尼僧になることは許されていません。女の子の場合は出家して大学に通う機会を得られないうえ、僧侶と同等の地位を得ることもできません。また、子どもが出家することで親が徳を積むことができるとされていますが、それができるのも男の子に限定されます。こうした宗教上の制約が、社会的なジェンダー不平等に多少なりとも影響しているように思います。
宗教文化を理解することは、活動地域の人びとの考えや価値観を知るうえで大切なことです。中には、ジェンダー平等という概念が伝統的な価値観を壊してしまうのではないかと懸念している人もいます。
プロジェクトを実施する際には、ラオス人が大切にしている信仰心や文化を念頭に置き、現地の文化や文脈に合った適切なアプローチを心がけていきたいと考えています。
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