(2024年07月05日更新)

よく日本では女性のリーダーが少ないとされていますが、どうすれば女性のリーダーが増えるのでしょうか?
リーダーが少ない背景には、環境はもちろんのこと、本人たちの自己肯定感の低さ、自信のなさが原因とも言われています。
そこで今回は、「女の子 × リーダーシップ」について研究・調査をしているプラン・インターナショナル(以下、プラン)のアドボカシーグループリーダー・長島美紀に話を聞きました。
女の子のリーダーシップの高め方、さらには自己肯定感や自信の持ち方についても教えてもらいました。
長島美紀|国際NGO「プラン・インターナショナル」アドボカシーグループリーダー。政治学博士。プランでは、女の子のリーダーシップに関する調査提言をはじめ、女の子や若い女性のエンパワーメント、ジェンダー課題に関する調査研究・政策提言を担当。2021年4月からは内閣府男女共同参画推進連携会議有識者議員、2023年からW20ジャパンデレゲート(2024年より共同代表)も務める。
日本では「リーダー=男性」のイメージが強い
── なぜ日本では女性のリーダーが少ないのでしょう?
長島:日本では国会議員や首長、会社での管理職と、あらゆる場面で女性のリーダーの数が少ないですよね。
要因として大きいのは、そもそも「リーダー=男性」というイメージが根強いからでしょう。
例えばプランでは、毎年「国際ガールズ・デー」にあわせてレポートを発表しているのですが、リーダー像に関して尋ねたときに、多くの人がリーダーとして思い浮かべるのが、”ネクタイを締めたスーツ姿の男性”なんです。
この「リーダー=男性」というイメージは、幼い頃から徐々に形成されていきます。
たとえば学校。私たちの調査では、女の子たちは中学生くらいから「男子は生徒会長」「女子は副会長」と考えていることがわかりました。
また幼少期に親や教師など大人から受ける言葉が、のちのち自分の意見になるといわれ、高校生ぐらいでジェンダーバイアス※が固まるとされています。
※〈ジェンダーバイアスとは?〉「男の子ならこう」「女の子ならこう」といったように、男女の役割について固定的な観念を持つこと。
このような印象の積み重ねが「リーダー=男性」のイメージを作ってしまう。
結果としてリーダーになる女の子が少ない──というのがあると思います。
── たしかに「リーダー=男性」のイメージは根強く残っているかと思います。どうすれば変えられるのでしょう?
長島:効果的なのが「経験を積むこと」だと思います。
経験というと仕事を思い浮かべますが、学校生活でも十分に経験を積むことができます。
たとえば、班長とかクラス委員、部活動でのキャプテンなど、学校生活のなかにも色々な役割がありますよね。そこでの経験を積み重ねれば積み重ねるほど、リーダーになれる自信がつく。
実際にプランが行った調査でも、学生時代に経験を積んだ子の方が、人前に出ることが恥ずかしくないといった回答や、将来リーダーになりたいと意欲を示す割合が高いことがわかっています。
いかにリーダーとしての経験を積めるか、そして経験できる環境を提供してあげられるかが重要だと思います。
── 子ども時代の環境でいうと、大人の影響も大きそうです。
長島:そうなんです。ただ、大人のみなさんが注意しないといけないのは、「子どもの自主性に任せる」という人が多いということ。
学校の先生を対象にした調査でも、そう答える人がほとんどでした。
「自主性に任せる」は一見いい言葉に聞こえますが、すごく危ういと思っていて。
なぜかというと、生徒の自主性だけに任せると、クラスのなかで目立つ子だけが役割を得てしまい、出来るはずだった経験に巡り会えない子が出てきてしまいます。
本来、人にはいろんな特性がありますよね。
運動が得意な子、勉強が得意な子、楽器が得意な子、チームをまとめるのが上手な子、話を聞くのが上手な子、といったように。
ふだんは目立たないけれど、その子の性格にあった役割を、先生が見極めて割り振ることで経験が得られるはずです。
現状では、目立つ子(主に男の子)に経験が集まり、そうじゃない子は経験が積めない──というのはすごくもったいないですよね。
「キャラじゃない」をやめてみる
長島:リーダーが増えない別の要因としては、「キャラじゃないから…」と思っている女の子が多いこと。
プランの調査でも、「私はリーダーっていうキャラじゃないから…」と、リーダーになりたがらない消極的な子が多くいました。
「私は真面目キャラだから」「私はお笑いキャラだから」といったように自分でキャラを固定化してしまうことは、自ずとリーダーになることを避ける原因になっています。
──たしかに一度自分のキャラを決めると、抜け出すことが難しい気もします…。
長島:私のオススメは「他のキャラになってみる」ことです。
例えば、友達全員がお笑いキャラだとして、そのなかにいると自分は控えめに映るかもしれない。でも別のコミュニティに行くと、「あれ、自分ってけっこう面白いキャラなのかも?」となることがありますよね。
私の家族を例にすると、母は長年自分のことを“内気なキャラ”だと思っていたそうなのですが、70歳にして周りから「いつもおしゃべりだよね」と言われ、すごくビックリしたそう。
私からすると、普段からよくしゃべるのを見ているので、なにを今さら…(笑)と思いましたが、本人にとっては大きな発見だったんでしょうね。
人生の後半戦は、おしゃべりなキャラとして生きていくと思います。
姉もそうです。昔からネガティブで自己否定が強い人で、本人も「私はリーダーってキャラじゃない」と思っていたそうなのですが、経験を積み重ねて、今は保育園の園長をしています。
このようにキャラって変わることができるんです。
「私なんか…」と思わずに、たまには他のキャラを演じてみると、新しい発見があるかもしれません。
「リーダーになる」だけがリーダーシップじゃない
長島:ちなみに「リーダーシップ」とは、必ずしも組織のリーダーである必要はないと思っています。
家庭、学校、職場、地域社会など、どのコミュニティにいたとしても“主体的に関わる”ことがリーダーシップだと思っています。
その主体性も、私たちが想像するような「みんなを引っ張っていくぞ!」というよりは、自分の役割に責任を持って行動するようなイメージです。
そしてリーダーシップは、自分自身に対しても当てはまります。
自分の人生に責任を持つことや、自分自身をリードできるということも、私はリーダーシップだと思いますね。
── なるほど、自分をリードすることも「リーダーシップ」だという考えは思いもよりませんでした!
長島:そうなんです。組織や役職に関係なく、主体的であることがリーダーシップだと考えています。
ちなみに、「リーダー=強い」というイメージも、若い世代では変わってきていると感じています。
以前、中高生の女の子2000人を対象に「良いリーダーのイメージ」を調査したところ、1位は「責任感が強い人」でしたが、「人の意見を聞ける」、「メンバーそれぞれの能力を引き出せる人」も上がっていました。
チーム内をうまく調整したり、メンバーの良いところを引き出せる、話を聞いてあげるなど、そういった人が良いリーダーであると答えていた学生が多くて驚きました。
昔だったら、「俺についてこい!」といった、みんなを引っ張っていくような強いリーダー像があったと思うんです。
でもそういうリーダーって、ワンマンだからうまくいっている時はいいけれど、ピンチの時には弱いというか。
チームメンバーをしっかり見渡して、それぞれの特性を引き出しつつ、ゴールに向かって導いていける──それこそが今の時代にふさわしいリーダー像だと思いますね。
── ちなみに長島さん自身は、どのようにリーダーシップを獲得していったのでしょう?
長島:私の子ども時代を振り返ると、自己主張が強く、わがままの塊みたいだったと思います。ですからリーダーシップがあるというよりは、一匹狼タイプだったかなと。
そんな性格だったのが、社会人になり変化が訪れました。
とあるプロジェクトを任されたとき、まったく予算がなかったので自分で企画をして、全部デザインもして…と、すごく大変だったことがあったんです。
その後、しばらくして次に大きなイベントを任されました。
以前と違い予算があったので、広告代理店やデザイン会社が間に入り、しっかりとデザイン制作されたものが出来上がってきたんですよね。
それを見た時に「あ、こんなにすごいこと自分にはできない…!」と分かったんです。自分の得意/不得意を痛感した瞬間でした。
それからは、「自分が得意なことは何だろう?」と強く意識しはじめました。
考えた結果、わたしはゼロからイチを作るのは向いていない。でも、できたものをもっと広げたり、つなげたりすることは得意であることが分かりました。
それまでの一匹狼ではなく、チームで仕事をしよう、「私ができないことは、できる人に任せていこう」という仕事スタイルが決まったんです。
自信を持つためには「得意」を見つけよう
── さきほど「主体性」が大事とありましたが、「女性は男性に比べて主体性が低い(消極的)」という調査データも。どのように主体性を育めば良いのでしょうか?
長島:主体性で大事なのは、自信を持てるかだと思うんです。そして自信とは「自分が得意なこと」によって獲得できますよね。
もし得意なことが分からなければ、何でもいいので、興味がある分野から小さなトライをしてみてください。
例えば、将来ネイリストになりたいと思ったのなら、自分や誰かにネイルをしてみる。小さくトライする分にはリスクはないですし、向いているかどうかの判断がしやすいですよね。
プランでも、「国際協力に参加したいです!」という人がいたときに、私からは「まずは現地でボランティアしてみたらどう?」と勧めるんです。
いきなり途上国に現地スタッフとして派遣されたとして、食事やトイレなど生活が困難なとき、帰りたくても帰れないじゃないですか。
ですからその前にボランティアでトライしてみて、「全然ダメだった」もしくは「私って案外向いているかも?」といった判断ができますよね。
まずは興味のある分野で、好奇心の赴くままに小さくトライしてみる。
それを繰り返していくと、自分の得意なことに気づけるはずです。
できるという自信があれば、グループのなかで「自分の立ち位置はここで、この分野なら貢献できるはず!」という気持ちが生まれてくる。それが主体性ですね。
長島:先ほどお話したように、リーダーシップとは必ずしも役割があることではなく、「自分が望む方向に向かうこと」だと思うんですよね。
人それぞれ、理想の人生プランやなりたい像があると思います。
人生は100年しかないので、それをどう楽しめるか考えたときに、やりたいことはやった方がいいですよね。
女の子たちには「自分はこんなものだしなぁ…」と諦めずに、ぜひ望む人生を手にいれるべく前に進んでほしいです。
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