(2025年08月05日更新)
2024年元旦の地震から1年半。被災地ではほとんどのがれきが取り除かれ、道路や神社の修繕が進んでいます。
プラン・インターナショナルは、輪島市内での教育環境の整備と小中学生向けサイエンス実験教室、内灘町での子ども食堂、仮設住宅でのBBQ大会、こどもフェスタの開催などを通じ、被災した方々とコミュニティの復興を支援しています。それぞれの地域での活動の様子と現地の声をお届けします。
輪島市:小中学校でサイエンス実験教室を開催
輪島市教育委員会の要請を受け、夏休み直前の2025年7月8~11日に、市内全小中学生(小4校・中3校/計750人)を対象に、参加型のサイエンス実験教室を4日間計13回に分けて開催しました。テーマは「南極ブリザード 色と光の魔法」。講師は神奈川に本社を置く「アインシュタインラボ」の北原氏と斎藤氏です。
実験では、マイナス196度の液体窒素に触れたり、水が1秒で凍る様子を観察したり、息を吹きかけてドライアイスを作ったりと、教員も交えて通常の教室では味わえない体験を楽しみました。
次に子どもたちが体験したのは、身の回りの「光の色」を探る実験です。蛍光灯の色を尋ねられ、子どもたちは自信満々で「白」と答えます。しかしそれが「人の目の限界」と告げられると、皆不思議そうな表情に。その後、配布された「回析格子シート※」越しに光を見ると、そこには7色の世界が!「光って本当は7色だったんだ…」と子どもたちからは驚きの声が上がりました。シートをくるくる回せば万華鏡のように模様が変わり、LED電飾の色ごとに異なるスペクトルが現れるたび、教室は生徒たちの歓声でいっぱいになりました。
- ※透明フィルム上に一定間隔で微細な溝を刻んだもの。入射した光は溝で回折し、波長ごとに進行方向が分かれるため、白色光を当てると虹のようなスペクトルが現れる
授業の締めくくりとして、南極のブリザード(激しい風を伴う降雪)を教室内に再現する実験が行われました。液体窒素がブロワーで放出されると、視界が真っ白に閉ざされるホワイトアウトの現象が発生。教室には子どもたちの恐怖と驚き、そして歓喜の声が広がりました。当時の輪島市は連日30度を超える猛暑だったため、生徒たちは大喜び。「アンコール」の大合唱が起き、アインシュタインラボのお2人がその熱気に苦笑いする場面も見られました。
教員の声
生徒たちのこんなに弾けるような笑顔を見たのは久しぶりで、私たち教師もとても嬉しいです。
通常ではできない経験をさせていただきました。生徒が自然科学に関心を持つようになることを期待しています。
夏休みを前に、子どもたちに“もの”ではなく、経験の贈り物をいただき、感謝しています。このような経験こそ、子どもたちが求めているものだったと思っています。
子どもたちの声
液体窒素を使い、マイナス196度と言う、普通は経験できない温度に触れたりできて楽しかったです。
理科や実験には苦手意識があったけど、今日の実験教室で新しいことをたくさん知ることができて楽しかった。
蛍光灯の本当の色が知ることができて嬉しかった。シートを4枚重ねて明かりを見たら花火みたいできれいだった。
内灘町:子ども食堂・親子講習を開催
プランは2025年2月、内灘町で活動するNPO法人おむすびと連携し、子どもたちを支援する活動を行いました。地域に暮らす子どもとその保護者を招待し、月に2回「みんな食堂」を開催。栄養バランスを考慮した食事を提供しました。また、子育て・教育・健康など多岐にわたるテーマで講師を招き、食事をとりながら学ぶ講習会を月に1回開催しました。

「みんな食堂」の様子

皆で記念撮影。NPO法人おむすびの山本代表と石川さん(後列中央)
「こどもフェスタ」や仮設住宅での食事会の開催を支援
2025年5月18日、内灘町サイクリングターミナルの芝生広場を貸し切り、こども縁日や模擬店、チャリティフリーマーケットを開催しました。ステージでは地域の子どもたちが歌やダンスを披露し、地域の親子を中心に約500人が楽しい時間を過ごしました。
この日は、心理的応急処置の研修も並行して実施しました。心理的応急処置とは、災害や事故に見舞われた際にストレスを感じた子どもの心身に現れがちなサインや症状を知り、適切に対応する方法を学ぶものです。地域の方々約20人が、心理士の久保先生の講義に耳を傾けました。
6月1日には、町内の仮設住宅に暮らす被災者の方々を招いてBBQ大会を実施しました。内灘町の仮設住宅には地元で被災された方々のほか、他市町で被災された方々も暮らしています。被災者の孤立を防ぐため、住民同士が気軽に交流できる機会が求められていました。移動手段のない方には送迎サービスを提供し、ひとりでも多くの方が参加できるよう配慮しました。多くのボランティアの方々の力をお借りして実施しました。
プログラム部 山形職員のコメント
2025年7月前半、市内の小中学校でサイエンス実験教室を開催するため、アインシュタインラボのお二人とともに1週間、輪島市へ出張しました。輪島市への移動にもすっかり慣れ、金沢からは北鉄バスや在来線で向かいます。市内を移動しながら車窓を眺めると、この1年で景色はずいぶん変わりました。土砂崩れ後むき出しになっていた巨大な樹々の根や、放置されていた全壊・半壊の家屋は減り、代わって新しく作られた道路や仮設住宅群が目に飛び込んできます。
サイエンス実験教室は、すべての小中学校で開催し、6歳から15歳までの生徒と教職員の方々、約800人に体験していただきました。緊張や驚きで目をキラキラさせ、歓声を上げて実験に参加する子どもたちを見て、この企画を実現できて本当によかった、と感じました。子どもたちに「もの」ではなく、心を動かし知的好奇心を刺激する時間を提供しよう、と教育委員会や教員の方々と話し合ったことを思い出しました。
被災地では着々と復興が進み、街並みからがれきが消えて新しい家屋が建っています。最近では、地震と豪雨の被害を受け通行不能になっていた中屋トンネル(輪島市中心と門前町を結ぶ唯一の幹線道路)が1年半ぶりに開通するなど、明るいニュースも届いています。
一方で、教育施設の被災による学校の統廃合とそれに伴う長距離通学、従来行われていた学校行事の中止、部活動の中断、安全な遊び場の不足など、さまざまな変化によるストレスで子どもたちの心身に不調が現れていることが心配です。
プランによる被災者支援の活動は終了しますが、平時からできる災害時子ども支援の調整や地域の災害コーディネーターの育成などを通じ、今後も地域を応援していきたいと思っています。
皆さまのご支援のおかげで、約1年半にわたり被災地の子どもたちへの支援活動を継続できましたことに、心から感謝申し上げます。

整備した運動場は子どもたちのお気に入りの遊び場

翌週の地区大会に備えた輪島フェニックス






