(2024年04月30日更新)
世界には貧困状態にある人々が多くいます。日々の食事もままならない人や学業を諦めざるをえない人など、置かれている状況はさまざまですが、貧困は決して遠い国だけの問題ではありません。「貧困をなくそう」が持続可能な開発目標(以下SDGs)の目標1に据えられていることからも分かるように、貧困は非常に深刻な世界的課題です。
貧困はその度合いによって、「相対的貧困」と「絶対的貧困」の2つに分類されます。今回は、「相対的貧困」に焦点を当て、その定義や世界の貧困の現状、「相対的貧困」によって生み出される課題と取り組みについて考えます。

もくじ
「相対的貧困」の定義とは?
はじめに、「相対的貧困」とはどういった状態を表すのでしょうか。その定義について解説します。
「相対的貧困」は、ある国や地域の生活水準のなかで比較したときに、大多数よりも貧しい状態のことを指します。例えば、冷蔵庫や暖房器具が買えない、学校の制服代や給食費が払えないなど、ほとんどの人が持っているものを持てない状況にあることを指し、日本などの先進国でも見られるものです。

貧困率が50%を上回る少数民族が多く住む地域の親子(ベトナム)
厚生労働省は、相対的貧困率を「所得が貧困線に満たない世帯員の割合」としています。「貧困線」は、国民の所得を基準に計算されるもので、等価可処分所得(世帯の可処分所得※を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分の額になります。2021年の日本の貧困線は127万円となり、相対的貧困率は15.4%となっています。
- ※世帯の可処分所得とは、収入から税金・社会保険料等を除いた、いわゆる手取り収入のことです。
相対的貧困と絶対的貧困の違い
「相対的貧困」が、その国のなかで大多数と比べて貧しいという状態であるのに対し、「絶対的貧困」とは生きる上での最低限の生活水準が満たされていない状態を指します。具体的には水や食料、衣服など衣食住を手に入れることができず、命を守ることさえ難しい状況を言います。これは、世界銀行が設定する国際貧困ラインの1人1日2.15ドル未満で生活する「極度の貧困」を意味します。
経済的自立を目指して職業訓練を受けるユース(マラウイ)
このような状況に直面している人々は、途上国のなかでも特に南アジア地域、サハラ砂漠以南のサブサハラ・アフリカ地域に集中しており、いずれも増加傾向にあります。
- ※国際貧困ラインは、世界全体の物価データ等の変動を反映し、2022年9月にそれまでの1.90ドルから2.15ドルに改定されました。
- 「Fact Sheet: An Adjustment to Global Poverty Lines」(The World Bank)
- 「September 2023 Global poverty update from the World Bank」(World Bank Blogs)
【出典】
誰ひとり取り残さない世界を目指して
相対的貧困が生み出す問題
近年は、途上国で多く見られる「絶対的貧困」だけではなく、途上国と先進国の両方に存在する「相対的貧困」も問題視されています。どのような問題が生み出されているのか、その理由とともに解説します。
貧困の連鎖
個人または家庭を問わず、一度貧困状態に陥ると、世代を超えて長くその状態から抜け出すことが難しくなる傾向があり、「貧困の世代的生産」または「貧困の世代間連鎖」と呼ばれます。これは、親の経済的事情によって、子どもの教育格差が生まれることが原因のひとつとされています。
日本の身近な例をあげると、貧困家庭では十分なお金がないため、子どもの塾通いや大学への進学などが困難になりがちです。低学力や低学歴は、子どもの将来に大きく影響を及ぼします。安定した収入が得られる仕事に就く機会を得ることが難しいため、子どもが成長して大人になっても貧困から抜け出すことは容易ではありません。

通学に必要な学用品を受け取った親子(ボリビア)
格差の拡大
また、経済的に豊かな人と貧困に陥っている人との間で、あらゆる格差が広がる可能性があります。仕事や生活、教育、価値観などあらゆる点で差が生まれやすくなります。買えるものや経験できることなど、富裕層と貧困層の間でその差が広がっていくと、差別や対立が起こるリスクが高くなります。
世界の相対的貧困に関する現状
では、「相対的貧困」はどこで起きているのでしょうか?コスタリカやチリ、アメリカ、韓国など世界各地で問題になっています。日本の2021年の相対的貧困率は15.7%で、G7(主要7カ国)のなかでも高い数字です。世界はもちろん、日本においても生活に困窮する人々が多くいるのです。
深刻化する子どもの貧困

出典:日本財団
近年、日本でも子どもの貧困が深刻化しています。2021年の17歳以下の子どもの相対的貧困率は、11.5%でした。また、ひとり親家庭の貧困率は44.5%と高く、なかでも母子家庭の75%を超える人々が、「生活が苦しい」と感じています。就労、子育て、家事を1人でこなさなければならないひとり親は、長時間働くことが難しく非正規雇用が多いことなどから、収入が不安定である実態がコロナ禍によって浮き彫りになりました。
日本財団が2020年に全国の17〜19歳のユースに行った意識調査では、半数以上が「日常生活の中で格差を感じることがある」、と答えています。持っているブランド品やゲーム、外食の頻度、進学などで格差を感じる一方で、周りには困窮した人がいないため格差を感じないユースも多くいました。
内閣府の外局である「こども家庭庁」や全国の市町村、団体などは、子どもを取り巻くあらゆる課題の改善へ向けて対策を行っています。保護者の就労支援や子どもの教育費支援のほかに、相談窓口や親も子ども安心できる居場所づくりや子ども食堂、学習支援などがあります。
相対的貧困の解決を目指して
プラン・インターナショナルは、「絶対的貧困」だけでなく、「相対的貧困」にある人々にも支援を行っています。教育や保健・医療、あらゆる差別や偏見、暴力などの課題解決を目指し、主に途上国で幅広く活動に取り組んでいます。
日本のような先進国のケースでは相対的貧困は、「見えにくい(隠れた)貧困」とも言われます。特に子どもたちは、生まれ育った家庭環境による格差を日々実感しながらも、自分自身ではどうすることもできずにひとりで悩んでいます。プランでは、日本国内で家庭の問題や経済的困難、虐待、いじめなどで居場所がない女の子たちに経済的、心理的支援や保健指導なども行っています。
紛争や災害、気候変動、社会情勢などの影響を受け、その結果として貧困に陥ってしまう人々が世界中にいます。
私たち一人ひとりが自分にできることは何かを考え行動を起こすことで、少しずつであっても、貧困のなかにある人々が立ち上がることができる世界に近づいていけるのではないでしょうか。
運営団体
国際NGOプラン・インターナショナルについて
国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに世界80カ国以上で活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。











