(2024年01月24日更新)
世界にはさまざまな理由から学校に通えない子どもたちが大勢います。特に貧困は教育格差の大きな要因であり、親や保護者の所得が学習の機会へ直接影響しています。この記事では、貧困が教育に与える影響とその具体的な事例を紹介するとともに、国際社会や日本の現状、課題解決に向けた取り組みについて詳しく解説します。

楽しく学ぶ子どもたち(カンボジア)
もくじ
貧困のために教育を受けられない子どもが大勢いる
2023年の時点で、教育を受けられない6歳~18歳の子どもは約2億5,000万人にのぼります。2000年以降、世界全体で学校に通っていない子どもの数は約40%近く減少しましたが、それでも依然として多くの子どもたちが就学の機会を得られていません。
特にサハラ以南のアフリカでは、教育の改善率、就学率が低い現状があります。主な原因として人口増加が挙げられます。増加する人口に対して学習環境の整備が追いついていないため、教育を受けられない子どもが多くいます。南アジアや東南アジアと比較すると、初等教育(小学校での教育)や前期中等教育(中学校での教育)を受けられない子どもの数が非常に多いのが特徴です。
近年は貧困による「教育格差」が世界的な問題に
教育の機会が平等に提供されないことによって、貧困層と富裕層の間で教育格差がますます広がりつつあります。この問題は世界中で深刻化しており、子どもの福祉や将来にも大きな影響を与えるとして重要視されています。日本も例外ではありません。
貧困層と富裕層の教育格差
子どもが生まれ育った環境・保護者の所得・生活水準などにより受けられる教育に差が出ることを、教育格差と言います。昨今この問題は途上国だけでなく、日本でも広がっており、貧困に繋がる社会問題のひとつとされています。
厚生労働省の調査によると、経済や生活の水準において大多数の世帯に比べて相対的に貧困状態にある日本の17歳以下のこどもの貧困率は13.5%(2018年)で、約7人に1人の子どもが貧困状態にあると言われています。内閣府によると、特に、ひとり親家庭の相対的貧困率は50.8%と、2世帯に1世帯が相対的な貧困の生活水準となっています。
経済的な困窮の問題は教育だけにとどまらず、生活習慣、健康管理、自己肯定感など、子どもたちの成長にさまざまな影響を及ぼすと言われています。
2022年の世界銀行のデータによると、特に高等教育において、貧富の差による教育格差が大きくなっています。高所得層の就学率は75%なのに対し、中~低所得層では37%と格差が大きいことが見て取れます。これは、中~低所得層では学年が上がるにつれ、教育を受けさせることが経済的に苦しくなる家庭が多いことが原因です。また、親が子どもを働かせることを優先させるため就学ができない、勉強についていけずに中途退学せざるを得ない事例が多いことも分かっています。

改修された学校で学ぶ子どもたち(カンボジア)
初等教育においては、2018年時点で高所得層の就学率が96%なのに対し、中~低所得層では89%と格差が小さいものの、就学率に差がない場合でも、実際の学習状況に問題があるケースは多いことが分かっています。
上述したように、教育格差の原因のひとつに、家庭の経済的な格差があります。経済的に余裕のある家庭は学校以外にも習い事などの学校外でも多様な形の教育の機会を子どもに与えられることができますが、貧困層の子どもは、質の高い教育を受ける機会が限られてしまいます。このように、経済格差は学力格差につながり、子どもの進学率や就職率などにも差が出ることが明らかになっています。
日本も例外ではない
日本でも相対的貧困層と富裕層の間に、経済格差、教育格差が存在しています。親や保護者の所得が直接的に子どもの教育に影響を与えており、所得が低く生活に困窮している世帯では学習塾や高等教育に進学するための費用を捻出できないことが多く見受けられます。特にひとり親家庭や世帯収入が少ない家庭において、「学習塾に通えない」「バイトなどで十分な勉強時間が確保できない」といった状況が広がっています。政府や福祉団体による奨学金や教育費支援、スクールソーシャルワーカーの派遣、学習支援などが求められています。
なぜ貧困によって教育が遠ざかるのか
世界では、貧困のために教育を受けることができない子どもたちが数多く存在します。どのような要因がこどもたちを教育から遠ざけているのでしょうか。

干ばつ下のマリでは給食の提供により就学率が高まった
教育を受けさせる金銭的な余裕がない
毎日を生きるためのお金を稼ぐことが最優先の貧困家庭では、子どもを労働力とみなし働かせなければならないため、学校に行かせる余裕がありません。また、一般的に、途上国では授業料のみが無償であり、制服や教材などは自身で買う必要があることから、経済力のない家庭では学校へ行くために必要なものを買うことができず、子どもを学校に通わすことができません。
設備などが整っていない
途上国の多くでは、教育の財源が不足しています。トレーニングを受けた教員数が少なく、教室や教材などの基本的なリソース(資産・資源)が十分に提供されていないため、授業時間は短く、質の高い授業を提供することができません。また、最寄りに学校がなく、自宅から遠方にある学校までの通学が難しい家庭もあります。
女の子の場合にはさらにハードルが高くなります。家から遠く離れた学校に危険な道を通って通わなければならないという地理的要因や、女性教員の不在により、女子用トイレや生理用品を備えるといった女の子への配慮が欠けている環境要因が、女の子を教育から遠ざける主な理由になっています。
紛争によって住む場所を奪われた
紛争地域では、多くの子どもが住む場所を失い、難民となっています。難民の子どもたちは教育を受けることが難しく、安全に学べる環境がありません。現在、約1480万人の難民の子どものうち、およそ700万人が学校に通えていない状況にあります。紛争により学校を中途退学せざるを得ない子どもたちも多く、復学できないまま大人になってしまうケースも多々見られます。この状況は教育の権利が著しく侵害されていることを示しています。
子どもたちの可能性を伸ばすために
寄付をする選択しています。手続きにお進みください。
教育を受けられないことで起こる問題
教育を受けられないと、生きていくうえでさまざまな問題や困難に直面してしまいます。
基礎的な読み書きや計算ができないことで生じる問題には、どのようなものがあるのでしょうか。

勉強をする女の子(ネパール)
読み書きや計算ができない
文字が読めないと、生活に必要な情報を自分で探すことができないため、生活を支援する制度があっても、それを知ることができません。
また、計算ができないと、金銭管理ができなかったり、他人に騙されてしまったりする可能性も高くなります。
安定した仕事が得られない
良い就職先の採用要件は、高校や大学の卒業を条件としている場合が多いため、十分な教育を受けていないと、応募要件を満たせず、仕事の選択肢が狭まってしまう可能性があります。
また、教育を受けていなくても得られる仕事は、低賃金の単純労働である場合が多いことから、お金を効率的に稼げず、貧困から脱することが難しくなってしまいます。
貧困の連鎖が起きる
教育を受けられないことは一世代だけの問題ではなく、次世代にも影響を与えます。教育を受けていない親や保護者は、教育の大切さを十分に理解できず、結果として子どもに教育の機会を与えることが難しくなりがちです。そのため、貧困の連鎖が続き、世代を超えて貧困状態が続くことになります。
貧困の連鎖とは?世代を超える“貧しさ”を断ち切るためにできること
貧困層の子どもたちへの教育支援の例
ここでは、プラン・インターナショナルが行っている貧困層の子どもたちへの教育支援の取り組みを紹介します。多様な支援活動を通じ、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが進められています。

学用品の支給(インド)
プランが実施した教育支援プロジェクトをご紹介します。
遠隔教育プロジェクト(ガーナ)
首都から遠く離れたガーナ北部の農村地域では、多くの子どもたちが、経済的な事情により学校を中途退学していました。プランは、8~16歳の子どもたちが学び続けるための学習支援として、非公式学校の運営や奨学金の支給を行いました。その結果、5年間で約9万人の子どもたちが学校に通い続けることができるようになりました。
質の高い包括的な教育を実現するためのプランの取り組み
「ジェンダー平等推進のための教育」プロジェクト(ネパール)
ネパールのマデシ州は、経済・社会の両面で発展から取り残された地域で、「排除されたグループ」と呼ばれる少数民族マデシの人々が多く暮らしています。特にマデシの女性は、少数民族への差別、ジェンダーやカーストに基づく差別など、複数の差別に直面しています。子どもたちは、全国に比べて年齢に応じた学年に通うことが少なく、教育を受ける女の子の割合は男の子より低い傾向にありました。
プランは、マデシ州で、女の子や障害のある子どもが十分に教育を受けられるよう、すべての子どもに配慮した教育施設の建設・修繕を行いました。また、ジェンダーや障害に関するトレーニングを現地の教員に実施し、ジェンダー平等の意識向上を図っています。
これらの支援により、女の子や障害のある子どもを含むすべての児童が、ジェンダー差別のない環境で質の高い教育を受けられるようになることを目指しています。本プロジェクトは2026年3月まで実施予定です。
「ジェンダー平等推進のための教育」プロジェクト
貧困と教育問題を解決するためにできること
貧困と教育の問題は複雑で多岐にわたるため、国際社会が協力して解決策を見出すことが求められます。まず、教育機会の平等化が重要です。特に貧困地域の子どもたちに対して、無償で質の高い教育を提供することが必要です。また、インフラの整備も欠かせません。学校施設の改善や教師の育成、教育資材の充実が求められます。さらに、貧困削減プログラムの推進も重要です。地域の経済を活性化させ、家計を安定させることで、子どもたちが教育を受けやすい環境を作り出します。

家庭の所得に関係なく、すべての女の子、男の子が平等に教育を受けられるようにすることが大切です。政府やNGO、地域社会が協力して、子どもの貧困対策に取り組む必要があります。SDGs(持続可能な開発目標)に基づき、教育の無償化や福祉制度を充実させ、貧困をなくすための努力が重要です。
私たち一人ひとりがこの問題に対して関心を持ち、寄付やボランティア活動を通じて手助けすることも大切です。貧困や教育の問題は、誰もが力を合わせて取り組める課題です。そして、持続可能な社会を築くためには、多くの人々の協力が必要です。プラン・インターナショナルは、貧困や教育といった社会課題に取り組んでいますので、ぜひ支援をご検討いただけますと幸いです。
運営団体
国際NGOプラン・インターナショナルについて
国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに世界80カ国以上で活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。










