(2024年12月03日更新)
SDGs(持続可能な開発目標)の目標5としてジェンダー平等が叫ばれて久しいものの、世界、そして日本を見渡してみると、依然として実現までの道のりは遠く、この価値観を社会に浸透させることの難しさが浮き彫りになっています。今回は、ジェンダー平等の実現のカギとなるジェンダー教育をテーマに、現状、課題、そして国内外の取り組みをご紹介します。

もくじ
ジェンダー教育とは?
そもそも、ジェンダー教育とは、どのようなものなのでしょうか。昨今では、固定観念や先入観を持たない小学校就学前の幼児期からの教育が重要であることが認識され始めています。また、国立女性教育会館(NWEC)では、令和6年に「ジェンダー 平等の視点から学校を変える」をテーマに、「学校における男女共同参画研修」を開催したという事例もあります。
ジェンダー教育の意味
ジェンダー教育とは、性別による固定観念にとらわれずに、自分を大切にして自分らしく生きる力を育む教育です。同時に性の多様性を知り、尊重することを教えます。
ジェンダーとは、社会や文化のなかで形作られた性別に対する考え方や価値観のことです。例えば、「数学が得意なのは男子」「女子が家事を担うのは当たり前」といった、ジェンダーに基づく固定観念は、無意識のうちに人々に先入観や差別意識を植えつけることにつながります。

ネパールの女の子が描いた、身近な問題を表現した絵
世界経済フォーラムが、経済、教育、健康、政治の分野毎に、男女共同参画に関する国際的な指標、ジェンダーギャップ指数を算出していることからも分かるように、男女平等を実現し、すべての子どもたちが性別に関わらず各々の能力を伸ばし充実した人生を歩むことができるようにすることは、世界が優先的に取り組むべき重要な課題です。
ジェンダー教育の重要性
ジェンダー教育は、性のあり方に対する思いこみや押しつけを減らし、ジェンダーに対する正しい理解を促すことで、世界中に存在するジェンダー問題を解消につながると考えられています。ここからは、世界に見られるジェンダー問題について解説していきましょう。

性と生殖に関する健康と権利を学ぶ生徒たち(ルワンダ)
世界のジェンダーに関する問題の例
雇用機会や賃金の不平等
世界のどの国も、女性の賃金が男性に比べて低いという課題を抱えています。OECD(経済協力開発機構)加盟国で比較すると、最も賃金格差が少ないベルギーで、その差は3.8%、OECD諸国の平均が11.7%であるのに対し、日本は22.1%で、G7(主要7カ国)のなかで最下位です。
さらに雇用についても、女性は十分な機会を得られないことが多く、低賃金かつ不安定な地位の非正規雇用での就労形態の多さが世界共通に見られる特徴です。
教育の格差
世界には、男女間に大きな教育格差が存在している国が多々あります。世界的に見ると、6歳から11歳の子どものうち、生涯を通じて学校に通えない女の子の数は男の子の約2倍にのぼります。
女の子には教育が不要と考える国や地域が数多く存在することから、女子トイレや生理用品の設置など、学校を女の子にやさしい教育環境に整備する配慮に欠けていることや、女性教員の不足による女の子が直面する課題への理解者が少ないことも、差別を生む原因となっています。
暴力や虐待の被害
ジェンダー不平等による暴力や虐待の被害は、世界中で発生しており、女性だけでなく男性も被害者になる危険があります。被害の例としては、身体的または性的虐待、人身取引、命に関わる危険な慣習、女の子であることが理由で学校に通わせてもらえない、生理を理由とした隔離などがあげられます。ジェンダー不平等による暴力や虐待の被害は、健康や尊厳を傷つけるだけでなく、安全や自主性にも強い影響をもたらします。また、被害を受けても泣き寝入りするしかない事例も多数発生しています。
ジェンダー関する課題は、価値観から変えなければ解決に至らないことが明らかになっています。また、周囲の大人がロールモデルとなるような適切な行動や考えを示すことで、子どもたちを正しい方向へ導くことが重要です。
ジェンダー教育によって期待される効果
ジェンダー教育を受けた人は、性別による無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)を解消し、ジェンダーバイアスやジェンダー・ステレオタイプといった、性別に関する固定観念や思い込み、偏見、差別などの存在を理解し日々の習慣を見直すことで、性に対してフラットな視点で物事を見ることができるようになります。

ジェンダー教育の成果
男女間の格差意識が減る
性別に優劣はないと知ることで、世界にあるさまざまな男女間の格差に疑問を抱くようになります。女子が男子に比べて十分な教育を受けられないこと、国会議員に女性が少ないことなどといった社会的な課題に関心を寄せるようになり、男女平等への意識が高まります。
自身の体や性に対するコンプレックスが軽減される
低年齢のうちからのジェンダー教育を通じ性に関する多様な価値観に触れることで、自分の身体や性に対するコンプレックスを抱くことも多い思春期に、男女の性差に関わらず相手を尊重するようになります。また、性差や性自認になどについての理解を深め、自分の性を肯定できるようになります。
男女間における性のトラブルが少なくなる
世界では、女性の3人に1人が身体的・性的暴力の被害者となり、15~19歳の女の子1500万人以上が強姦の被害に遭っている
※といわれています。ジェンダーに基づく暴力を終わらせるうえで中心的な役割を発揮する男の子や男性に対してもジェンダー教育を推進することで、現状を知ると同時に、性別に優劣はないことを理解するようになり、女性を搾取の対象として考えたりすることがなくなると考えられています。
世界で行われているジェンダー教育に関する取り組みの例
プラン・インターナショナルは、子どもたちが性別による差別や偏見を受けることなく学び、自分らしい人生を歩むことができるようハードとソフト面の双方からの効果的な活動を展開しています。
ここでは、プラン・インターナショナルが行っているジェンダー教育に関する活動事例をもとに、世界で行われている取り組みを紹介します。
事例1:「差別をなくすジェンダー教育」プロジェクト(ルワンダ)
実施地域の特徴
ルワンダ南部州ニャルグル郡
ルワンダは、国の政策で女性の国会議員の割合が世界一高い国です。しかし、人々には男らしさのひとつとして「暴力は男らしさである」との伝統的な考えが根強いため、女性への暴力が許容されやすく、多くの女の子が男の子や男性から暴力の被害に遭っています。なかでも、「女の子を軽視」「暴力は男らしさ」など性別に関する伝統的な考えが根強い地域では、女性への暴力が許容されやすく、学校では男性教師も女の子のデリケートな問題について無関心なケースが多いのが実情です。

性と生殖に関する健康と権利について復習する生徒たち(ルワンダ)
プランは、女の子が安心して学び続けられるように、女の子にやさしい学校環境を整備しました。また男の子と女の子がともにジェンダーについて理解を深め、差別や偏見をなくすためのトレーニングと啓発活動を展開しました。
活動の内容
- 女の子の安全に配慮したトイレ(2校)や生理用品を備えた女子専用部屋の設置(3校)
- 男の子も参加するジェンダーに基づく暴力防止を啓発する「ボーイズ・フォー・チェンジクラブ」の設立(3校)
- 女の子のためのキャンプ、カウンセリングやライフスキル教育
- 教師や教育省職員へのトレーニング、住民への意識啓発活動
「差別をなくすジェンダー教育」プロジェクト(ルワンダ)
事例2:「ジェンダー平等推進のための教育」プロジェクト(ネパール)
実施地域の特徴
ネパールのマデシ州は、経済・社会の両面で発展から取り残された地域で、「排除されたグループ」と呼ばれる少数民族マデシの人々が多く暮らしています。特にマデシの女性は、少数民族への差別、ジェンダーやカーストに基づく差別など、複数の差別に直面しています。マデシ州の女性の識字率は47.7%に留まり(男性は74.0%)
※1、早すぎる結婚(児童婚)や結婚持参金(ダウリー)の問題も顕著です。対象地域の子どもたちは年齢に応じた学年に通うことが全国と比べて少なく、教育を受ける女の子の割合は男の子より低い傾向にあります
※2。小中学校の多くは女子トイレがないなど学習環境が劣悪で、中途退学や留年の多さも課題でした。

- ※1CBS (2020).Nepal Multiple Indicator Cluster Survey 2019, survey findings report.
- ※2MoEST (2020). Nepal: Flash I Report 2076 (2019-2020).
プランは、幼稚園併設の小中学校24校を対象に、女の子や障害のある子どもに配慮した教室や衛生設備の建設・修繕を行い、ジェンダーや障害に関する教師の能力強化に取り組みました。また、若者クラブによる啓発活動を通して、ジェンダー平等や子どもの保護に関する知識を習得しました。
活動の内容
- 幼稚園併設の小中学校での学習環境の整備(14校で教室の整備、16校で水衛生設備の整備、6校で月経時の女の子のための休憩室の設置など)
- 児童図書や教材の支給(12校)
- ジェンダー平等に関する教師トレーニング(教師144人)
- 学習継続に困難を抱える子どものための補助授業の実施(延べ1800人対象)
- 貧困世帯の子どもたちへの学用品の支給(480人)
- 衛生管理やジェンダー平等に関するオリエンテーション(24校)
- 若者クラブによる啓発活動(ポスター作成、壁画ペイント、ラジオ放送、SNS発信など)

手洗い場を設置(ネパール)
「ジェンダー平等推進のための教育」プロジェクト(ネパール)
「日本の高校生のジェンダー・ステレオタイプ意識調査」から見えてきたこと
プラン・インターナショナルは、若い世代が実際に抱いているジェンダーのイメージやステレオタイプ、また、その影響や経験について明らかにするために、高校生を対象としたアンケート調査を実施。「ジェンダー・ステレオタイプは、自分の可能性を狭めていると感じるか」という設問に対し、「そう思う」「どちらかというとそう思う」との回答が7割を超え、多くの高校生が、ジェンダーに基づく固定観念や偏見が将来にも影響を及ぼしていると感じていることが分かりました。この調査結果を受け、プラン・インターナショナルは、子ども時代の早い段階かららジェンダー教育を取り入れた授業を実施することの重要性を提言しています。

男女平等のカギを握るジェンダー教育
ここまでお読みいただいて、多様性を理解し認め合い、性別に関わらずすべての人が自分らしく生きることができる社会を築くためには、ジェンダー教育がいかに重要であるかご理解いただけたのではないでしょうか。
世界共通の課題であるジェンダー平等について学ぶことは、自分の身の周りのことだけではなく、世界の問題に目を向けるきっかけとなり、早い段階から広い視野で物事を俯瞰できる力を養うことにもつながります。

プラン・インターナショナルは、ジェンダー課題に取り組むために、国際会議や国連デーなどに向けた政策提言文書を作成し、各国首脳や国際機関に対し、ジェンダーを考慮した社会変革を求めるとともに、ユースを巻き込んだ調査や啓発活動を展開することで、ジェンダー教育の重要性を提唱しています。
教育機関や企業・団体に向けて、講師派遣も行っています。
講師派遣
この機会に、身の周りのジェンダー問題について思いを巡らせ、私たちとともにジェンダー平等な社会を目指しませんか?
ジェンダー課題の解決のためにプラン・インターナショナルが展開している
アドボカシー活動はこちらから
運営団体
国際NGOプラン・インターナショナルについて
国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。










