(2026年04月10日更新)
教育を受けることは、すべての子どもに認められている大切な権利です。しかし今、その「当たり前」が世界各地で揺らいでいます。日本では、不登校の増加や相対的貧困による体験格差など、見えにくい教育問題も広がっています。一方、世界では貧困や紛争などにより、学校に通う機会そのものを失う子どもも多く、特に途上国では女の子が教育格差の影響を受けやすい状況があります。
この記事では、日本と世界の教育問題の現状や原因、解決に向けた取り組みをわかりやすく解説します。教育問題とは何か、なぜ起きるのか、私たちにできることは何かを整理していきます。

- 日本では教員不足と長時間労働が深刻化し、教育の質が低下している。
- 不登校・相対的貧困・ジェンダーバイアスなど、子どもたちの見えにくい問題が学びを妨げている。
- 日本では、働き方改革やICT活用、学校外の居場所づくりなど、に向けた取り組みを進めている。
- 世界では貧困や紛争の影響で学校に通えない子どもが多く、特に女の子は教育機会を奪われやすい。
- 教育は自立と未来を切り開く力となり、貧困の連鎖を断ち切るために継続的な支援が不可欠である。
もくじ
日本における教育問題の現状
日本の教育問題は、教員不足や長時間労働、不登校やいじめの増加、家庭の経済格差やジェンダーバイアスなど、複数の要因が重なって生じています。教育現場では、先生の負担軽減や学びの多様化、デジタル化への対応なども求められており、今後の教育政策や学校と社会の連携が重要な課題となっています。

教員不足と長時間労働により、学校現場が疲弊している
日本の教育現場では、教員不足と長時間労働が深刻な教育問題となっています。教員採用試験の倍率は近年低下しています。特に小学校や中学校では、一人の教員が担う業務量が多く、学校現場の負担が大きくなっており、教育の質や教員の指導力の維持にも影響することが懸念されています。
教員の仕事は授業だけではなく、教材研究やテスト作成、部活動の指導、保護者対応、学校行事の準備など多岐にわたります。そのため長時間労働が常態化し、本来の教育活動に十分な時間を確保することが難しい状況も生まれています。文部科学省の調査では、メンタル不調による教員の休職も増加しており、教育現場を支える体制づくりが求められています。
心理的な負担や不安から、学校に「行きたくても行けない」子どもがいる
学校生活における心理的な負担や不安から、学校に「行きたくても行けない」子どもが増えています。文部科学省によると、小・中学校の不登校児童生徒数は2024年度に約35万4,000人となり、過去最多を更新しました
。不登校の背景には、無気力や不安、友人関係の悩み、学習へのプレッシャーなどさまざまな要因があります。
また、いじめも深刻な教育問題です。2024年度のいじめ認知件数は小・中・高校・特別支援学校を合わせて約76万9000件と過去最多となり、SNSなどを通じたネットいじめも増えています。さらに、新型コロナウイルスをきっかけにオンライン授業が広がるなど、子どもたちの学習環境や人間関係は大きく変化しており、子どもの心理や学校生活への影響も指摘されています。

家庭の経済格差やジェンダーバイアスが、選択肢を狭めている
見えにくい「相対的貧困」と「体験格差」
教育問題の背景には、家庭の経済格差があります。貧困には、食料や住居など生活に必要なものが不足する「絶対的貧困」と、社会の平均的な生活水準と比べて経済的に厳しい「相対的貧困」があります。日本では主に相対的貧困が課題となっています。
厚生労働省によると、日本の子どもの貧困率は11.5%(2021年)で、約9人に1人の子どもが相対的貧困の状況にあるとされています
。家庭の収入差は学習環境だけでなく、習い事や文化体験などの機会にも影響します。こうした経験の差は「体験格差」と呼ばれ、子どもの自己肯定感や進路選択にも影響を与える可能性が指摘されています。
無意識のジェンダーバイアス
教育の現場では、無意識のジェンダーバイアスが子どもの可能性を狭める要因になることがあります。たとえば「女の子だから理系は向いていない」「男の子だから泣いてはいけない」といった固定観念や、男女で行動や服装を細かく分ける校則が、子どもの主体的な学びや自己表現に影響することがあります。
プラン・インターナショナルが日本の高校生約2,000人を対象に実施した調査では、学校でジェンダー・ステレオタイプ的な発言や表現を「された、または見聞きした」と答えた高校生が約7割にのぼりました。また、多くの高校生が、こうしたジェンダー観が自分の可能性を狭めていると感じていることも明らかになっています。男女の固定観念にとらわれない教育環境づくりと、多様な生き方を尊重する教育の推進が求められています。

日本の教育問題解決に向けた動き
日本の教育問題に対しては、国や自治体による政策や学校現場の取り組みが進められています。教員の働き方改革やICTの利活用、多様な学びの場の拡大などを通じて、子ども一人ひとりの個性を伸ばす教育環境づくりが模索されています。ここでは、日本の教育問題解決に向けた主な取り組みを解説します。
国による「働き方改革」と「学習支援」
日本の教育問題の解決に向けて、国は教員の働き方改革と学習支援の両面から政策を進めています。学校現場では、授業に加えて部活動指導や事務作業、保護者対応など多くの業務を担う先生の長時間労働が課題とされてきました。そのため、部活動の地域移行や支援スタッフの配置、学校閉庁期間の設定など、教員の業務負担を軽減する取り組みが進められています。
同時に、ICTを活用した学習環境の整備も進んでいます。教育のデジタル化(教育DX)を進める取り組みとして、児童生徒1人1台の端末環境を整える「GIGAスクール構想」により、デジタル教科書やオンライン授業などを活用した学習が広がり、子ども一人ひとりに応じた個別最適な学びの実現や情報活用能力の向上が期待されています。また、奨学金や就学支援制度などを通じて教育費負担の軽減も進められ、多様な進路選択を支える取り組みが行われています。

多様な学びと「居場所」の確保
教育問題の解決に向けては、学校だけでなく、子どもが安心して過ごせる多様な学びの場や居場所を社会全体で確保する取り組みが広がっています。不登校の子どもが増えるなか、フリースクールや教育支援センターなど、学校以外で学びを続ける環境も重要な選択肢として認識されるようになっています。
こうした取り組みは、「学校に通うことだけが学びではない」という考え方を広げるものでもあります。子どもが自分に合った学び方を見つけることで、学習意欲の向上や自己肯定感の回復につながるメリットがあります。また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど専門スタッフの配置も進み、学校・家庭・地域が連携しながら子どもの悩みや課題を支える体制づくりが進められています。
孤独や生きづらさに寄り添う、国内の女の子支援
学校や家庭、友人関係、SNSなどにおいて、孤独や生きづらさを感じている女の子は少なくありません。「こんなことで悩むのは自分だけかもしれない」と感じ、誰にも相談できずに不安を抱え込んでしまうこともあります。教育問題を考える際には、学習環境だけでなく、子どもたちが安心して気持ちを話せる場所の存在も重要です。
プラン・インターナショナルでは、日本国内で悩みを抱える女の子たちを支えるため、安心して過ごせる居場所「わたカフェ」と「ゆうカフェ」を運営しています。ここでは自分のペースで過ごしたり、交流したりすることができ、専門スタッフによる相談支援も行われています。
安心して過ごせる居場所「わたカフェ」(東京・池袋)
孤独や生きづらさは、個人の問題ではなく、周囲の環境や人間関係によって生まれることもあります。安心できる居場所や支援の仕組みが社会にあることは、女の子たちが自分らしく未来を描くための大切な支えになります。
世界で起こっている教育問題の現状
教育問題は日本だけでなく、世界でも深刻な課題となっています。貧困や紛争、社会・文化的背景、教育予算の不足などにより、学校に通えない子どもが多く存在します。特に途上国では女の子が教育機会を失いやすく、格差が広がっています。教育問題の解決には、国際社会による継続的な支援が欠かせません。
学校に「通うことすらできない」子どもが大勢いる
世界では、学校に通うこと自体が難しい子どもたちが数多く存在します。ユニセフによると、2023年時点で世界には約2億7200万人の子どもが学校に通えていません。さらに、教育分野への資金不足などの影響により、2026年末までにはその数がさらに600万人増える可能性もあると指摘されています。
学校に通えない背景には、貧困や児童労働、紛争や避難生活などさまざまな要因があります。家庭の生活を支えるために働かなければならない子どもや、紛争によって学校そのものが失われてしまった地域の子どもも少なくありません。こうした状況では、読み書きや基礎的な学力を身につける機会を得ることができず、将来の選択肢が大きく制限されてしまいます。

給食支援が就学率向上の後押しに(ケニア)
「ジェンダー格差」により、女の子の教育機会が奪われている
世界の多くの地域では、ジェンダーによる教育格差も大きな問題となっています。社会的・文化的な慣習のなかで「女の子は家事を手伝うべき」「男の子の教育を優先するべき」といった考え方が残っている地域では、女の子が学校に通う機会が限られてしまうことがあります。
また、早すぎる結婚(児童婚)や家事労働などによって、女の子が中途退学せざるを得ないケースもあります。教育を受ける機会を失うことは、将来の収入や社会参加の機会にも影響し、貧困の連鎖を生む原因にもなります。そのため、女の子の教育を守る取り組みは、社会全体の発展にもつながる重要な課題とされています。

家事をする13歳の女の子(ラオス)
校舎や教員が圧倒的に不足し、学ぶ環境が整っていない
教育問題の背景には、学校そのものの環境が整っていない地域が多いという現実もあります。途上国の中には、校舎が不足していたり、教科書や学習教材が十分に行き届いていなかったりする地域があります。教員の数が足りず、一人の先生が多くの子どもを同時に教えなければならないケースも少なくありません。
さらに、安全な校舎やトイレ、水などの基本的な設備が整っていない学校もあります。特に女の子にとっては、安全面や衛生面の問題が通学を続ける上での大きな障壁になることがあります。
こうした教育環境の課題を解決するためには、学校建設や教員の育成、教材の整備など、長期的な支援が必要です。教育は子どもたちの未来を切り開くだけでなく、地域社会や国全体の発展にもつながる重要な基盤です。

支援により完成した新校舎(ウガンダ)
教育問題が起きる原因
教育問題は、単一の要因だけで起こるものではなく、さまざまな社会的・経済的背景が複雑に重なって生じています。貧困や社会・文化・宗教的な慣習、国の教育予算の不足、戦争や紛争などは、子どもたちの学ぶ機会に大きな影響を与える要因です。ここでは、世界各地で教育問題が起きる主な原因について解説します。
貧困
教育問題の大きな原因のひとつが貧困です。家庭の経済状況が厳しい場合、子どもが学校に通うことが難しくなることがあります。学費や制服、教科書などの費用が負担となるだけでなく、家庭の生活を支えるために子どもが働かなければならないケースもあるためです。
特に途上国では、児童労働によって学校に通えない子どもも多く、教育を受ける機会そのものが奪われてしまうことがあります。教育を受けられない状態が続くと、将来の就業機会や収入にも影響し、貧困が次の世代へと引き継がれる「貧困の連鎖」を生む要因にもなります。
空腹で授業に集中できない子どもたちに給食を支給(シエラレオネ)
社会・文化・宗教的な背景
教育問題は、その国や地域の社会・文化・宗教的な背景とも深く関係しています。たとえば、「男の子の教育を優先する」「女の子は家庭の仕事を担うべき」といった価値観が根強く残っている地域では、女の子が学校に通う機会が制限されることがあります。また、児童婚や家事労働などの影響によって、女の子が中途退学をし、このような慣習は教育機会の格差を生み、社会全体の発展にも影響を与えると指摘されています。

プランが支援する学習センターで学ぶ、15歳で結婚し母親となった女の子(バングラデシュ)
国の教育予算
教育環境の整備には、十分な教育予算が必要です。しかし、国の財政状況によっては教育分野への投資が十分に行われない場合があります。予算が不足すると、校舎の建設や教材の整備、教員の採用・育成などが十分に進まないことがあります。
その結果、教員一人が多くの子どもを担当する過密な授業環境や、設備が整っていない学校が生まれ、教育の質にも影響が及びます。教育予算の確保は、子どもたちが安心して学べる環境を整えるための重要な要素です。

戦争や紛争
戦争や紛争も、教育問題を引き起こす大きな要因です。紛争地域では学校が破壊されたり、治安の悪化によって子どもが安全に通学できなくなったりすることがあります。また、家族とともに避難生活を送るなかで、教育を受ける機会を失ってしまう子どもも少なくありません。
教育の機会を失うことは、子どもたちの将来だけでなく、地域社会の復興や発展にも大きな影響を与えます。そのため、紛争地域においても教育を継続できる環境づくりが、国際社会の重要な課題となっています。

紛争のため故郷を追われ学校に通えなくなってしまった子どもたち(スーダン)
教育問題の解決に向けた取り組みが子どもたちに与える「力」とは
教育問題の解決に向けた取り組みは、子どもたちの将来にさまざまな力をもたらします。教育を受けることで、危険や搾取から自分を守る力や、安定した仕事に就いて自立する力が育まれます。また、教育は世代を超えた貧困の連鎖を断ち切る重要な鍵にもなります。ここでは、教育問題の解決が子どもたちにどのような力を与えるのかを解説します。
危険や搾取から「身を守る力」になる
教育は、子どもが自分の身を守るための重要な力になります。文字を読めるようになることで、薬の注意書きや危険標識の意味を理解でき、事故や健康被害を防ぐことにつながります。
また、読み書きや情報を理解する力が身につくと、誤った情報や不当な契約などに気づきやすくなり、騙されたり搾取されたりするリスクを減らすことにもつながります。教育は知識を得るだけでなく、自分の権利や安全を守る力を育てる役割、課題解決能力の向上も果たしています。
安定した仕事に就き「自立する力」になる
教育を受けることは、将来の仕事や生活の安定にも大きく関わります。読み書きや計算、コミュニケーション能力などは、社会で働くうえで欠かせない基礎的な力です。
教育を受ける機会があることで、より安定した仕事に就く可能性が高まり、経済的に自立した生活を築くことにつながります。反対に、教育を受けられない場合は不安定な仕事に就かざるを得ないことも多く、生活の基盤を築くことが難しくなる場合があります。

工芸のスキルを学ぶ女の子(バングラデシュ)
世代を超えた「貧困の連鎖」を断ち切る
教育は、貧困の連鎖を断ち切る大きな力にもなります。教育を受けた人は、その重要性を理解し、自分の子どもにも学校に通う機会を与えようとする傾向があります。
このように、教育は一人の人生を変えるだけでなく、次の世代にも良い影響を与える可能性があります。子どもが教育を受けることは、将来の生活の安定だけでなく、社会全体の発展にもつながる重要な取り組みといえるでしょう。
学用品を受け取る女の子(スーダン)
プラン・インターナショナルの教育問題への取り組み
世界の教育問題を解決するためには、学校に通えない子どもや教育格差に直面する子どもたちへの継続的で効果的な支援が必要です。プラン・インターナショナルは、途上国を中心に教育環境の改善やジェンダー平等の推進に取り組み、子どもたちが安心して学び続けられる社会の実現を目指しています。ここでは、教育問題の解決に向けた具体的な取り組みを紹介します。
遠隔教育プロジェクト(ガーナ)
首都から遠く離れた北部の農村地域では、多くの子どもたちが、経済的な事情により学校を中途退学しています。プランは5年間で8歳から16歳の約9万人の子どもたちが学び続けるために、地域を拠点とした非公式学校を運営したほか、公教育に戻れるように奨学金を支給しました。
ジェンダー平等推進のための教育プロジェクト(ネパール)
ネパールのマデシ州は女性の識字率は47.7%に留まり(男性は74.0%)※1、早すぎる結婚(児童婚)や結婚持参金(ダウリー)の問題も顕著です。対象地域の子どもたちは年齢に応じた学年に通うことが全国と比べて少なく、教育を受ける女の子の割合は男の子より低い傾向にあります※2。小中学校の多くは女子トイレがないなど学習環境が劣悪で、中途退学や留年の多さも課題です。
- ※1CBS (2020). Nepal Multiple Indicator Cluster Survey 2019, survey findings report.
- ※2MoEST (2020). Nepal: Flash I Report 2076 (2019-2020).
このプロジェクトでは、幼稚園併設の小中学校24校を対象に、女の子や障害のある子どもに配慮した教室や衛生設備の建設・修繕を行い、ジェンダーや障害に関する教師の能力強化に取り組みます。また、若者クラブによる啓発活動を通して、ジェンダー平等や子どもの保護に関する知識を普及します。プロジェクトは2026年6月まで実施予定です。
教育問題の解決にむけ、声をあげ改革への一歩を踏み出そう
教育問題は、日本だけでなく世界中でさまざまな形で起きています。教員不足や不登校、家庭環境による格差に加え、世界では貧困や紛争などにより学校に通えない子どもたちも多くいます。特に大きな影響を受けやすいのが、途上国の子どもたち、そして女の子たちです。
教育は、子どもが自分の身を守り、将来の選択肢を広げる大切な力になります。また、教育の機会が広がることは、貧困の連鎖を断ち切り、社会の発展にもつながります。

子どもたちが安心して学び、自分の可能性を伸ばせる社会をつくるためには、多くの人が教育問題に関心を持つことが重要です。すべての子どもが教育を受けられる社会を目指し、私たち一人ひとりが声をあげることが、改革への一歩につながります。













