(2026年06月15日更新)
「読み書きができるようになること」は、難民として生きる若者の人生をどこまで変えられるのでしょうか。
プラン・インターナショナルは、2019年5月からバングラデシュで「ロヒンギャ難民の識字教育」プロジェクトを実施しています。これまでに日本からの支援によって識字教育を受けた18~24歳の若者は、6,597人(うち女性50%)にのぼります。
識字教育が若者たちの生活や意識にどのような変化をもたらしているのかを明らかにするため、プランは2025年11~12月に、4つの識字教育プロジェクトに参加した学習者459人(うち卒業生157人)と、その保護者426人を対象に調査を行いました。その結果から見えてきたのは、識字教育が若者本人だけではなく、家族や地域社会にも広がる確かな影響です。
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識字教育がもたらした生活の変化は?
難民キャンプで暮らす若者の約90%が安定した収入を得ていない現状のなかで、識字教育を修了した卒業生の多くが、読み書き・計算のスキルを日常生活や収入に関連する活動に活用しています。
卒業生が従事している主な仕事は、女性では宗教学校の教師、男性では整備士や配管工、小規模ビジネスなどで、男女ともにNGOの業務に関わるケースも見られました。
また、家族や地域住民のために計算を手伝ったり、支援団体から届く書類を親に代わって読んだりするなど、日常生活に欠かせない役割を担うようになっています。
卒業生への調査では、次のような具体的な変化が確認されました。
- 収入に関連する業務に読み書き・計算スキルを活用している:女性84.7%、男性74.4%
- 家族や地域住民のために読み書き・計算を手伝っている:94.0%
- 親からの励ましが増えたと感じている:99.2%
- きょうだいが教育に関心を持つようになったと感じている:96.3%
親が子どもの学びを応援するようになり、きょうだいが教育に興味を持つなど、家庭全体に前向きな変化が広がっていることが分かります。
一方で、学んだことを活かして「家計の向上やビジネスの改善につなげた」と回答した若者は約2割に留まりました。この結果から、若者の経済的自立をさらに支えるためには、基礎的な識字能力に加え、職業訓練などの追加的な機会を組み合わせることの重要性も示されています。


識字教育の心理的な効果は?
識字教育は生活面だけなく、若者の心の変化にも大きな影響を与えています。
現役学習者の73.8%が、将来の目標達成に対して「自信がある」「非常に自信がある」と回答しており、「やや自信がある」を含めると、その割合は95.3%に達しました。
また、感情のコントロール、問題解決力、他者への共感力、逆境から立ち直る力(レジリエンス)といった、他者と協力しながら社会生活を送るために不可欠な力の向上も確認されています。これらは、不安やストレスの多い難民キャンプで生活する若者たちにとって、心理的な安定と安心感につながっています。
危険から身を守る力を育む識字教育
難民キャンプでは、早すぎる結婚(児童婚)や児童労働、搾取、人身取引など、子どもや若者を取り巻く有害な慣習が横行しています。調査に参加した多くの若者は、過去に十分な教育を受ける機会がなく、こうした危険を見極め、回避するための判断力を身につけることが難しい状況にありました。
今回の調査について専門家は、識字教育や課外活動への参加を通して、若者たちが危険を避ける判断力や抵抗力を身につけている点を高く評価しています。識字教育は、知識を得るだけでなく、若者自身が自分の身を守る力を育む重要な役割を果たしています。


若者たちの声
調査に参加した若者からは、次のような声が寄せられました。
女性学習者(18歳)
半年前までは簡単な単語も読めず、数字も理解できませんでしたが、識字教育ですべてが変わり始めました。最初はとても大変でしたが、徐々に文字が単語になり、数字の意味が分かってきました。足し算と引き算を覚えた時には、自信がわいてきました。今では、母に付き添って行った配給所で配給カードの内容を確認したり、保健所で薬のラベルの意味を説明したりしています。家族や近所の人たちの買い物もサポートできるようになり、人生で経験したことのない誇りと自信を感じています。
男性卒業生
識字教育を受けた後、学んだことを活かして家族を助けるようになりました。キャンプ内の道路沿いに小さな店を開き、米や野菜を売っています。最初は不安でしたが、金銭の管理や価格の計算ができるようになり、今では販売業務を一人でこなしています。大きな収入ではありませんが、家族を支える助けになっていて、貢献できることがうれしいです。


識字は、自立と未来への第一歩
プランはジャパン・プラットフォーム(JPF)および皆さまのご支援を受け、ロヒンギャの若者のための識字教育プロジェクトを継続しています。制約の多い難民キャンプで生活する若者たちにとって、識字教育は「学ぶこと」そのものにとどまらず、自分で考え、判断し、未来を描くための第一歩です。一人ひとりの可能性が広がるこの取り組みを、今後も支えていきます。引き続き、温かいご支援をよろしくお願いいたします。
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