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ミャンマーでのクーデターから1年~ロヒンギャの子どもの保護~

プログラム部
倉橋功二郎

プログラム部 倉橋功二郎

アジア

更新)

皆さん、こんにちは。プログラム部の倉橋です。ミャンマーとバングラデシュで実施している「ロヒンギャの子どもの保護と教育」プロジェクトを担当しています。

ミャンマーで軍部主導のクーデターが発生してから、2022年2月1日で1年が経過しました。国内は依然として混沌とした状況にあり、プラン・インターナショナルの活動にも制約が生じています。厳しい状況下でも、ミャンマー国内でこのプロジェクトを継続していくことの意義について、クーデター発生後の状況や、活動背景にも触れながらお伝えします。

写真:「ロヒンギャの子どもの保護と教育」プロジェクト

突如発生したクーデターに募る不安

2021年2月1日、ミャンマーで突如発生したクーデターのニュースが、世界中を駆け巡りました。それは私個人にとっても大事件であり、予想だにしない出来事でした。ミャンマーは、かつて人道支援に従事するために約4年間暮らしたこともある、とても身近な国です。日本の自宅でニュースを聞いた直後、私はミャンマーの友人たちに連絡し安否を確認しました。幸いにも危険な目に遭った人たちはいませんでしたが、それでも国内に広がる不穏な状況に、誰もが不安を募らせていました。

プランの活動現場への影響も甚大

軍部による政権掌握の試みは、ミャンマー国内を混乱に陥れました。治安の悪化、物価の上昇、銀行の機能低下。プランが実施している各種プロジェクトやプラン・スポンサーシップの活動も、さまざまな側面で制限を受けるようになりました。なかでも世界中のプラン職員が胸を痛めたのは、平和構築の活動に参加していた若者たちの不当な逮捕、拘束でした。プランの活動に参加していた若者に限らず、ミャンマー国内では現在でも多くの若者たちが不当に逮捕、拘束されている状況が続いています。
また、活動の持続可能性を高めるうえで不可欠な政府との連携にも課題が生じています。通常プランの活動はプロジェクトを実施する国の政府との密な連携のもと行いますが、現在のミャンマーでは中央政府自体が機能を停止してしまったため、現場での調整に大きな混乱が生じているのです。

複雑な背景のもとで暮らす子どもたち

「ロヒンギャの子どもの保護と教育」プロジェクトは、ミャンマー南西部ラカイン州とバングラデシュ南部コックスバザール県内で実施している、ロヒンギャの子どもと若者を支援する活動です。ミャンマー側においては、ラカイン州の中部において、子どもたちの健全な成長を支える「子どもひろば」の運営や、子どもやコミュニティへの心理社会的サポートの提供、暴力や虐待の被害にあった子どもたちの保護といった活動を2017年より行っています。また、ロヒンギャの人々のみが支援を受けることにより、民族対立をあおることのないよう、周辺に住むラカイン人やチン人といった他民族の人々、そしてその子どもたちに対しても、同様の活動を実施しています。

写真:ラカイン州:地図上の赤で示した地域

ラカイン州:地図上の赤で示した地域

写真:ラカイン州の風景

ラカイン州の風景

写真:「子どもひろば」で遊ぶ子どもたち

「子どもひろば」で遊ぶ子どもたち

クーデター以降、日々変動する情勢のなかで、活動の実施にも影響が出ていますが、プランはこの地域に暮らすロヒンギャの人々とともに活動する数少ない国際NGOのひとつとして、プロジェクトの継続に力を尽くしています(ラカイン州の情勢についてはこちら)。

最新の調査で浮き彫りになったリスク

2021年3月下旬から4月にかけてプランが行った「子どもの保護リスク」調査では、複雑な背景を抱えるラカイン州の子どもたちが、おもに以下のリスクに直面していることが明らかになりました。

写真:調査に参加した子どもたち

調査に参加した子どもたち

【調査で明らかになったこと】

児童労働:

子どもは学校に通うよりも家の外で働いたほうがよいという価値観が、根強く残っています。実際に、工事現場、精米施設、大工、漁業、農業といったさまざまな現場で子どもたちが働いていることも明らかになりました。移動の自由が少ないロヒンギャの子どもたちに比べて、ラカイン人、チン人の子どもたちはより多岐にわたる労働に従事することが多いようです。一方、ロヒンギャの子どもは人身取引の被害に遭う可能性が高くなっています。

家庭での体罰:

多くの子どもたちが、日常的に体罰を受けていると報告しました。子どもたちは、他の子どもが怒鳴られたり、棒で叩かれたり、炎天下に屋外で立たされたり、罰として食事を与えられない目にあったりする様子を目撃しています。しかしその一方で、大人たち自身には、体罰を振るっているという認識はあまり見られませんでした。大人たちはこのような処置が子どものためになると信じて行っていることも確認されました。

早すぎる結婚:

ミャンマーの国内法では17歳以下の子どもの結婚は禁止されていますが、すべての民族で、適正年齢に満たない子どもが結婚している事例が報告されました。早すぎる結婚と10代の妊娠は、特にロヒンギャのコミュニティでその傾向が顕著です。割合は少ないながら、女の子だけでなく男の子も17歳以下で結婚するケースがあることも分かりました。

こうした状況を踏まえ、プランの活動では、子どもも大人も正しい知識を持ち、適切な対処法を学び、自ら実践することで、子どもたちの健全な成長を促すことを目指しています。

これまでの歩みを止めないために

民族や出自、家庭の経済状況、ジェンダー、性的指向、健康状態、障害の有無などに関わらず、すべての子どもには安全な環境のもとで健やかに成長する権利があります。そのための環境づくりには、本来、行政との協力が必要不可欠ですが、国籍のないロヒンギャの子どもたちに対して、行政の支援を取りつけることは一筋縄ではいきません。依然として、先が見えず不安定な状況が続くラカイン州ですが、子どもたちにとって何が最適であるかを常に問いただしながら、少しずつでも活動を続けていきます。

写真:ラカイン州に住むロヒンギャの子どもたち

ラカイン州に住むロヒンギャの子どもたち

解説

ラカイン州とロヒンギャの人々
ミャンマーでは人口の7割をビルマ人が占めていますが、ラカイン州には少数民族であるラカイン人が多く暮らしています。国内でも貧しい地域として知られ、学校や水道、保健医療施設といった社会インフラの多くはいまだに整備されていません。ラカイン州の北部には、国籍を奪われ、長年さまざまな権利が制限されてきたイスラム系少数民族であるロヒンギャの人々も大勢暮らしていました。しかし、2017年に起きた暴動とミャンマー国軍による掃討作戦の影響で、70万人近くのロヒンギャが隣国バングラデシュに逃れる事態となりました。

プロジェクト開始後(2017年~)
プランは2017年にミャンマー国内のロヒンギャへの支援を開始。国軍による掃討作戦の対象にならずに済んだラカイン州中部において、ロヒンギャの人々の暮らす村や周辺の子どもや若者たちを対象に「子どもひろば」の運営や、暴力や虐待の被害に遭った子どもの保護などの支援活動を行ってきました。
2018年以降、ラカイン州内では、ミャンマー国軍とラカイン人の武装勢力との武力衝突が度々発生。プランの活動にも影響が生じ、恒久的な平和の実現が課題となっていました。

クーデター発生後の情勢(2021年~)
2021年のクーデター発生後、ミャンマー国軍に抵抗する「市民不服従運動」が全国的に広がりました。もともとミャンマー国軍とラカイン武装勢力との争いが続いていたラカイン州では、なおさらこの運動が盛り上がりそうなものです。しかしながら、両者は停戦協定を締結。現在は、ラカイン武装勢力と関係のある政治組織が、州内の実効支配を徐々に強化しています。ラカイン人の多くは「市民不服従運動」とは手を組まず、自らの手で統治する道を模索し始めています。

  • ※バングラデシュ国内の活動は、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の支援のもと実施しています。

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