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ミャンマーにおける難民問題とは?避難生活の現状や必要とされる支援
ミャンマーは東南アジアのインドシナ半島に位置する国です。正式名称は「ミャンマー連邦共和国」といいます。国土は日本の約1.8倍で、豊かな天然資源に恵まれている一方、都市部と農村部には深刻な貧富の差が存在しています。
2021年2月の軍事クーデター以降、情勢不安が加速し、多くの人々が厳しい暮らしを余儀なくされています。
ミャンマー中部の都市マンダレーの風景
もくじ
ミャンマーで起きている難民問題と主な原因
ミャンマーでは長年にわたる紛争の影響により、多くの人々が住む場所を追われた結果、国内避難民や他国への難民が増加しました。ミャンマーが抱えている難民問題について、背景と要因を詳しく解説します。
ミャンマーで起きている難民問題とは
難民とは、ミャンマー国内で何らかの弾圧や迫害を受け、生きるための保護や人道支援を求めて他国へ逃れた人々のことを指します(国境を越えずとも国内の別地域に逃れた人を「国内避難民」といいます)。なかでもミャンマーから逃れてきた難民をミャンマー難民といい、主に隣国のタイやバングラデシュ、そしてインドには大勢のミャンマー難民の人々が身を寄せています。しかし、なかにはミャンマー人としての国籍を持っていないために、避難先の国から難民認定されていない人もいます。
バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプ
紛争国から周辺国に逃れた難民を第三国が受け入れる「第三国定住制度」
のもと、日本でも2010年以降、54家族200人のミャンマー難民を受け入れています(2022年3月時点)。日本政府は「緊急避難措置」として在日ミャンマー人に在留や就労を認めています※。
ミャンマーの難民問題の主な原因
民族同士の紛争や少数民族への弾圧
ミャンマーには、およそ135の民族が暮らしています。ミャンマーの人口の約7割がビルマ民族、残り3割が少数民族です。難民・国内避難民が増加した背景には、第二次世界大戦前からの植民地政策に起因する民族間の衝突や、ミャンマーの軍事政権による少数民族への弾圧があります。とりわけミャンマー南西部のラカイン州に暮らすイスラム系少数民族ロヒンギャ、ミャンマー東部のタイとの国境付近に暮らす少数民族カレン、北部に暮らす少数民族カチンなどは、長年にわたり厳しい迫害を受けてきました。
北部カチン州にある国内避難民キャンプの風景
宗教間の対立
ミャンマーの宗教人口は約9割が仏教、残り1割がキリスト教徒やイスラム教などです。民族の違いと相まって、多数派の仏教徒による少数派のイスラム教徒、キリスト教徒への差別や迫害が見られます。
不安定な政治
ミャンマーでは政権が安定しておらず、大規模なクーデターや国軍と武装勢力の衝突が起こるたびに市民の生活が脅かされています。村の襲撃や略奪、強制労働、女性への性被害などが頻発したことも、人々が国内の別の場所や他国へ逃れるきっかけとなりました。また、国内の混乱が収まらず、難民の帰還が難しい状況にあります。
自然災害
ミャンマーがある東南アジアは世界でも自然災害リスクの高い地域です。ミャンマーでも、豪雨や洪水などにより住む場所を失った人々が難民となるケースもあります。
サイクロンにより破壊された家屋
収まらない混乱と増え続けるミャンマー難民を襲う新たな問題
2017年のロヒンギャ危機、2021年の軍事クーデターと、ミャンマーでは社会的・政治的混乱が続いています。避難生活の長期化に伴い、難民や国内避難民の人々は新たな問題に直面しています。
ミャンマー難民の増加
2017年8月に起こった暴動と軍の掃討作戦により、多数のロヒンギャの人々が殺害され、約70万人が隣国バングラデシュへ逃れる事態となりました。この「ロヒンギャ危機」は、世界でも最大規模の人道危機のひとつです。
また、2021年2月には軍部主導のクーデターが発生し、反発する市民を中心にミャンマー全土で無差別な暴力が振るわれました。国境地域での軍による少数民族への攻撃も激しさを増し、多くの人々が国内外への避難を強いられました。国連によると、ミャンマーから近隣諸国に逃れている難民の数は推定111万8000人(2022年12月31日時点)、国内避難民の数は推定182万7000人に上ります(2023年5月1日時点)※
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バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプに暮らす姉妹
ミャンマー難民を襲う新たな問題
難民の増加に伴い、多くの場所で衛生環境の悪化、水や食料の不足が問題となっています。心身共にケアが必要なものの、十分な支援が行われていない状態です。難民のなかでも特に弱い立場に置かれている子ども、女の子や女性は、虐待や人身取引、早すぎる結婚(児童婚)やジェンダーに基づく暴力など、多くの危険にさらされています。
早すぎる結婚(児童婚)などのリスクが増大
ミャンマー難民に必要な支援
終わりの見えない人道危機によって、過酷な状況に直面しているミャンマー難民に対する国際社会からの支援は決して十分ではありません。
特に高まっているのは、医療、教育、就労面のニーズです。他国に逃れたミャンマー難民や国内避難民の人々が必要としている支援について、具体的に説明します。
医療の支援
多くの難民キャンプでは、慢性的に保健や医療のサービスが不足しています。不衛生な環境や、栄養状態の悪化により、病気になる子どもが大勢います。栄養状態の改善と同時に、親世代に正しい栄養・衛生知識を伝えていくことが必要です。
教育の支援
ミャンマーでは社会情勢の混乱や避難生活による影響で、多くの子どもたちが教育を受ける機会を失っています。少数民族のなかには、ロヒンギャのようにミャンマー国内でも国籍がないために教育の機会が限られていた人々もいます。教育を受ける機会を奪われることは、子どもたちの将来的な自立や雇用に大きな影響を及ぼします。
すべての子どもたちに質の高い教育を
就労の支援
住む場所を失った難民の多くは、同時に職も失っています。難民キャンプに暮らす人々は行動が制限されており、雇用の機会も少なく、収入を得ることが困難です。このことが貧困や治安の悪化を加速させる要因にもなり得ます。難民の人々が安定した生活を得るためにも、職業訓練の実施のほか、就職にむけた英語や避難国の語学研修などの支援も求められています。
ミャンマーの難民支援 いま私たちにできること
ミャンマーで難民や国内避難民が増加している背景には、歴史的、民族的、政治的に複雑な経緯があることを知っていただけたでしょうか。難民キャンプでは、今も多くの子どもや若者たちが、母国への帰還の目途が立たないなか、劣悪な環境で不自由な暮らしを余儀なくされています。彼ら、彼女らが将来自立した未来を歩めるよう、継続的な支援が求められています。
プラン・インターナショナルでは、バングラデシュ南部のコックスバザール県にある難民キャンプで、ロヒンギャの子どもや若者たちへの支援に継続的に取り組んできました。現在実施中のロヒンギャ難民の識字教育」プロジェクトでは、支援から取り残されがちな15歳から24歳までの若者を対象とした識字教育に力を入れています。
母国ミャンマーでも差別され、これまで読み書きや計算を一度も習ったことがなかった若者たちが、教育を受けることにより知識だけでなく自信を身につけ、コミュニティ全体にも前向きな変化が見られ始めています。
熱心に学ぶロヒンギャの若者たち
ミャンマーの難民問題を「忘れられた危機」にしないためにも、私たち一人ひとりがこの問題への関心を持ち続けることが大切です。難民の人々が直面している現実や課題に目をむけるとともに、ミャンマーの難民問題について図書館で調べる、NGO団体などでのボランティア活動や寄付などを検討するなど、まずはできることから考えてみませんか。
運営団体
国際NGOプラン・インターナショナルについて
プラン・インターナショナルは、女の子が本来持つ力を引き出すことで地域社会に前向きな変化をもたらし、世界が直面している課題の解決に取り組む国際NGOです。世界75カ国以上で活動。世界規模のネットワークと長年の経験に基づく豊富な知見で、弱い立場に置かれがちな女の子が尊重され、自分の人生を主体的に選択することができる世界の実現に取り組んでいます。
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