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被災者の心を支えるボランティアの心得

コミュニケーション部
後藤 亮

Japan日本

事務局より

(2016/04/27更新)

熊本での地震被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

熊本の被災地では、被害の度合いが明らかになるとともに、地震の衝撃で生じた建物や水道、電気など生活基盤の破損を目の当たりしたショック、相次ぐ大きな余震により、多くの人々、特に子どもたちが不安感や恐怖心など精神的な苦痛を受けているのではないかと心配されます。被災地域のインフラは徐々に復旧にむかう一方で、人々の目に見えない支援ニーズに十分配慮することが求められます。

長期的な心のケアの必要性

東日本大震災に際して、東北大学教育学部の本郷一夫教授が震災後2カ月の時点で行った調査によると、仙台市内の97保育所が寄せた「震災2カ月後の時点で困っていること」(複数回答)の回答内容には、「地震という言葉を聞くと不安な表情になる」、「余震に対するおびえが続いている」といった「不安・おびえ」の状態、「小さな物音にも敏感に反応する」など音への過敏性などが多く報告されて、緊急期から中長期にわたって、心理面でのケアが必要となることが浮き彫りになりました。

※本郷一夫「子どもと子どもを取り巻く人々への支援の枠組み」『発達』128 (Autumn 2011)ミネルヴァ書房

誰にでもできる心のケア支援とサイコロジカル・ファーストエイド(PFA)

写真:「被災者の心を支えるために」表紙

「被災者の心を支えるために」表紙

「心のケア」というと、心理士や精神科の専門家に任せるべき難しい領域と思われがちです。たしかに、困難な状況にある人に支援を提供するにはどうしたらいいのか、何をして、何を言えばよいのか、何を避けるべきなのかと困惑してしまうものです。しかし、近年の、世界保健機関(WHO)をはじめとする国際的な災害支援の潮流は、だれもが、年齢や性別、障がいの有無など様々に異なる背景を持つ被災者に対して、一定の配慮の仕方、関わり方を意識して実践することによって被災者の心を支えることができるという考え方に立っています。

プラン・ジャパンは、地元心理士会の代表者や大学教授などの有志が結成した「ケア宮城」とともに、WHOが発表した被災現場で支援活動を行う人々のための手引き「WHO版心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)-現場の支援者のガイド」を独立行政法人国立精神・神経医療研究センターの監訳で翻訳しました。そして日本向け縮刷版としてPFA冊子「被災者の心をささえるために-地域で支援活動をする人の心得」を編集作成して、誰にでもできる心のケア支援の普及につとめています。

なぜすべての人が心への配慮をすべきか

過去の震災の支援事例を振り返ってみると、被災地の人々が、初めて訪ねてきた専門家に心の状況を尋ねられても、すぐに本当の悩みを打ち明けられるわけではないようです。地域に心の相談所のようなものが設けられても、そのような場所に通っていること事態が噂になることを心配して、地域の人々は慎重になってしまいがちになったことも分かりました。心理士の数にも限りがあります。そのような中で、支援に当たる人が、被災者の心に配慮しながら、被災者同士の日常生活や、支援者と被災者との関わり合い、生活再建への取り組みなどを通して、被災者のニーズを整理しサポートしていくことは、被災者の大きな心の支えとなりうるのです。それはまた、個人のみならず地域が復興に向かうエネルギーになります。

レジリエンス(心的回復力)モデルとしての4つの支援レベル

災害によって、人々は環境や生い立ちなどさまざまな要因から異なった影響を受けます。その反応も人それぞれですが、同時に適切な支援がともなうことで災害による困難を乗り越える力、レジリエンス(心的回復力)を発揮することができます。レジリエンスを引き出すことに着目した支援は、便宜的に図のような4つの層に分けられます。それぞれの層がお互いに連携し補い合うかたちであることが必要です。大多数の被災者には、まず図の最下層の「基本的なサービスおよび安全」の確保が必要になります。そして「コミュニティおよび家庭の支援」を受け、人間同士の絆や社会的な関係性によって支えられていることを実感する中で回復力が引き出され、安定していくのです。さらに、その上の層の「特化した非専門的サービス」として保健師や介護士などコミュ二ティワーカーによる支援を必要とする場合もあります。また、一部の被災者は、心理士や精神科医などの専門家によるケアと専門性の高い支援を必要とすることもあります。

写真:災害・紛争等緊急時における精神保健・心理社会的支援に関するIASCガイドライン(2007)より

災害・紛争等緊急時における精神保健・心理社会的支援に関するIASCガイドライン(2007)より

つまり、「コミュニティおよび家庭の支援」は多くの人々が基本的なサービスと安全の次に必要とするものであり、専門家でなくても、誰でもが担うことのできる役割なのです。東日本大震災の支援のため、プラン・ジャパンのアドバイザーとして来日した医師で、IASC(機関間常設委員会)精神保健・心理社会レファレンスグループ共同議長をつとめるマルグリット・ブラウ氏は、日本の特徴として、インフラなどの基本的なサービスと専門的サービスの充実度に比べると、社会的ネットワークの強化が見落とされがちであることを指摘しています。「コミュニティおよび家庭の支援」を充実させ、人と人との関係性や、信頼と絆を確認できる場所を整えることができれば、被災者の心理的な状態の改善に、そして個人と地域が被災体験を乗り越えていく内在的な能力、レジリエンス(心的回復力)につながっていくのです。行政と支援者は、被災した人々と地域がもつレジリエンスを尊重して、回復していく力を引き出すための支援方法を考えます。

考慮したい5つのポイント

個人や地域における関係性を充実させ、レジリエンスを引き出す支援活動の目的を果たすためには、行政の施策や支援団体による活動プログラムの具体策を作成する際に、以下の5つの点に配慮することが重要です。このことは、さまざまな災害や紛争での経験から明らかになりました。

  1. 恐怖心に代わって安心感をもてるように
  2. 心の落ち着きを取り戻せるように
  3. 個人とコミュニティの効力感をもてるように
  4. 社会や人とのつながり、連帯感をもてるように
  5. 希望をもてるように

Hobfoll, Watson etc. Five Essential Elements of Immediate and Mid-Term Mass Trauma Intervention: Empirical Evidence Psychiatry 70(4) 2007

プラン・ジャパンは、東日本大震災に際して「ケア宮城」と連携して、宮城県教育委員会との共催事業として県内全域の小中学校が対象の、教員のセルフケアと被災児童のストレス反応の理解とその効果的なサポート方法についての研修会を実施しました。また、岩手県や福島県を含む保育所や児童館、中学・高校、仮設住宅などにおいてリラクゼーションと隣人との関係性充実のためのアフリカン・ドラムの参加型演奏会、保育士・保護者向けのワークショップなどを、物資支給や子どもひろば(子どもにやさしいスペース)の運営と平行して行ないました。こうした支援は、どれも5つの点を考慮して、子どもを含めた被災者が災害を乗り越えて行けるようにその心を支えるものとして実施してきました。

写真:忙しい教員たちの緊張を解きほぐす研修会

忙しい教員たちの緊張を解きほぐす研修会

写真:子どもたちを支える人たちへの支援

子どもたちを支える人たちへの支援

参加型アフリカン・ドラム・イベント 『みんなで笑顔!』プロジェクト/プラン・ジャパン(2分13秒)

プラン・ジャパンは、東日本大震災以降、こうしたレジリエンスに着目した支援のあり方を心理士、NPO/NGO、学童保育、行政などの関係者に紹介し、PFA冊子の普及につとめてきました。熊本地震においても、調査チームを派遣し、被災者の方々と地域の回復力を引き出せる支援活動に向けて準備を進めています。

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