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学校・コミュニティ主導による衛生環境の改善~ハイチ~
ハイチ
(更新)
プラン・インターナショナルは、ハイチの水衛生環境の改善を行うため、外務省のNGO連携無償資金協力を受けて、2013年11月にプロジェクトを開始し、2017年2月に終了しました。
この間、日本人職員をハイチに派遣し、現地のプラン・インターナショナルと共同で、ハイチ南東県と西県の18校と16コミュニティを対象に活動を行いました。
不衛生な環境が招く病気の蔓延
西半球の最貧国のひとつとされるハイチでは、基礎インフラや社会サービスが未整備であり、国民の4割近くが安全な水を、8割以上が安全で清潔なトイレを利用することができません。そのため、人々の間で、トイレ後に手を洗う、水を浄化してから飲むなどの基本的な衛生習慣が根づいておらず、屋外で排泄をする人々も多く見られます。その結果、下痢やコレラなど、水を媒介とする病気が多く発生しています。2010年に発生したコレラの蔓延から7年経過した現在、海外からの支援のおかげで、患者数はかなり減少しましたが、人々の生活環境は未だに脆弱であり、ハリケーンや洪水などが発生する度に、コレラなど病気の犠牲になる人が絶えません。
子どもたちの健康を守るために
このプロジェクトでは、子どもたちを取り巻く衛生環境の改善を大きな目標として、彼らの主な生活の場となる「学校」と「コミュニティ」において活動を行いました。子どもたちを活動に参加させるだけでなく、住民や学校関係者の衛生への意識と自助努力を高めながら衛生習慣の改善を試み、コミュニティや学校の能力を高めることで、自然災害にも負けない環境づくりを目指したものです。
<3年間の主な活動内容>
- 学校トイレの設置・修繕(18校)
- 学校の給水設備の設置・修繕(18校)
- トイレと給水設備の維持管理や衛生指導を担う学校衛生委員会の設立と研修(130人)
- 学校における継続的な衛生指導(生徒数合計約4000人)
- 衛生指導と世帯トイレの普及を担うコミュニティ衛生委員会の設立と研修(110人)
- 衛生指導を支援するコミュニティ衛生クラブ(若者、子ども、母親、父親)の設立と講習(960人)
- 世帯トイレ建設を技術的にサポートする石工への研修(約80人)
- コミュニティ衛生委員会、衛生クラブ、石工による衛生指導と世帯トイレの普及(参加者約4万5000人)
- 学校及びコミュニティにおける衛生イベントの開催(18校、16コミュニティ)
学校活動の成果
プロジェクト開始前は、給水設備がない学校では、生徒たちが各家庭から水を持ってきていました。生徒の家庭に水道が通っていないため、早朝、1時間以上歩いて川まで行き、友だちが必要な分も含めて学校へ持って行く生徒もいました。川の水を直接飲み、お腹を壊す子もいましたが、何が原因か知らずにいました。トイレは、生徒数に対し個室数が不足し、また老朽化も進んでいたため、多くの生徒は屋外で用を足す状態で、衛生環境を改善したくても、「飲み水も十分ないのに、手洗い用の水なんて。。。」と、ある学校の校長先生は半ば諦め顔でした。
事業開始前の学校トイレの状態
事業開始前の学校の水飲み場
本プロジェクトにより、安全な水とトイレへのアクセスが確保され、学校内の衛生環境は大きく改善しました。これから重要なのは、改善された衛生環境を継続することです。学校長、先生や清掃員のほか、生徒や父兄から構成される学校衛生委員会に対し、給水設備やトイレの維持管理の重要性を何度も繰り返し伝えた結果、全対象校ではありませんが、生徒が教室やトイレを清掃したり、毎週生徒に対して衛生教育をするなど、委員会が自主的に動き始めました。
また、コミュニティの同意を得て、父兄から維持管理費を徴収し始める学校も出てきました。なにより子どもたちの顔には笑顔があふれ、一生懸命手洗いを実践しています。「こんなに素敵なトイレができて、うれしい!」と校長先生以上に生徒は大満足です。しかし一方で、家に帰るとトイレがない家庭も多くコミュニティへの働きかけも大切になります。
手洗いを楽しむ生徒たち
学校に建設された男・女・障がい者別トイレ
生徒による手洗い促進の行進
コミュニティ活動の成果
「お母さん、学校にきれいなトイレができたけど、どうして家にはないの?手洗いしたいんだけど、石鹸はどこ?」家でも学校でもどこに行っても、トイレや安全な水へのアクセスがある。
環境を整備することで、衛生習慣は確実なものになります。コミュニティ活動における大きな壁は、衛生に関する知識はあっても意識が低いこと。あるいは、お金がないため設備が作れず、実践できないと諦めている人が多いことです。そして、そのような環境を普通と思う社会で育つ子どもたちは、問題意識が生まれず、改善につながらないのです。
そこで、本プロジェクトでは、コミュニティが自主的かつ継続的に衛生促進活動を実施できるように、コミュニティに衛生プロジェクトチームを設置し、研修会を行いました。チームが強調したのは、正しい衛生知識の伝授だけではなく、行動力と相互扶助精神の促進です。プロジェクト期間中は、クラブメンバー一人あたり、最低5家族に手洗いの実践やトイレの使用を促すことと、ノルマを課しました。
家庭ごみの分別についてのデモンストレーション(クラブ講習会)
クラブメンバーによるコミュニティ住民への普及活動
「この集落では、昔はトイレなんて持っている人はほとんどいなかったけど、最近は近所のみんながトイレの話をするし、作り始めているわ。我が家でも作らなきゃ」。なぜトイレを使わなくてはいけないのか、因果関係がまだ理解できていない人もいる中で、確実に世帯トイレ建設の動きがコミュニティに広がっています。もちろん、正しい知識があればその行為が長続きしますが、集団心理を用いて人々の行動を変えていくことは、通信手段が発達していない村落では有効なのです。
コミュニティによる建設中の世帯トイレ
コミュニティに建設された世帯トイレと簡易手洗い場(ティピタップ:右側白容器)
今では、コミュニティ衛生委員会が衛生問題に真剣に取り組むようになりました。周囲の人々への衛生メッセージの伝達だけでなく、水源地の清掃や植林活動、地域の清掃活動など、彼ら自身が活動計画を作り、共同で実施しています。あるコミュニティの若者衛生クラブは、衛生問題の解決だけにとどまらず、収入向上を図る活動を自分たちで形成するまでになりました。コミュニティの開発は自分たちの手で可能なのだと言う自信を持ち始めた証拠です。
活動計画を練る衛生委員会メンバー
自分たちの活動計画を発表する委員会メンバー
変化の継続のために
人々の習慣を変えることは、時間がかかります。特に、インフラが整備されていない国では、変えるために乗り越えるべき壁は、非常に高いのです。しかし、それが不可能ではないということ、そして集団の力が習慣の変化を促進することを、このプロジェクトが語ってくれました。この流れをコミュニティで継続させ、より広域に広めていくためには、衛生委員会やクラブのように、学校やコミュニティを率いて衛生問題を解決しようとする中心組織が必要不可欠です。
プロジェクトは終了しましたが、これらの組織が常にイニチアチブを取り、活動を継続できるよう、現地のプラン・インターナショナルのスタッフが指導・助言を続け、コミュニティとともに歩いていきます。
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