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哀悼 緒方貞子さんが残した言葉~功績を称えて~

理事長
池上 清子

理事長ブログ

更新)

緒方貞子さんのご逝去に際し、心から哀悼の意を捧げます。国際機関で難民支援に尽力し、困難な状況にある世界の人々に寄り添い続けた緒方貞子さん。日本人女性としてはじめて国際協力の世界でトップに就き、重責を担う姿は、私たちに多くのことを教えてくださいました。

緒方貞子先生との思い出

緒方先生との最初の出会いは学生時代です。私は国際関係を専攻したくて、国際基督教大学で学びました。国際関係とは、国際法、国際政治、外交史の3つを指します。当時先生は、准教授として国際政治の教鞭をとられていましたので、直接教えを乞うことができました。授業は常に穏やかで、静かな雰囲気のなかすすめられました。論理的で、研究者としても素晴らしく、1966年に博士論文として書かれた『満州事変 政策の形成過程』は、岩波書店から出版されています。

その後、1980年代に国連本部人事局行政官としてニューヨークに赴任したときに、緒方先生と再会しました。そのころ、先生はすでに国連の中で、ユニセフの執行理事会の議長などの要職に就かれていました。日本人女性としてははじめて、国連日本政府代表部の特命全権公使もつとめられました。そんなお忙しいなか、先生はよく私たち日本人の国連職員を自宅に呼んでくださいました。国連のパワー・ポリティックス(権力政治)、国際政治の視点からみた国連や日本の役割など、私たちにいろいろ話してくださいました。自分の知識や経験を日本から来た若い職員たちに伝えようというお気持ちからだったと思います。先生のお話に、私たちはいつも真剣に聞き入りました。

難民支援という共通点で

1970年代、私は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の東京事務所で、ベトナムからのボートピープルの受け入れを担当しました。当時の日本は、難民条約を批准しておらず、UNHCRという名前もあまり知られていませんでした。1991年、緒方先生は日本人として、そして女性としてはじめて国連難民高等弁務官に就任されました。

写真:セルビア国境近くの駅に到着したシリア難民

セルビア国境近くの駅に到着したシリア難民

これがきっかけで、国連の仕事や難民支援など、国際協力が注目されるようになりました。困難を極める状況のなかで最前線の仕事をする先生の姿を通じて、途上国の問題が「遠い国の誰か」の問題ではなく、私たち日本人にとって切実な問題になったのです。

「文化、宗教、信念が異なろうと、大切なのは苦しむ人々の命を救うこと。自分の国だけの平和はあり得ない」という先生の言葉があります。これは持続可能な開発目標(SDGs)でも約束している「誰一人取り残されない」という概念とまったく同じです。先生はその言葉通り、公平な社会の構築にむけて、命の平等を訴え、国境線への疑問を投げかけながら、もっとも弱い立場の人々のために尽力されました。

写真:ロヒンギャの避難所(バングラデシュ)

ロヒンギャの避難所(バングラデシュ)

2001年に、インド出身でノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・セン氏と共同議長をした「人間の安全保障委員会」が目指した枠組みは、その後の国際協力や安全保障の考え方を変えました。

  • ※紛争や内戦など、国家が個人の安全を保障することが難しい局面の増加に伴い、個人やコミュニティに焦点をあてた安全保障を重要視する考え方

先駆者、そしてロールモデルとして

女性の社会進出が十分にすすんでおらず、多くの女性たちが「仕事か家庭か」という二者択一を迫られた時代に、緒方先生は結婚し、子育てをしながら、プロフェッショナルとして仕事も続けられました。国連時代、肩肘を張らずに子育てもしながら働いている先生を、羨望と尊敬の思いで眺めていた女性職員は多かったと思います。また、国連難民高等弁務官になられたのは60歳を超えてからでした。その年齢から、世界の紛争地域に足を運び、自らの目で現場を見て、難民支援に携わられたお姿はシニア世代に大きな勇気を与えてくれたのではないでしょうか。

緒方先生は生涯を通じて、ご自分が目指したテーマを追求されたと感じます。私自身は、これまでのキャリアを通じて、女性が自分らしく生きられる社会の実現、妊娠・出産で妊産婦が死亡することがないような保健システム作りに取り組んできました。自分がやりたいことやテーマを追求することはとても大切です。リーダーになることを究極の目的にする必要はありませんが、もし、自分が決定権をもてるポジションになれば、やりたいことを実現できる可能性がさらに高くなります。先生はご自分が大切にするテーマを追及しつつ、リーダーとしてさまざまなことを実現した結果、国際社会に大きな影響をもたらされました。リーダーとしても私たちにあるべき姿を示してくださったのです。

気候変動に起因する自然災害、テロ、難民、紛争など、世界は複雑化しています。緒方先生が目指した「誰一人取り残されない」社会。それはプラン・インターナショナルが目指す社会と同じです。今一度、懐かしい先生の教えを胸に刻み、貧困の根本原因に向き合い、真摯に活動を続けていきたいと思いを新たにしました。

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