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インドの女性が直面する性差別問題|根絶に向けた取り組み
人口増加が著しいインドは2023年、ついに中国を上回り世界でもっとも多くの人口を有する国になりました。平均年齢が28歳と若く、ITや数学の分野などで多数の研究者が世界中で活躍しています。国がめざましく発展していく一方で、古くからある男性優位の考え方も根強く、依然として多くの女性たちが差別や暴力に苦しんでいる一面もあわせもっています。
インドの女性たちがどのような差別や暴力に直面しているのか、その問題を解決する方法は何かを考えてみましょう。
もくじ
インドにおけるジェンダー観
2019年~2021年にインドで行った全国家族健康調査(National Family Health Survey)によると、インドでは人口の過半数以上を女性が占めています。インドの女性たちがどのような立場に置かれているのか、女性の地位や、数値でみる男女格差について解説します。
過酷な毎日を生きる女性たち
インドにおける女性の地位
インドは男女差別が根強く残っており、特に既婚女性の地位は低く見られがちです。結婚をすると仕事を辞めて家庭に入ることが求められ、配偶者や配偶者家族の世話をするべきだという風潮が強くあります。幼くして結婚すると学校を辞めなければならないことから教育格差が生まれ、結婚後は家庭に入ることで労働機会を奪われるため、賃金格差が生まれます。また、ヒンドゥー教では婚姻の際に新婦側から新郎側へ結婚持参金(ダウリー)を用意する慣習があります。ダウリーの負担をなくすためにも、生まれてくる子どもは男児が望まれがちです。
数値で見るインドの男女格差の現状
世界経済フォーラムが2023年6月に発表した「ジェンダー・ギャップ指数」※1によると、インドは146カ国のうち127位と低い順位に位置しています。特に経済・健康分野における順位は142位で、ジェンダーの違いによる格差が大きな国のひとつです。「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート(世界ジェンダー格差報告書)2023」
※2によると、インドを含む南アジアでは男女平等が実現するのは149年後と分析されています。
- ※1ジェンダー・ギャップ指数とは世界経済フォーラムが毎年発表する指標で、経済・教育・保健・政治の分野ごとに、男女平等の度合いを数値化したもの。
- ※2「ジェンダーギャップ・レポート 2023」 停滞するジェンダー平等 - 格差是正まで131年(世界経済フォーラム)
インドにおける女性の慣習
インドの女性たちは、日本ではあまり耳にしたことがないような慣習にも苦しめられています。ここでは具体的に女性たちがどのような問題に直面しているのかを説明します。
ダウリー(結婚持参金)
ダウリーとは、結婚時に新婦側の家族から新郎側の家族へ金品の贈答を行う慣習です。元々は上層階級でのみ行われていた慣習でしたが、下層階級にも浸透し今ではインド全域に広がっています。新婦側がダウリーを十分に用意できないと、結婚後に配偶者や配偶者家族から不当な扱いを受けることもあり、命を奪われる場合もあります。新婦側の両親にとっては高額なダウリーが大きな負担となるため、インドでは男児の誕生が望まれる場合が多いのです。反対に、生まれてくる子どもが女の子とわかると、中絶するか、出産後に命を奪ってしまうということもあります。ダウリー制度は、インド政府が1961年に違法としましたが、実際には現在も残っている慣習です。
サティ
サティとは夫の死後、貞淑の証として妻が焼身自殺をする慣習のことです。本人の意思ではなく、配偶者の家族からサティを強いられるケースも発生しています。インド政府が1829年に法律で禁止しましたが、今でもサティによる死者が出ています。2008年には、インドのチャッティスガル州にある村で、71歳の女性がサティを行い、配偶者の死後に自殺した事件が起こりました。
早期結婚・児童婚
早期結婚とは、「早すぎる結婚・児童婚」とも呼ばれ、18歳未満の子どもが結婚、または同意なしに結婚を強制されることを指します。貧困家庭では、経済力のない女性が家の中にいることは一家の負担となり、処女性が重要視されている背景からも幼いうちに結婚させるようになったといわれています。インドが2019年~2021年に実施した調査では18歳未満で結婚した女性は全体の約4分の1を占めていたといわれています。女性の年齢が上がると、ダウリーの負担も上がるという点からも児童婚が行われてきました。インド政府は1929年に児童婚を違法としましたが、貧困家庭では今でも実施されており、根絶には至っていません。
17歳の時、結婚から逃れた女の子
ガオゴル
ガオゴルとは、月経中の女性を「不浄」なものとみなし、家族や村の人と接触してはならず、家の中のものにも触れてはいけないという、一部の部族で行われている慣習です。月経中に女性が不衛生な小屋で隔離されますが、感染症を発症し命を落としたり、ヘビやクマなどに襲われたりする危険があります。2016年には月経中に小屋で過ごしていた女の子が野生動物に襲われるという事件が発生しました。
性的虐待・性的暴力
2021年の世界保健機関(WHO)の調査では、世界では女性の3人に1人、推定7億3600万人が身体的、性的な暴力の被害者で、若い女性(15~19歳)の4人に1人は身近なパートナーからの暴力を受けていることが分かってます※1。
インドでも男性優位の考え方が根強く残っている地域では、女性は男性の所有物だから暴力をふるってもいいという考えを持つ人もいます。2012年に首都ニューデリーのバス車内で女子学生が複数人から性暴力を受けたうえに、殺害される痛ましい事件(ニルバヤー事件)が起こりました※2。
インド国民からも抗議行動が起こったことを受け、2013年、インド政府は「ニルバヤー特別基金」として約190億円の予算を発表。刑法の見直し、夜間に女性が警察に救助信号を送信するモバイルアプリの開発、被害者の人権を尊重しない処女テストの禁止などの政策を掲げました。
教育格差
女の子は「女の子だから」という理由で、教育の機会が奪われがちです。児童婚や妊娠、出産により学校を中途退学しなければならない女の子たちが多くいます。また、学校に通えたとしても、安全に利用できるトイレや生理用品が不足していたり、性暴力の被害にあう危険があったりします。女の子にも通いやすい学校づくりが困難な要因のひとつに、女の子の理解者である女性教員が不足していることもあげられます。
インドの女性のために行うプラン・インターナショナルの取り組み
インドでは性暴力、虐待、ドメスティック・バイオレンス(DV)などジェンダーに基づく暴力が多発しています。
プラン・インターナショナルでは、インドでジェンダーに基づく暴力の被害を受けた女の子や女性の支援を行っています。
女の子たちが暴力の被害にあわないために
ジェンダーに基づく暴力の被害にあう女の子を一人でも減らすため、プラン・インターナショナルでは学校やコミュニティで啓発活動を行っています。2022年には高校と大学あわせて5校の生徒たちを対象に、ジェンダーに基づく暴力防止の啓発活動や電話相談先の情報提供を行いました。また、教師を対象に子どもの保護に関するトレーニングを行い、544人の教師が虐待防止について学びました。これら一連の活動を通じて、プランは、地域の人々が性暴力をはじめとするジェンダーに基づく暴力の弊害を学び、理解することを目指しています。
トラウマケアの一環としてヨガをする女の子たち
女の子一人ひとりの状況にあわせた支援
2021年のインド政府の報告書では、プラン・インターナショナルがプロジェクトを実施しているマハラシュートラ州の18歳~29歳の女性の6.2%が18歳になる前に性暴力を受けたと回答しています。これはインドの全国平均の約4倍に相当します。被害を受けた女の子たちは警察や病院で適切なサポートが受けられず、助けを求める場所がありません。そこで、プラン・インターナショナルのソーシャルワーカーが児童保護施設、病院や警察に付き添い、女の子へのカウンセリングの支援を行っています。また、立ち直りを支えるための効果的なプログラムを実施し、女の子たちは活動を通して自分の感情をコントロールすることを学びます。被害を受けた女の子の人権が守られ、心身ともに回復することで社会に復帰し、自分の人生をふたたび歩めるようになるために支援を行います。
街の中での暴力の危険を学ぶ女の子たち
インドの女の子、女性のために私たちができること
ここまでインドの女性たちは、性暴力、差別や教育格差のほかにも、私たちの日常では聞きなれない、ダウリー(結婚持参金)やサティ、ガオゴルなどさまざまな慣習に直面していることを解説しました。私たちにできることを紹介します。
インドの女の子の問題が書かれた書籍、映画を見て、より深く知る
おすすめの1冊『あなたの教室』(早川書房)
インドで女の子たちが直面している教育格差や児童婚などが描かれています。
インドのことを深く知り、この状況を変えたいと思った方は寄付という選択肢があります
プラン・インターナショナルでは、インドで「暴力の被害にあった女の子を守る」プロジェクトを実施しています。
被害にあった女の子が、心身ともに回復し、ふたたび社会に戻ることができるように、
また、女の子や女性が暴力の被害にあわないための活動をあなたのご寄付で支えてください。
運営団体
国際NGOプラン・インターナショナルについて
プラン・インターナショナルは、女の子が本来持つ力を引き出すことで地域社会に前向きな変化をもたらし、世界が直面している課題の解決に取り組む国際NGOです。世界75カ国以上で活動。世界規模のネットワークと長年の経験に基づく豊富な知見で、弱い立場に置かれがちな女の子が尊重され、自分の人生を主体的に選択することができる世界の実現に取り組んでいます。
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